激化する市場で強いブランドを築くには、企業視点から生活者視点へ転換し、存在価値を共有したうえで、再現性のある6つのステップ──①立脚点の共有、②環境変化の把握、③戦略策定、④デザインポリシー整備、⑤評価指標設定、⑥カスタマージャーニー設計─を踏むことが重要です。

はじめに|なぜ今「ブランド戦略」が経営・マーケティングに不可欠なのか

ブランド戦略とは、顧客や社員から「どのような存在として選ばれたいか」を定め、そのためにブランドの意味・提供価値・立ち位置を設計する経営戦略です。

ロゴや広告だけでなく、「なぜこのブランドでなければならないのか」という“選ばれ続ける理由”をつくることが目的です。

私たちを取り巻くビジネス環境は、これまでの常識が通用しないほど大きく変化しています。

商品やサービスの差別化が難しくなり、顧客の価値観も多様化し、「ブランドをどう捉えるか」が企業成長の分岐点になっています。

本記事は、ブランド戦略の基本から実務への落とし込みまでを体系的に理解したい経営者・ブランディング・マーケティング・事業責任者向けの実践ガイドです。

かつては「いい商品をつくれば売れる」という時代がありました。しかし今は、どの産業でも技術や情報が瞬時にコピーされ、機能や品質の差はすぐに埋められてしまいます。

その結果、人々の選択基準は大きく変わり、

  • どんな感情が満たされるか
  • どんな自分に近づけるか
  • ブランドの価値観や姿勢に共鳴できるか

といった “感情と価値観ベースの判断軸” が主流になりました。

こうした変化は、外側(顧客)だけの現象ではありません。採用難や人的資本経営の義務化などにより、企業は内側(社員)からも選ばれる存在でなければならない時代になっています。

  • 採用難・人材獲得競争
  • 若手の早期離職
  • エンゲージメント低下
  • ESG・サステナビリティへの要請

これらは一見バラバラのように見えますが、すべて「どんな価値観を持つ企業として選ばれたいのか」
というブランド戦略と深く結びついています。

ブランドは、もはやマーケティング部門だけのテーマではありません。経営の意思決定や組織文化、採用戦略、顧客体験――企業のあらゆる活動をつなぐ基盤となっています。

本記事では、次のポイントをわかりやすく整理します。

  • ブランド戦略の定義と本質
  • 今の時代に不可欠な理由
  • 成果につながるブランド戦略の立て方
  • 失敗要因と成功させるコツ
  • KPI設計と可視化の方法
  • 実務で使えるプロセス(6ステップ)

最後まで読むことで、「ブランド戦略とは何か」「自社はどんな存在として選ばれるべきか」が明確になり、明日から実践できる“戦略の全体像”がつかめるようになります。

※参考:ブランディングとは?意味・目的・効果を「感情価値」から理解する戦略入門

ブランド戦略とは何か?|意味・定義とブランディングとの違い

「ブランド戦略」という言葉は広く使われていますが、企業によってその解釈は大きく異なります。

まずは、一般的な定義と、私たちASAKOが実務の現場で用いている定義を整理しながら、ブランド戦略の本質を掘り下げていきます。

 

❶ 一般的に言われるブランド戦略の意味・定義

ビジネス書や教科書で語られるブランド戦略は、次のように整理されます。

  • 顧客に「どんな存在として記憶されるか」を設計する戦略
  • 市場でどのポジションを取り、どう差別化するかを決める方針

つまり、一般的には「このブランドは何者なのか?」を市場に明確にするための方向性を決める経営戦略という位置づけです。

 

❷ 私たちASAKOが採用する“実務的なブランド戦略の定義”

私たちは、ブランド戦略を“感情”と“関係性”の観点から捉えています。

  • ブランド戦略とは、顧客に“どんな意味のある存在として感情移入されたいか”を決める指針

この定義を採用する理由は、顧客行動が“機能比較”ではなく、価値観・姿勢・共感ベースへと大きく変化しているからです。

の実務的な定義の前提には、次のような考え方があります。

  • ブランドは「どれだけ知られているか」より「どういう意味で受け取られているか」で決まる
  • 顧客は商品だけでなく“価値観・感情・理想”も含めて買っている
  • 企業は意図的に“選ばれ続ける理由”を設計する必要がある
  • ブランドは「経営の意思 → 社員の行動 → 顧客体験」で育つ

こうした背景から、ブランド戦略は“感情移入される意味をデザインする経営フレームワーク”として機能します。

このように、ブランド戦略を「感情移入される“意味”を設計するための経営フレームワーク」として捉えることが、実務レベルでは非常に重要になってきます。

 

❸ ブランド戦略の本質とは|ひと言で言うと?

ブランド戦略の本質は、“選ばれ続ける理由をつくること”にあります。

ロゴでも、広告でも、デザインでも終わらない。ブランド戦略とは、企業の 存在意義(Why)・提供価値・姿勢を言語化し、

  • なぜこのブランドでなければならないのか
  • 他社では代替できない理由は何か

を明確にするための戦略レベルの設計作業です。

 

❹ ブランド戦略とブランディング・マーケティング・広告の違い

ブランドに関する言葉は混乱しやすいため、ここでは一度明確に整理します。

◎ ブランド戦略:方向性を決める“設計図”

  • 存在意義・提供価値・立ち位置・世界観を決める
  • 10年続く「選ばれる理由」を設計する
  • 経営・組織・顧客体験すべての指針になる

◎ ブランディング:設計図を“体験”として実装する活動

ブランド戦略で描いた設計図を、現実の世界で体験として実装していく活動が「ブランディング」です。

  • インナーブランディング(理念浸透・文化づくり)
  • アウターブランディング(発信・CX・コミュニケーション)
  • 言葉・デザイン・顧客体験・コミュニケーションを一貫させる

ブランディングとは、「ブランド戦略を体験として届ける一連の実行活動」 といえます。

◎ マーケティング:市場で売れる仕組みをつくる

  • 顧客理解
  • 4P
  • ファネル設計
  • 商品・サービスを売れる状態に整える

マーケティングは「売る仕組み」。ブランド戦略は「選ばれる理由」。両者は役割が異なり、ブランド戦略がマーケティング戦略の方向性を決める関係にあります。

◎ 広告・デザイン:価値を伝える“最終表現”

  • 広告コピー・ビジュアル
  • ロゴ、VI、トーン&マナー
  • SNS投稿、動画、キャンペーンなど

広告・デザインはブランド戦略の“アウトプット”であり最終表現です。ここだけを整えても、ブランドは育ちません。

 

❺ 全体像を整理すると?

ブランド構築の流れは以下のような順番になります。

  • ブランド戦略(Why) → ブランディング(How) → マーケティング/広告(What / Expression)

この順序が逆転し、広告やデザイン(What)から考え始めてしまうと、「見た目は整っているのに、選ばれない」という状態に陥りやすくなります。

なぜブランド戦略が重要なのか?|市場環境・経営課題・組織課題との関係

ブランド戦略は、かつて「あると良いもの」でしたが、今は 経営にとって必須の基盤 になっています。その背景には、顧客行動・市場構造・組織課題の劇的な変化があります。

ここでは、「なぜ今ブランド戦略が必要なのか」を環境変化の観点から整理します。

 

❶ 市場成熟化で“商品・サービス差別化”の限界が露呈している

多くの業界で、商品やサービスはすでに一定以上の品質に到達し、もはや、「機能の差」では戦えない市場になっています。

  • 高品質・高機能は当たり前
  • 競合はすぐ模倣できる
  • 新規参入のハードルも下がっている

その結果、スペックで差別化しずらくなっているのです。

“機能で選ばれる時代”が終わり、“意味・価値で選ばれる時代”へと移行しています。このとき企業に求められるのは、「何を売るか」だけではなく、「どんな意味で選ばれるか」を明確にするブランド戦略です。

 

❷ テクノロジー進化で“優位性がすぐ埋まる”時代になった

AI・クラウド・外注サービスの普及により、技術格差・情報格差は急速に縮まっています。

  • AIで類似商品が短期間で作れる
  • UI/UX/デザインもテンプレートで似た水準へ
  • デジタル広告は誰でも簡単に出稿できる
  • D2Cブランドが短期間で量産される

かつて数年かけて築いた差別化が、今は数週間〜数ヶ月で追いつかれる時代です。だからこそ、短期間では模倣されない“ブランドの意味・姿勢・世界観”が競争力として重要になっています。

 

❸ 顧客の選択基準が“機能→価値観・共感・ストーリー”に変化した

現代の顧客は、商品そのものの機能だけでなく価値観・姿勢・自己表現を重視してブランドを選びます。

  • 機能が同じなら「共感できるブランド」を選ぶ
  • スタンスや世界観の一貫性を求める
  • SNSを通じて企業の“人柄”や“価値観”を見て判断する
  • 感情移入や愛着の度合いが、LTV(生涯価値)を左右する

つまり、ブランドは顧客にとって“自分を表す選択”になっているのです。ブランド戦略=顧客の価値観や自己表現を満たす戦略とも言い換えられます。

 

❹ 採用競争の激化で“働き手から選ばれるブランド”が必要になった

採用活動では“売り手市場”が続き、企業はこれまで以上に「選ばれる立場」になっています。

  • 企業の価値観やスタンスで会社を選ぶ
  • 「何をしている会社か」より「どう社会に貢献する会社か」を重視する
  • 仕事に意味や誇りがあるかどうかがモチベーションの中心になる

企業側も、

  • 応募数が増えない
  • ミスマッチによる早期離職
  • 従業員ンゲージメントの低下

という課題に直面しています。

採用は「企業選び」ではなく「価値観のフィット」になりました。この構造変化に対応できるのがブランド戦略です。

 

❺ ESG・パーパス経営の時代に“企業の姿勢”が問われている

投資家・メディア・消費者が求めるのは、もはや“実利”だけではありません。

  • 社会的意義は何か?
  • 社会にどう貢献している?
  • サステナビリティへの取り組みは?

これらはすべて、ブランド戦略の中核である「パーパス」と直結しています。今やブランドとは、企業の姿勢そのものが問われる時代なのです。

なぜブランド戦略が重要なのか?

  • 機能差別化が通用しない
  • 優位性がすぐ模倣される
  • 顧客は価値観で選ぶ
  • 採用でも“選ばれる理由”が必要
  • ESG・パーパスが企業の信頼を左右する

こうした変化の中で、ブランド戦略は「選ばれ続ける理由」をつくる経営基盤として不可欠になったのです。

ブランド戦略の目的とは?|選ばれ続けるブランドをつくる7つの役割

ブランド戦略の目的は、ロゴを整えることでも、広告の見栄えを良くすることでもありません。企業が 「なぜ選ばれ続けるのか」 を意図的にデザインし、長期的な価値として蓄積していくことです。

ここでは、ブランド戦略が果たす7つの役割を紹介していきます。

 

❶ ブランド戦略の目的①|顧客から“指名される理由”をつくる

競合で溢れ、機能差では差別化できない現代では、「なぜ数ある中からこのブランドを選ぶのか?」 が最重要です。そのためのポイントは以下の通りです。

  • 価値観で選ばれる
  • 感情移入で支持される
  • 他では代替できない存在になる
  • 高くても選ばれる

事実、ASAKOの独自研究では、ブランドに感情移入している人は、そうでない人に比べ「多少高くても買いたい」人が+30%増えることがわかっています。

つまり、指名されるブランドほど、価格ではなく“意味・価値”で選ばれる状態に近づていくのです。

価格プレミアムー多少高くても買いたい

❷ブランド戦略の目的②|長期的なブランド資産を積み上げる

広告やキャンペーンは“その瞬間”の売り上げや認知に貢献しますが効果は一時的で、キャンペーンが終わればインパクトは薄れていきます。

一方で、ブランド戦略は“積み上がる資産”をつくります。

  • 認知度の蓄積
  • 好意・信頼の蓄積
  • 世界観・ストーリーの蓄積
  • 共感の蓄積

これらはすべて「時間と共に強くなる資産」です。ブランド戦略に継続的に取り組む企業は、単発のヒットではなく、「なぜこのブランドは伸び続けているのか」を説明できる、再現性のある成長を実現しやすくなります。

❸ ブランド戦略の目的③|価格競争を回避し“価値で選ばれる状態”をつくる

ブランドが弱い企業ほど、値下げやキャンペーンに頼りがちになります。これは長期的に利益を圧迫し、事業を不安定にします。

しかし強いブランドは、価格より価値で判断されるため、

  • 値下げをしなくても選ばれる
  • 粗利が安定する
  • 顧客のLTV(生涯価値)が高まる

という状態を築きやすくなります。ブランド戦略とは、「値引きに頼らない経営」や「価値ベースの価格設定」を実現するための必須条件なのです。

 

❹ ブランド戦略の目的④|顧客体験の一貫性を高め、信頼を構築する

ブランドの印象は、広告だけで決まりません。顧客はあらゆる接点を通してブランドを判断します。

  • サービス品質
  • 営業・サポートの対応
  • WEB・SNSの世界観
  • 店舗や導入後の体験

これらがバラバラだと、ブランドは曖昧になり信頼が損なわれます。ブランド戦略は、あらゆる接点に“共通の価値軸”を持たせるための指針です。

 

❺ ブランド戦略の目的⑤|社員の誇り・行動基準・組織文化を揃える

ブランドは社外に対するイメージだけでなく、社内の意思決定や行動にも影響する経営資源です。むしろ 社内こそ最大の効果が出る領域です

  • 経営の意思決定
  • 部門ごとの判断基準
  • 現場の行動原則
  • 採用・育成の基準
  • 社員の誇りや帰属意識

これらを一つのブランド軸で揃えることで、組織は強く、揺らがなくなります。“ブランドが強い企業=組織文化が強い企業”と言われるのは、ブランド戦略が カルチャーと行動の共通言語として機能しているからです。

 

❻ ブランド戦略の目的⑥|採用力を高め“価値観で働く人材”を惹きつける

採用市場において、企業ブランドはますます重要になっています。求職者は、企業の“姿勢”や“価値観”を重視して働く場所を決めます。

  • 応募者の志望理由の質が上がる
  • 入社後の定着率が上がる
  • 従業員エンゲージメントが高まる

ブランド戦略は、

  • 「どんな想いを持った人と働きたいか」
  • 「どんな価値観を共有する組織か」

を明確にし、価値観で集まる人材を惹きつける“採用ブランド” として機能します。

単に「人を集める」のではなく、ブランドの価値観とフィットする人材が集まる状態 をつくることが、中長期的な組織の強さにつながります。

 

❼ ブランド戦略の目的⑦|経営・組織・顧客を一つの価値軸で束ねる

ブランド戦略の中でも、最も重要な目的がこれです。企業は多くの部門から構成されています。

  • 経営
  • マーケティング
  • 営業
  • 商品開発
  • 人事
  • コーポレート・広報

これらがそれぞれ別々の価値観で動いていては、企業としてのアウトプットはバラバラになり、顧客にとっても「この会社は何者なのか」がわかりにくくなってしまいます。

ブランド戦略とは、企業が「選ばれる理由」を社内外のすべてに一貫して根付かせるための経営基盤なのです。

 

ブランド戦略の目的とは?

ブランド戦略が担うのは、

  • 指名される理由の設計
  • 長期のブランド資産づくり
  • 価格競争からの脱却
  • 一貫した顧客体験
  • 組織文化の統合
  • 採用力の強化
  • 全社最適で動く仕組みづくり

という “経営全体の価値構造を整えること” です。

ブランド戦略の種類とは?|全体ブランド戦略・個別ブランド戦略・ポートフォリオ戦略

ブランド戦略と一口にいっても、企業の規模・事業の多角化・競争環境によって、求められる「戦略のレイヤー」は大きく異なります。ここでは、

  1. ブランド全体の“構造”を決める戦略(ブランドポートフォリオ)
  2. 目的別に設定するブランド戦略(領域別ブランド戦略)

の2軸でご紹介します。BtoC/BtoBどちらにも応用できる考え方です。

❶ ブランドポートフォリオ戦略とは|全体のブランド構造をどう設計するか

複数のブランド・サービスを持つ企業にとって、「どのブランドを、どのように位置づけ、どう相乗効果を生むか
を設計することは極めて重要です。ここでは代表的な4つのブランドポートフォリオ戦略を紹介します。

 

① マスターブランド戦略(統合型)とは|企業名を軸にしたブランドポートフォリオ

単一の企業名(コーポレート)を中心に据え、すべての事業が同じブランドを共有する戦略です。

◎ 例:キユーピー(キユーピーマヨネーズ、キユーピードレッシング、キユーピートマトソースなど)

◎ メリット

  • ブランド投資の効率が高い
  • 企業文化・世界観を一貫させやすい
  • 採用・企業価値向上にも効果が大きい

◎ 向いている企業

  • 横断する「共通価値(世界観)」が強い企業
  • プラットフォーム型・多事業展開

 

② サブブランド戦略(部分独立型)とは|コーポレート×個別ブランドの設計
コーポレートブランドの信頼を活かしつつ、事業・商品ごとに独自のブランド名を付ける戦略です。

◎ 例:Amazon(Amazon Prime / Amazon Kindle など)

◎ メリット

  • コーポレートブランドの信頼を個々のブランドに活用できる
  • 個別事業ごとの自由度も確保できる
  • 新規事業を伸ばしやすい

 

③ マルチブランド戦略(独立型)とは|複数ブランドで市場を獲得する戦略
各ブランドが独自の世界観・価値を持ち、複数ブランドで市場を取りに行く戦略です。
例:P&G(Pampers/Ariel/Gillette など)

◎ メリット

  • ターゲットごとに最適化がしやすい
  • 市場を横断的に獲得できる

◎ 注意点
投資が分散しやすく、運用コストが高い

 

④ ブランド拡張戦略とは|既存ブランドの意味を新領域へ広げる
既存ブランドの“世界観”を横展開し、新たな領域に進出する戦略です。
例:NIKE(スポーツシューズ → スポーツ/ライフスタイル全般)

◎ メリット

  • 既存ファン・世界観をそのまま活用できる
  • 異なる分野への新規参入コストを抑えられる

❷ 領域別ブランド戦略の種類|コーポレート・商品・採用・BtoBブランド戦略

企業の成長フェーズに合わせて、それぞれのブランドに対しての戦略も必要です。

 

① コーポレートブランド戦略|企業の存在意義と世界観を設計する
企業全体の信頼につながる「会社としてのブランド」を設計する戦略です。

◎ 目的

  • 企業の姿勢・価値観を社会に共有する
  • 採用・IR・パートナー関係を強化
  • 社内外の一貫性を高める

 

② プロダクト・サービスブランド戦略|商品・サービス単位の価値設計
商品・サービスごとに提供価値を定め、“どんな存在として選ばれるか”を設計する戦略です。

◎ 目的

  • 競合商品との差異化ポイントを明確にする
  • 価値ベースの価格設定を可能にする
  • LTV(顧客生涯価値)を最大化する

 

③ 採用ブランド戦略|働き手から選ばれる企業ブランドづくり
求職者が触れる“採用体験”をブランドとして設計します。インナーブランディングと強く連動します。

◎ 目的

  • 応募者の「志望理由の質」を高める
  • 入社後の定着率を上げる
  • 社員の誇りや行動基準を揃える

 

④ BtoBブランド戦略|“期待と信頼で選ばれる関係性”をつくる
仕様比較に陥りやすいBtoB領域では、ブランド価値が大きな武器になります。

◎ 目的

  • “期待と信頼”で選ばれる状態をつくる
  • アライアンス・パートナーシップを強化する
  • 営業効率を引き上げる(紹介・指名につながる)

❸ ブランド戦略の全体像まとめ|「企業全体の価値構造 × 個別ブランド価値」を設計する

ブランド戦略とは、「企業全体のブランドポートフォリオ」(構造)×「それぞれのブランドの提供価値」(中身)を一貫した軸で設計する取り組みです。

これにより、

  • 顧客に一貫したブランド体験が届く
  • 社内で判断基準が揃う
  • ブランド投資が効率的になる

といった、企業成長の土台をつくることができます。

 

ブランド戦略を構成する7つの要素とは?|企業の意志と顧客の感情をつなぐ設計図

強いブランドは、偶然ではなく“設計”から生まれます。

企業が発信する理念やメッセージ、顧客が感じる体験や印象――それらを一貫して束ねているのが、ブランドを構成する7つの要素です。

これらの要素は、企業の「意志(Will)」と顧客の「感情(Emotion)」をつなぐ“設計図”のようなものです。どれか一つでも欠けると、ブランドは断片的な印象になり、顧客の心に定着しません。

ASAKO Brand PRISM©

❶ 価値観ペルソナ|ブランドに感情移入してくれる相手を定義する

ブランドづくりの出発点は、「誰に感情移入してもらいたいか」を明確にすることです。年齢や性別といった属性ではなく、どんな価値観を持つ人が共鳴してくれるのかを基準にペルソナを描きます。
このブランドは、自分の価値観を代弁してくれている」と感じてもらうことが、最初のブランド体験なのです。

❷ ブランド提供価値|顧客が感じる喜びとベネフィットを設計する

ブランドを通じて、顧客にどんな感情や体験を届けたいのかを定義します。ブランド提供価値は、次の3つに整理できます。

  • 実利価値:便利・高品質・パフォーマンス
  • 感情価値:誇り・安心・高揚感
  • 自己実現価値:理想の自分に近づける感覚

強いブランドほど、「機能を超えた感情の喜び」 を設計しています。たとえば、

  • Appleは「創造的で自由である感覚」
  • スターバックスは「心を整える時間」

を提供しています。強いブランドは、機能を超えた“感情の喜び”をデザインしているのです。

ブランド提供価値

❸ ブランドパーパス|社会における存在価値・使命を言語化する
ブランドパーパスとは、「なぜこのブランドは存在するのか?」という問いに対する答えです。パーパスが明確だと、

  • 市場環境が変わっても揺らがない
  • 社員の誇り・共感が強くなる
  • 顧客の支持が長期的に積み上がる

といった効果が生まれます。

パーパスは“理想論”ではなく、企業の姿勢と意志を外部に伝える共通言語です。

 

❹ ブランドパーソナリティ|ブランドの“らしさ”を決める人格設定
ブランドにも、人と同じように「性格(人格)」があります。例えば、

  • 「革新性 × 挑戦」 → 未来を切り拓く“先導者”
  • 「安心 × 思いやり」 → そっと寄り添う“伴走者”
  • 「遊び心 × 創造性」 → 感性を刺激する“共犯者”

どんな価値観で世界と関わるブランドなのか を定義することで、

  • 言語トーン
  • デザイン
  • 接客
  • 社内文化

まで一貫性が生まれます。
顧客は“人格を感じるブランド”に惹かれる。これがパーソナリティ設計の核心です。

 

❺ ブランドポジショニング|差別化ではなく“独自化”をつくる立ち位置設計
ポジショニングの目的は、競合より優れることではありません。「なぜこのブランドでなければならないのか」という独自の意味を築くこと です。

  • 競争の中で優位に立つ(差別化)ではなく
  • 競争そのものを超えて存在する(独自化)

これが強いブランドの特徴です。

ポジショニングMAP

❻ ブランドACT|顧客体験を通じてブランド価値を伝える具体アクション
ブランドは、考え方ではなく“行動”によって伝わります。

  • Webサイト
  • 店舗/接客
  • 営業
  • カスタマーサポート
  • 広告
  • SNS

あらゆる接点で 「ブランドらしさ」を感じられる瞬間 が設計されているかが重要です。
7P(Product/Price/Place/Promotion/People/Process/Physical evidence)やカスタマージャーニー全体を通じて、顧客が“感じる体験”として価値を届けます。

 

❼ ブランドステートメント|言葉でブランドの世界観を象徴する
ブランド全体を象徴する“核の言葉”がブランドステートメントです。それは単なるキャッチコピーではなく、ブランドの価値観を凝縮した一言です。

  • Nike:「Just Do It.」
  • Patagonia:「We’re in business to save our home planet.」

このような言葉が、社員・顧客・社会をつなぐ“共通言語”として機能します。明確なブランドステートメントは、全社の意思をひとつに束ね、すべての発信と行動を導く羅針盤となります。

ブランドステートメントの作り方

❽ 7つの要素がそろうとブランドは「構造体」になる|点ではなく仕組みで育てる

これら7つの要素は、単独では機能しません。

  • 価値観ペルソナ → だれのためのブランドか
  • 提供価値 → どんな喜びを届けるか
  • パーパス → なぜ存在するのか
  • パーソナリティ → どんな人格で届けるか
  • ポジショニング → どんな独自性を持つか
  • ACT → どんな体験として実装するか
  • ステートメント → 何を象徴として掲げるか

すべてが連鎖することで、ブランドは“仕組み”として育ちます。これが、強いブランドが偶然ではなく「設計」から生まれる理由です。

ブランド戦略の立て方|6ステップで構築する実践プロセス

強いブランドは、理念やデザインから生まれるのではなく、戦略から実践、そして運用までを一貫してつなぐプロセス設計によって育ちます。
ここでは、ブランド戦略の作り方・進め方を6つのステップでご紹介していきます。

STEP1:ブランド戦略の立脚点を共有する|ブランディングの意味をチームで揃える

STEP1では、そもそも「ブランディングとは何か」「なぜ今ブランド戦略が必要なのか」という立脚点を、経営・マーケティング・人事など関係者全員で揃えます。

ここでのゴールは、ブランドの定義が人によってバラバラな状態を解消し、「どのように選ばれる存在を目指すのか」という共通認識をつくることです。

ブランディングは、広告やデザインといった目に見える施策だけでなく、ブランドの価値を社会や顧客の心にどう根付かせるかという、非常に抽象的で広がりのある概念です。そのため、担当者や部署によって解釈が異なりがちです。

もしこの定義が曖昧なまま進めてしまうと、各部門が自分たちの目先の目標や事情に沿って施策を実行し、結果として「全体としてのブランド像」がバラバラになる危険性があります。

これは、顧客にとって混乱を招くだけでなく、せっかくの投資が分散して効果を失う原因にもなります。

だからこそ、ブランディングがもたらすメリット──たとえば指名買いの促進、採用力や従業員エンゲージメントの強化、価格競争に巻き込まれない優位性の獲得──を全員が理解しておくことが重要です。

全社で共通の方向性を持てて初めて、個々の施策が連動し、ブランドとしての一貫性と力を発揮できるのです。

STEP2:外部環境を分析する|PEST・3Cでブランド環境の変化を捉える

STEP2では、PEST分析や3C分析を通じて、ブランドを取り巻く外部環境と競合状況、自社の立ち位置を客観的に把握します。

ここでのゴールは、「どんな環境変化を味方につけられるか」「どこにブランドの伸びしろがあるか」という前提条件を明確にし、戦略設計の土台をつくることです。

あらゆるブランドは、常に環境の変化に晒されています。

経済情勢、技術革新、消費者の価値観の変化、競合の動き──ブランドは常にこうした外部要因の影響を受けています。

つまり、環境の変化を正しく捉え、そこから生まれる「機会」を活かし、「課題」を乗り越える視点なしに、効果的なブランディングは成立しません。

❶ PEST分析:

政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの観点から環境変化を整理し、「どの変化を味方につけられるか?」を見極める

 

❷ 3C分析:

どのようなニーズに対して、自社の強みを通して、競合を上回る価値を提供できるか?を明らかにする
ブランド戦略の“前提条件”を正しく設定すること。それが、後のすべての施策を成功に導く鍵になるのです。

STEP3:ブランド戦略の指針を設計する|ターゲット・提供価値・パーパス・ポジショニングを決める

STEP3では、ブランドの中核となる指針として、ターゲット・ペルソナ・ブランド提供価値・ブランドパーパス・ブランドパーソナリティ・ポジショニングを言語化します。

ここでのゴールは、「誰に・どんな価値を・どんな存在感で届けるブランドなのか」というブランドの軸を、ブレない言葉として定めることです。
ブランドの軸とは、ブランドの存在理由や立ち位置、顧客との関係性を形作る基盤であり、これが明確でなければ施策は一貫性を欠き、メッセージもぼやけてしまいます。
そのため、ブランド戦略では次の要素を言語化し、社内外で共有できる形にすることが重要です。 

 

❶ ターゲットとペルソナを明確に設定する

◎ ターゲット設定

ターゲット設定とは、限りあるビジネス資源を誰に集中させるかという生活者の選択です。その目的は、生活者とブランド双方の利益を最大化することです。

言葉を変えれば「どの顧客層に買ってもらいたいかを決めること」ともいえます。もしターゲティングがうまくいかなければ「誰のためのブランドなのか」が明確にならず、結果的に誰も買ってくれない状態になってしまいます。
ターゲット設定は、ブランディングの起点となるため、ターゲット設定を間違えばその後の施策はすべて間違うことになってしまうので注意が必要です。

 

◎ ペルソナ設定

ペルソナ設定とは、「ブランドに対して感情移入がなされ、長期的なファンになってくれやすい顧客像」を描くことを指します。

ターゲット(という塊)から更に踏み込んで「生身の人間」として描き出し、ターゲットを深く、ひとつの物語として理解することとも言えます。

ペルソナデザインの世界では、よく「Good story has right details」という言葉が使われます。
ペルソナデザインでは、価値観やパーソナリティにまで踏み込んだ「人物像」を描いていくため「その人が何に感動しそうなのか」「どういった状況で使うのか」など、ペルソナからの逆算視点で物事を考えることができるようになります。

 

❷ ブランド提供価値を定義する

ブランド提供価値とは、ブランドが顧客に提供できる「喜びや嬉しさの度合い」を指します。顧客側から見れば「購入動機」にあたります。

ブランド提供価値の種類は、以下の通りです。

  • 実利価値:そのブランドの実利から得られる喜び
  • 感情価値:そのブランドを手にすることで満たされる感情的な喜び
  • 自己実現価値:そのブランドを手にすることで、理想の自分に近づける喜び

強いブランドの条件が、ブランドが顧客に提供する「価値の大きさ」で決まる以上、ブランド提供価値の定義は極めて重要です。

 

❸ ブランドパーパスを描く

ブランドパーパスとは、ブランド提供価値が社会全体に広がったときに実現できるであろう社会の姿であり、そのブランドの社会的な存在価値です。
ブランドパーパスを明確に示すことができれば、そのブランドは、多くの人々の共鳴と感情移入を得て、「このブランドを応援したい」「このブランドを選びたい」と思われる存在へと進化します。

 

❹ ブランドパーソナリティを設定する

ブランドパーソナリティとは、ブランドが、どんな価値観を掲げ、どんな態度で接し、どんな振る舞いを大切にしているのかを規定したブランドの人格です。

  • 「革新性」と「挑戦」を掲げるブランドなら、未来を切り拓く“先導者”
  • 「安心感」や「思いやり」を大切にするブランドなら、そっと寄り添う“伴走者”
  • 「遊び心」や「創造性」を軸に持つブランドなら、人々の感性を刺激する“共犯者”

このように、同じジャンルを持つブランドであっても、“どのような価値観で届けるか”によって、まったく異なるブランド体験が生まれます。

ブランドパーソナリティは、「このブランドは自分に近い」と感じさせる“感情移入のきっかけ”となります。

ブランドを“自分ごととして感じられるストーリー”に変える鍵――それが、ブランドの個性を形づくるブランドパーソナリティです。

 

❺ ブランドポジショニングを設定する

ブランドポジショニングとは「ほかに替えられない独自の役割を築き、比較されずに指名買いし続けてもらえる状況」を創り出すことを指します。

ポジショニングの目的は、競合ブランドと比較して優位に立つことではなく、顧客から見て「ほかに替えられない」独自の存在になることです。

つまり、ポジショニングとは「競争に勝つ」ことではなく「競争をしないで賢く勝つ」ことといえます。

「競争をする」ということは、既存の競争ルールの中で、常に比較をされながら体力勝負の消耗戦に挑むことを指します。

しかし、ポジショニングには「競争をしないでも勝てる領域」を発見したり、あるいは「顧客ニーズを先回りして捉え、市場創造型のブランド価値を提供する」という戦略が背景にあります。

 

STEP4:デザインポリシーを定める|ブランド表現の一貫性を確保する

STEP4では、ロゴ・カラー・フォント・コピー・トーン&マナーなど、ブランドの見え方・伝わり方を統一するデザインポリシーを整えます。

ここでのゴールは、部署や制作担当者が変わっても「このブランドらしい表現」を再現できる状態をつくり、あらゆる接点で一貫したブランド体験を届けられるようにすることです。

あなたが携わっているブランドには、いくつもの競合ブランドが存在します。それらの競合ブランドの中で、顧客があなたのブランドを知る際に一番初めに目にするのが「デザイン」です。

ロゴ、パッケージ、WEBサイト、CM、店舗POP…。これらがバラバラでは、雑に見え、印象が薄まり、せっかくのブランド戦略が機能しません。

だからこそ、ブランドのデザインポリシーを設け、各部門・制作担当者が共通の基準を持ち、デザインの一貫性・統一性を保つ必要があります。

  • ロゴ・色・トーン&マナーなどのVIガイドライン
  • 表現NG集
  • クリエイティブチェック体制

こうしたデザインの運用ルールを整備しておくことで、ブランドの統一感と一貫性を保ち、「見えない価値」が「伝わる価値」へと変わります。

STEP5:ブランド戦略のKPIを設定する|ブランドエクイティと指標群を設計する

STEP5では、ブランド戦略の成果を測るために、ブランド認知・好意・指名度などのKPIやブランドエクイティ指標を設計します。

ここでのゴールは、「なんとなく良くなっている気がする」ではなく、ブランドという無形資産を定量・定性の両面からモニタリングできる管理指標を整えることです。

ブランド戦略を策定する後は、その成果を測る「評価指標」の設計が欠かせません。

よく使われるのが「ブランドエクイティ(ブランドの資産価値)」です。加えて、以下のようなKPIを設けて管理することが一般的です。

  • ブランド認知度
  • 理解・共感度(パーパス共感度など)
  • 購買意向・指名買い率
  • 顧客ロイヤルティ
  • NPS(ネットプロモータースコア)

ブランド提供価値は“見えない価値”であるからこそ、定量・定性の両面で可視化してマネジメントする視点が必要です。

STEP6:カスタマージャーニーを設計する|顧客体験にブランド戦略を落とし込む

STEP6では、顧客がブランドと出会い、理解し、信頼し、ファンになっていくまでの一連の体験=カスタマージャーニーを描きます。

ここでのゴールは、ブランド戦略で定めた価値や世界観を、広告・Web・営業・サポートなどあらゆるタッチポイントの具体的な体験として落とし込み、「どの接点でも同じブランドらしさを感じられる状態」を設計することです。

ブランド戦略を形にし、実際の顧客体験へと落とし込むためには、カスタマージャーニー(顧客がブランドと出会い、購入・利用・ファン化していくまでの行動や心理の道筋)を明確にすることが欠かせません。

カスタマージャーニーは、単なる購買プロセスの図解ではなく、顧客がどんな場面で、どんな気持ちでブランドに触れるのかを可視化する設計図です。これを描くことで、顧客体験の中にある“強みの瞬間”や“改善すべき隙間”が明らかになります。

  • タッチポイントを洗い出す
  • 各接点での顧客心理を把握する
  • 望ましい体験の流れを設計する

カスタマージャーニーを描く最大の目的は、ブランド戦略を顧客の体験ストーリーとして具現化し、社内の全員が同じゴールイメージを持てるようにすることです。

これによって、マーケティング担当だけでなく、営業、カスタマーサポート、開発、デザインといったすべての部署が「顧客体験」という共通言語のもとで動けるようになります。

カスタマージャーニーは、一度作って終わりではありません。市場や顧客行動が変化するたびにアップデートし、ブランドと顧客の関係性を時代に合わせて進化させ続けることが重要です。

 

ブランド戦略が機能しない理由とは?|3つの落とし穴と改善のヒント

ブランド戦略の重要性を理解していても、「思うように成果が出ない」「社内に浸透しない」という声は少なくありません。

その多くは、戦略そのものが間違っているのではなく、進め方や捉え方に落とし穴があることが原因です。

ここでは、ASAKOが多くの企業支援を通して見えてきた、ブランド戦略が機能しない企業に共通する3つの課題を解説します。

 

落とし穴①:ブランド=広告・デザインの誤解

最も多い誤解は、「ブランド=ロゴや広告のこと」として、表層的な表現だけを整えるケースです。

もちろん、デザインや発信はブランドを伝える上で重要な要素ですが、それは“結果”であって“出発点”ではありません。

ブランドは、「何をどんな想いで提供するのか」という企業の価値観と姿勢があって初めて形になります。デザインはその価値を“見える化”する手段にすぎません。

形だけを整えても、ブランドは「きれいなデザイン」に終わってしまいます。本来の目的は、“企業の信念を顧客に感じてもらうこと”なのです。

 

落とし穴②:理念と現場の分断による“意味の自分ごと化”不足

もうひとつの落とし穴は、理念が「壁に貼られた言葉」で止まっていることです。

経営理念やパーパスを掲げても、現場の行動や日常業務につながっていなければ、ブランドは「上層部のスローガン」で終わってしまいます。

ブランドを機能させるためには、社員一人ひとりが「自分の仕事がブランドとどう関係しているのか」を理解し、日常の意思決定や行動の中で体現できる状態が欠かせません。

つまり、 “理念の共有”ではなく“意味の自分ごと化”がポイントです。

理念と現場をつなぐインナーブランディングが欠けていると、外に発信する言葉と中での行動が一致せず、顧客にも一貫性が伝わりません。

 

落とし穴③:共通言語の欠如で社内のブランド定義がバラバラになる

最後の落とし穴は、ブランドの定義が人によって異なることです。

経営、マーケティング、営業、人事――それぞれが「自分の中のブランド像」を持って動いているため、発信や体験にズレが生じ、顧客に“統一感のない印象”を与えてしまいます。

ブランド戦略の本質は、「全員が同じ価値観で語り、行動すること」。そのためには、共通言語としてのブランド定義を社内で共有する必要があります。

「ブランド=顧客にどんな価値を感じてもらう存在か」この問いに、社員全員が同じ言葉で答えられる組織こそ、ブランドが機能する企業です。

ブランドは、マーケティング部門の専有物ではありません。経営、営業、商品開発、人事――すべての活動がブランドを形づくります。

どれほど優れた戦略があっても、社内で価値観が共有されず、日々の行動に落とし込まれていなければ、ブランドは動きません。

 

逆に、全員が同じ価値観で動くとき、ブランドは「組織文化」から「競争優位」へと進化します。

成功するブランド戦略の条件とは?|経営・現場・顧客が一体化するブランド構造

ブランドは、経営の意志・現場の行動・顧客の感情移入がひとつの線でつながったときに、初めて本当の力を発揮します。

逆にいえば、どれか一つでも分断されていると、ブランドは“言葉だけの存在”にとどまります。

ここでは、「成功するブランド戦略の3つの条件」を紹介します。それは、①経営の意志が明確であること、②現場が自走していること、③顧客の感情移入が循環していることです。

 

条件①:経営の意志を明確にし、ブランドを“経営戦略”として位置づける

強いブランドは、マーケティング施策ではなく経営そのものの意思決定軸として設計されています。

「このブランドで何を実現したいのか」「社会にどう貢献したいのか」――その明確なビジョンがあるほど、ブランド活動は短期的な施策に振り回されません。

経営がブランドを「見た目」ではなく「価値観」として語れるかどうか。ここが、すべての出発点です。

 

条件②:現場が自走し、ブランドを“自分ごと”として体現している

どれほど素晴らしいブランド戦略があっても、現場の社員が「自分の仕事と関係ない」と感じているうちは機能しません。

成功するブランドは、社員が自ら語り、行動できる仕組みを持っています。つまり、トップダウンで理念を“浸透”させるのではなく、ボトムアップで“共感”が広がる状態を設計しているのです。

たとえば──

  • 社員が自分の言葉でブランドを語れる「語れる化」状態をつくる
  • ブランドの価値を日常業務で実践できる「動ける化」を促す
  • 成果を称賛し合う「連帯化」で文化として定着させる

このように、ブランドを“現場で動かす仕組み”をつくることが、組織に持続的な力を生み出します。

ブランドは「上から与えるもの」ではなく、「社員一人ひとりが育てるもの」。この自走構造がある企業は、変化の時代でもぶれない強さを持ちます。

 

条件③:顧客の感情移入が循環し、ブランドが“体験”として愛されている

ブランドは、発信ではなく体験の連続によって信頼が積み上がるものです。広告・接客・商品・SNS――すべての接点で「このブランドらしさ」を感じられるほど、顧客の中で感情が育ちます。

この感情の積み重ねが「感情移入の循環」を生み、ファンが自然に増えていく構造をつくります。

成功するブランドは、単に“顧客に好かれる”のではなく、顧客自身がブランドの価値を語り、広げてくれる存在になっています。

ブランドの最終ゴールは「感情移入の共有」。企業と顧客が共通の価値観でつながることが、最も強いブランド資産になります。

経営の意志があり、現場が動き、顧客の感情移入が循環する――この3つがつながったとき、ブランドは単なるマーケティング施策を超え、企業の文化と経営を動かす推進力になります。

ブランド戦略のKPIと成果指標|定量×定性でブランド価値を可視化する方法

ブランド戦略は、「やって終わり」ではなく、“育て続ける経営資産”です。そのためには、成果を適切に測定し、定量と定性の両面から成長を可視化する仕組みが欠かせません。

多くの企業が、ブランディングの効果を「数字で表しにくいもの」と捉えがちですが、ブランドは確実に“経営成果”へと影響しています。

ここでは、ブランドの成果を正しく測るための2つの視点を紹介します。

 

定量評価|定量評価|認知・好意・NPS・指名検索・リピートなどのブランドKPIを追う

定量指標は、ブランドの浸透や信頼度を“データ”として捉えるための重要な指標です。一見感情的に見えるブランド活動も、適切なKPIを設計すれば、確かなデータとして管理できます。

代表的な指標は次の通りです。

代表的なブランド指標

これらのデータを、短期ではなく中長期での推移として追うことが重要です。ブランドの成長は、月次のキャンペーン効果ではなく、「記憶」と「信頼」が積み重なっていく曲線で可視化されます。

 

定性評価|定性評価|誇り・共感コメント・文脈・物語の一致度からブランドを評価する

ブランドの本質は“感情のつながり”にあります。そのため、数字だけでは測れない「心の変化」を観察することが欠かせません。

定性評価の主な観点は以下の通りです。

  • 社員の誇り度:「この会社・ブランドで働くことに誇りを感じる」
  • 顧客の共感コメント:「このブランドには信頼がある」「考え方に共感する」
  • メディア・SNS上の声:ブランドがどんな文脈で語られているか
  • ブランドストーリーの一致度:経営・社員・顧客が同じ価値観を語れているか

こうした定性的な情報は、アンケートやSNS分析だけでなく、日々の顧客対応・営業現場・社内コミュニケーションの中にも現れます。

ブランドは「数字だけで測るもの」ではなく、「数字の奥にある感情の変化を読み取るもの」。その両輪を回すことで、初めてブランドは“経営の言語”になります。

 

経営成果への波及|採用・営業効率・維持率・価格競争回避に効くブランド戦略

ブランドの成長は、最終的に採用・営業・顧客維持・新規創出などの経営指標に影響します。実際に、パーパスやブランドを明確にしている企業は、以下のような効果を得ています。

  • 採用力向上:「このブランドで働きたい」と共感する応募者の増加
  • 離職率低下:社員の誇り・一体感の醸成
  • 営業効率改善:顧客からの信頼によるリピート・紹介の増加
  • 価格競争回避:価値観で選ばれることで、値下げに依存しない収益構造へ

つまり、ブランドは“マーケティングの成果”ではなく、経営の成果を支える構造資産なのです。

ブランドは、“感情の成果”と“数値の成果”の両輪で成長を捉えることで、初めて経営に活かされます。一時的なキャンペーンではなく、組織文化と顧客体験の積み重ねによって、ブランドの価値は年々高まっていくのです。

ブランド戦略のFAQ|違い・必要性・始め方・パートナー選び

Q1. ブランド戦略とブランディングの違いは何ですか?

A. ブランド戦略は「どんな存在として選ばれるか」を決める経営戦略、ブランディングはその戦略を体験として実装する活動です。
ブランド戦略は、「誰に」「どんな価値で」「どのように選ばれるか」という設計図を描く段階です。
一方のブランディングは、その設計図をもとに、顧客体験・デザイン・発信・組織文化づくりなどを通じてブランドを現実に実装するプロセスです。
つまり、戦略が「地図」、ブランディングは「旅の行動計画」。両者をセットで考えることで、初めてブランドは“経営の軸”として機能します。

 

Q2. 中小企業やBtoB企業でも、ブランド戦略は必要ですか?

A. はい。むしろ差別化が難しい中小企業・BtoB企業こそ“選ばれる理由”をつくるブランド戦略が大きな武器になります。
BtoBの場合、提供価値が似通いやすく、機能比較や価格競争に陥りがちです。
ブランド戦略によって、「なぜこの会社と組むべきなのか」という姿勢・価値観・期待値を設計すれば、価格ではなく“信頼”で選ばれる関係性を構築できます。たとえば、

  • 技術ではなく「信頼で選ばれる」
  • 製品ではなく「姿勢や誠実さで共感される」
  • 社員の一貫した対応が「文化として評価される」

これが、ブランド戦略が“営業の最強の味方”になる理由です。中小企業でも、「企業の人格」を設計することが、長期的な信頼と成長を支える基盤になります。

 

Q3. ブランド戦略を始める際、まず何から取り組むべきですか?

A. 最初の一歩は「自社ブランドの現在地を見える化すること」です。顧客・社員・市場の認識を把握し、理想とのギャップを明確にします。
多くの企業で、ブランドは“なんとなくの感覚値”で語られがちですが、

  • 社員や顧客にどう見られているか
  • どんな価値が伝わっているか
  • 競合とどう違うと認識されているか

をデータとして可視化できていないケースは多くあります。現在地がわかると「強化すべき領域」や「ズレているポイント」が明確になり、戦略の精度が一気に高まります。現状を客観的に把握できれば、「何を強化すべきか」「どの領域がずれているか」が明確になり、次のアクションが戦略的に設計できるようになります。

 

Q4. ブランド戦略を外部パートナーに依頼する場合、何を基準に選べばよいですか?

A. 「デザイン力」ではなく“経営戦略と文化までつなげられるパートナー”を選ぶことが重要です。
ブランドは見た目ではなく、意思決定・現場行動・顧客体験までを貫く経営資産です。そのため、外部パートナーは、

  • 経営とブランドを結びつけられる
  • インナーブランディングの理解がある
  • 戦略〜表現まで一貫して伴走できる

といった視点を持つかどうかがカギになります。
ブランドは、外部が“作る”ものではなく、内部と外部が“共創する”ものです。だからこそ、「共に考え、共に育てるパートナー」を選ぶことが何より重要です。

【無料DL】今すぐ、「ブランド提供価値」を整理しよう。

自社が「何を売るか」ではなく「顧客にどんな価値を届けているか」を、チーム全員の共通言語に。

ブランド提供価値を4領域×11の視点で可視化し、戦略・商品企画・コミュニケーションまで一気通貫で整える実務ワークシートを無料配布。BtoC/BtoBの記入例付です。

  • ブランドの“価値の軸”を素早く言語化
  • 施策アイデアまで落とし込める
  • 戦略、商品・サービス開発、広告コピー、営業資料に転用可能
  • ワークショップ進行台本(タイムライン付き)
  • BtoC/BtoBの記入例付き

著者プロフィール

羽田 康祐

羽田 康祐 (はだ こうすけ)

ビジネス開発局

産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。 日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。外資系コンサルティングファームなどを経て現職。 「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『本質をつかむ』『ブランディングの教科書』『パーパスブランディングの教科書』がある。

今すぐ、最適な次の一手を選ぶ

関連資料をダウンロード 内容についてお問い合わせ
コラムへ

関連コラム

関連ソリューション

資料ダウンロード一覧 お問い合わせ