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73歳シニアインフルエンサー「きょうかのばあば」の挑戦とASAKOシニアクラスタ調査で知る現代高齢者の実態
【要約】
「きょうかのばあば」が示す、現代シニア像とデジタル時代の挑戦
本記事では、SNSで話題のシニア世代代表「きょうかのばあば」さんと、朝日広告社サステナラボ研究員でシニア市場調査を手がける桐山忠介さん、サポーターである孫のきょうかさんによるインタビューを通じて、多様化する現代の高齢者像、シニアデジタルリテラシー、そして今後のシニアマーケティングの可能性について総合的に解説します。
目次(Table of Contents)
1「きょうかのばあば」とは?

インタビューに答えるきょうかさんとばあば
TikTok・Instagramフォロワー計3万人超の「きょうかのばあば」さんは、SNSで活躍する73歳のシニアインフルエンサーです。活動の目的は、シニア世代がデジタルを使いこなすロールモデルとなり、より多様でポジティブなシニア像を世間に発信することです。
◯ きょうかのばあば SNS
・TikTok: https://www.tiktok.com/@kyokanobaaba
・Instagram: https://instagram.com/kyokanobaaba
・YouTube: https://www.youtube.com/@kyokanobaaba/
・X: https://x.com/kyokanobaaba/
・HP: https://kyokanobaaba.com/
桐山さん:まず、「きょうかのばあば」はどのように誕生したのでしょうか?
ばあば:「バズる」なんて言葉も知らなかった頃の話です。ある日、スマホでSNSを見ていたら、きょうかに「すごいね。見るだけじゃなくて、自分も出てみたら?」と言われたんです。最初はとんでもないと思いました。恥ずかしいし、プライバシーを侵害されるのも嫌で、何年も断っていたんです。ただ、孫バカなので、だんだんと興味が湧いてきて、やってみようかなと思うようになりました。
きょうかさん:私がマーケティングの仕事をしていて、その一環で「おばあちゃんが出てくれたら面白いかも」と思ったんです。シニア世代がSNSで情報発信している例がまだ少なくて、そこにチャンスを感じました。
桐山さん:始めてみて、反響はありましたか?
ばあば:ええ、ありました。きょうかは「可愛い子は世の中にたくさんいる。でも、ばあばが出たらバズるよ」と言っていました。実際に、最初の方はレンタル傘を借りるだけという本当にシンプルな動画をアップしましたが、それが思いのほかバズって驚きました。見てくれる人がいるのは嬉しいですし、新しいことに挑戦するのも楽しくて、どんどんハマってしまいました。
桐山さん:1人でハワイに行く動画も拝見しました。その好奇心と行動力には元気づけられます。
ばあば:ありがとうございます。最近は、私のプライベートにも関心を持ってくださる方が多くて、新卒で妊娠したという動画や、セレブの1日を再現した動画も人気です。リムジンに乗ったり、豪華な衣装を着たりと、すごく楽しい経験ができました。こういうことができたのも、きょうかのおかげです。本当に感謝しています。
きょうかさん: そういった動画はエンタメ要素が強いんですけど、「きょうかのばあば」のコンテンツの8割は、本当に伝えたいデジタルリテラシーに関連した内容がベースになっています。ただ、残りの2割のエンタメ系の方がバズりやすいという現実もあります。
桐山さん:なるほど、「きょうかのばあば」は、シニア世代のデジタルリテラシー向上という社会課題にも向き合った活動なんですね。
きょうかさん:はい。日本では特に、シニア世代のデジタル活用がまだまだ進んでいない現状があります。コロナ禍明けの頃、入国時に「Visit Japan Web※」で事前手続きができるようになったのですが、日本人だけが列に並んでいるのを見て、「これはまずい」と感じました。だからこそ、価値ある情報とエンタメを組み合わせて発信することで、社会に貢献できると信じています。
※日本に入国・帰国する人が、入国審査や税関申告をスマホで事前にできるウェブサービス
桐山さん:ばあばさんは、デジタルをかなり使いこなしているように見えますが、新しい技術への抵抗はありませんでしたか?
ばあば:夫の海外赴任でドイツに4年間住んだ経験もありますし、19歳のときにカナダへ留学もしました。そういった経験があったからか、新しいものに対して怖がる気持ちは少なかったかもしれません。大学では工学部の電子工学科に通っていて、50人の男子の中に女子は私1人。いわば、リケジョのパイオニアです。もちろん、年を重ねて衰えはありますが、それほど難しくはありませんでした。
きょうかさん: 私はマネージャー兼カメラマンとして、撮影予定や集合場所などはGoogleカレンダーでばあばと共有しています。現地集合のときは、Googleマップを使って1人で来てもらっています。
ばあば:昔は紙の地図を広げて見ていたのに、今ではスマホが勝手に目的地まで案内してくれるなんて、本当に便利です。ただ、以前2回ほど間違った場所に向かってしまい、ウロウロしたこともありますけど(笑)。
2 シニアクラスタ調査の概要と意義

シニアクラスタを説明する桐山さん
シニアマーケティングは、20年以上前から「これから成長が期待される巨大市場」として注目されてきました。しかし、実際には明確な成果が出せていない一面も見受けられます。
現在、日本には65歳以上のシニア世代が約3,600万人存在しています。しかし桐山さんは、「これだけ多くの人々を、ひと括りにシニアと呼ぶのは無理がある」と指摘します。
シニア世代は、他のどの世代よりも長く人生を歩んでおり、その分、生き方・価値観・趣味嗜好は極めて多様です。まさに「もっとも多様なライフスタイルを持つ世代」といえます。
この多様性に着目した桐山さんは、シニア世代の実態を可視化することを目的に、独自の調査(ASAKOシニアクラスタ調査)を実施。「統計的な裏付けに基づいて一人ひとりの価値観を理解し、それを商品やブランドに反映させることで、企業と生活者がより良い関係を築ける」と提言します。
調査の結果、シニア世代は大きく6つの価値観クラスタに分類されました。
桐山さん:ばあばさんは、分析によって「世話好きシニア」(全シニアの約17.7%、およそ770万人※)に分類されました。このタイプの最大の特徴は、「人を喜ばせることが、自分の喜びにもなる」という価値観を持っていることです。趣味や旅行、活動的な日々の中で、人とのふれあいや誰かを応援する気持ちを大切にし、それがまた自分の満足にもつながっていく。そうした考えを持っています。また、ネットリテラシーも高く、旅行に行くとなったら、どこに行く、誰と行く、何を用意するというふうに、インターネットを使って検索する回数が多くなり、必然的にスマホに触れる機会も増えます。
※総務省統計局「人口推計 2025年7月報」60歳以上の人口から算用
ばあば:まさに、そうかもしれない。当たってるね。
占いじゃなくて、ちゃんと分析した結果だよ(笑)。
3 ばあばのシニア像|3大キーワード
ばあばのクラスタ分析によると、特に高く評価しているのは、「つながり志向」「応援志向」「好奇心」です。順番に見ていきましょう。
3-1 「つながり志向」について
特徴: 人間関係を重視し、人を喜ばせることで自分も幸せを感じる
桐山さん:クラスタ分析で特に印象的だったのが、人の喜びが自分の喜びになるという、「つながり志向」の強さです。
ばあば:自宅で茶道教室をやっているのですが、お茶会を開くとき、「なにか感動を呼ばないといけない」といつも思うんです。ただ高価な茶道具を持ち寄って自慢するのではなく、人が喜ぶような趣向を凝らす。それが結果的に自分の幸せにもつながるんですよね。
きょうかさん:ばあばが可愛いなと思ったのは、クリスマスの時期にサンタクロースの衣装を着て、おじいちゃんに料理を振る舞っていたという話。人を喜ばせようとする姿勢が自然に出てくるのが素敵だなと思いました。
ばあば:この前も、きょうかの友だちで手品をしている子が家に来たとき、私も手品を披露して、みんなを驚かせちゃった(笑)。人の笑顔が見られると嬉しいんです。
桐山さん:「人とはお互いに補い合える関係が好き」という点も、ばあばさんの志向にぴったり当てはまりますね。
ばあば:誰でも光るものを持っていると思います。だからこそ、互いに補い合えば素晴らしいことができる。どんな人にも「素敵だな」と思える部分があるんです。
桐山さん:SNSでの発信をしているとフォロワーとの交流の機会もあるのではないでしょうか?
ばあば:TikTokライブをやると、視聴者から質問が届くので、それに答えたりしています。また以前、駅で「“きょうかのばあば”見てます」と声をかけられたこともありました。その方もドイツに住んでいたことがあって、話が盛り上がりました。一期一会って本当に大事です。出会いによって人生はつくられていくし、出会いが多いほど人生は豊かになると思っています。
3-2 「好奇心」について
特徴: 新しい技術や情報、場所への挑戦を楽しむ姿勢が強い
桐山さん:先ほどから、ばあばさんの好奇心の強さが随所に表れていますが、きょうかさんご自身が「ばあばは本当に好奇心旺盛だな」と感じたことはありますか?
きょうかさん: 仕事で色々なところに行かせてもらっていますが、例えばGoogleのオフィスに行くのが楽しみという。最先端のものに対する好奇心はすごいと思います。
ばあば:新しいものとか未知のものには関心を持っています。昔から、見たり知ったりすると満足する。驚きと感動があります。最近ではAIもそうです。

「今朝は2時間もAIの勉強をしてきたの」と話す“ばあば”。生成AIを駆使し、コアラが茶道をたしなんでいるユニークな音付き映像を制作したといいます
きょうかさん: また、これまで3、4回、一緒に海外に行ったんですけど、私が昼の12時頃まで語学学校で授業を受けているとしたら、その朝は1人でバスに乗って街を観光しているんです。体力はシニアだから、行方不明になってしまったかもと不安になることもありました。ただ、初めて行った海外にも関わらず、それだけの行動力があるのはすごいことだと思います。
3-3 「応援志向」について
特徴: 人に与えることや、若い世代を支援することに喜びや価値を見出す
桐山さん:「応援志向」についても見てみましょう。ばあばさんは、「プレゼントは貰うよりもあげる方が好き」ということですが、それはどうしてですか?
ばあば:そうですね。私は人間関係って「ギブ・アンド・テイク」だと思っているんです。愛されるよりも、愛する方がいいんじゃないかなって。もちろん、愛されたい気持ちもありますけどね(笑)。
きょうかさん:だから、アンケートの回答も「ややそう思う」なんだね。
ばあば:ただ、時々「あれ? これって押しつけになってないかな?」って不安に思うこともあります。でも、お茶の先生をしていることもあり、おもてなしの精神が自然と身についているのかもしれません。相手が喜んでくれたら、それだけで私は幸せになれるんです。そういう気持ちは、もともと自分の中にあるものなんだと思います。
桐山さん:「誰かに喜んでもらいたい」という気持ちが強いと、自然とお財布の紐もゆるくなる傾向がありますよね。ばあばさんも、そういった面があるのでしょうか?
ばあば:確かにそうかもしれません。この年齢になると、「お金を残しておいても仕方ないな」と思うようになるんです。誰かが喜んでくれるなら、それが一番うれしい。もちろん、死ぬまでの生活は大丈夫という計算はちゃんとした上で、ですけどね。
桐山さん:つまり、「人に喜んでもらうこと」が、ばあばさん自身の満足にもつながっているということですね。ある意味、お金で自分の喜びを買っているとも言えるかもしれません。
きょうかさん:私、会社を経営しているんですが、創立1周年のパーティーを開いたとき、ばあばがすごく大きなお花を持ってきてくれて。それがあまりに目立ちすぎて、ちょっと恥ずかしいくらいでした。でもそれを見て、「ああ、ばあばは本当に応援志向なんだな」と感じました。
ばあば:若い子が一生懸命がんばっている姿を見ると、心の底から拍手を送りたくなるんです。なんとか力になりたいって、自然に思ってしまうんですよね。
桐山さん:そう思っていても、実際にそれを行動に移して、カタチにできる人はそう多くありません。それを自然に実践されているばあばさんは、まさに「世話好きシニア」にドンピシャだと思います。
4 「きょうかのばあば」が目指す未来

未来を語るばあば
桐山さん:今後、シニアのリアルを、これからどのように伝えていこうと考えていますか?
ばあば:シニア世代の方って、新しいことへの怖さがあると思うんです。その怖さを、少しでも取り除いてあげたいと思います。私がこの活動を始めたのは70歳の頃なんですけど、「ばあばがやってるなら、私もやってみようかな」と思ってもらえたら、もうその時点で目的の半分は達成していると思うんです。
実際、私のSNSのフォロワーは、55歳以上の中高年層がとても多いんです。今73歳でもこうして元気に活動できている姿を見て、「59歳の私ならできるかもしれない」と感じてもらえたら、それが何よりうれしいですね。
きょうかさん:今後、私たちがデジタル系のサービスを広げていく中で、「シニアでも使えるんだ」というイメージを広めていくには、ばあばのような存在がとても大切だと感じています。
「きょうかのばあば」の活動はSNSを中心に発信しているため、フォロワーは比較的デジタルリテラシーが高い人たちです。でも、本当はもっと広い層に届けたいと思っています。シニア世代が普段接しているメディア——たとえばテレビ、新聞、ラジオ、CMなどに露出していくことで、より多くのシニア世代に「デジタルって意外と身近なんだ」と感じてもらえるきっかけを作っていきたいですね。
ばあば:TikTokやInstagramでの発信はこれからも続けていきますし、さまざまなメディアに露出して、さらに多くの人にメッセージを届けられたらと思っています。そして、活動の大きなモチベーションでもある、きょうかと一緒に旅行することを楽しみに、これからも健康に気をつけながら、元気に活動を続けていきます。
桐山さん:本日は本当にありがとうございました。
5 対談まとめ・シニアとデジタル社会への提言
今回、世話好シニアの代表として、「きょうかのばあば」さんにインタビューする機会をいただきました。
お話を伺った「ばあば」さんは、まさに“つながりの達人”とも言える存在で、茶道に根差したおもてなしの心を原点に、人とのつながりを何より大切にし、惜しみなく手を差し伸べる姿勢は、「世話好きシニア」の理想像の一つかもしれません。
「愛されるより、愛したい」という言葉に表れるように、与えることに喜びを見出し、周囲を自然と巻き込んでしまう優しさと包容力にはまさにこのクラスタの代表ともいえます。
また、AIを活用して動画制作に挑戦するなど、デジタル領域への積極的なチャレンジも印象的。「やってみたら楽しかった」という率直な感想は、これからSNSやデジタル活用を模索する同世代にとって大きな励みとなるはずです。
このインタビューを通して、世話好きシニアのマーケティングに活かすならば、“新しいことを誰かと一緒に試す機会づくり”や“自分の経験や得意を誰かのために活かせる場”の提供という視点が考えられます。与えることと学ぶこと、その両方に価値を見出せる世話好きシニアは、人とのつながりを起点に他のシニア層を優しく前向きに動かす力を持った存在です。だからこそ、企業にとっては、世話好きシニアの好奇心や思いやりを引き出す“共創の仕掛け”が、次なるマーケティングの鍵となるのではないでしょうか。
ASKOシニアクラスタ調査のご紹介
こうした多彩なシニア層のリアルなプロフィールやインサイトを深く理解するためには、統計データだけでなく、クラスタごとのリアルな声や行動の分析が欠かせません。朝日広告社の『ASKOシニアクラスタ調査™』は、60歳以上を対象に多角的な分析を実施し、世話好きシニア・今でしょシニア・我が道シニアなど6つのクラスタに細分化しています。これにより、個々の価値観やライフスタイルに寄り添ったマーケティング戦略の立案に役立つだけでなく、エビデンスに基づいた情報発信やキャンペーン展開が可能となります。