ブランドは、単なるロゴやデザインではなく、「概念(コンセプト)」と「実体(仕様)」が相互補完し機能する存在です。
抽象化思考力を身に付ければ、ブランドの本質的価値を明確化し、一貫性あるブランド体験を構築できます。
MUJIやIBMのように概念を軸に進化することで、変化に強く長期的に選ばれ続けるブランドを育成できます。

はじめに|機能・価格で差がつかない時代に効く「ブランド」の基礎知識

いま、あらゆる市場で競争が激化し、機能や価格だけでは差別化が難しい時代を迎えています。 

こうした環境下で、企業や商品が長く選ばれ続けるための決定的な要素として浮上しているのが「ブランド」です。 

ブランドは、「概念(=ブランドコンセプト)」と「実体(=スペック・仕様)」という二つの要素が車の両輪のように作用し、相互に補完しながら機能します。そして、このブランド戦略の根幹を支えるのが抽象化思考力です。 

抽象化思考力があれば、目に見える特徴を本質レベルにまで引き上げ、「そのブランドは何を意味し、なぜ存在するのか」を明確にできます。 

この思考法によって、ブランドは単なる見た目の差別化から脱却し、長期的に選ばれ続ける理由を持つ存在へと進化します。 

変化の激しい市場で持続的に成長するために、いまこそブランドの概念と実体を見極める思考力が求められています。 

※参考:ブランディングとは?意味・目的・効果を「感情価値」から理解する戦略入門

ブランドコンセプトとは?在り方を決める「概念」の意味と作り方

強いブランドを築くうえで欠かせないのは、「目に見えない概念」と「目に見える実体」を明確に切り分けて考える思考法です。  

たとえば、ガラスでできた円柱形の立体物を前にしたとき、 

  • 「水を飲むためのもの」という概念を加えれば、それはコップになります。 
  • 「花を生けるためのもの」という概念を加えれば、それは花瓶になります。 
  • 「部屋に飾るもの」という概念を加えれば、それはインテリア雑貨になります。 

「概念」と「実態」を切り分ける

物理的な形は同じでも、その存在に「どんな意味(=概念)を与えるか」によって、用途や選ばれる理由は大きく変わります。

つまり、「モノ」の在り方を決定づけているのは「目に見える実体」ではなく「目に見えない概念」の方なのです。

「概念」とは、英語に訳せば「コンセプト」であり、企業や商品が提供する「価値」「用途」など、ブランドの核をなす要素です。これが「ブランドコンセプト」と呼ばれるものです。

一方「実体」とは製品やサービスのスペックや仕様、接客、広告、ロゴといった具体的ものすべてを指します。

もし「概念=ブランドコンセプト」が曖昧なまま実体を展開すれば、ブランディングの方向性はバラバラになり、一貫性のないブランド体験を生み出してしまいます。

逆に、明確なブランドコンセプトがあれば、あらゆる実体に統一感が生まれ、ブランドは強く揺るぎないものへと成長するのです。

 

概念で拡張するブランド戦略|MUJI・IBMに学ぶコンセプト起点の展開法

抽象化思考力とは、多様な情報や事例から共通する「概念」を見抜く力です。これは単なる分析力ではなく、表面的な形や表現の違いを超えて、そのブランドを成立させている核となる価値を捉える能力といえます。

ブランド構築において、抽象化思考が果たす役割は非常に大きく、主に次の2点が挙げられます。

 

◎ 抽象化1|実体を越えて共通する「ブランドコンセプト」を抽出する方法

製品やサービスの形が変わっても、根底にある価値やコンセプトを見出し、それをブランドの提供価値として明確にできます。

 

◎ 抽象化2|時代変化に強いブランドへ──概念起点の拡張戦略

商品やサービスの実態を越えてブランドは「概念(=コンセプト)」が在り方を決定づけているため、その「概念」をテコに、新しい分野や市場へ柔軟に展開できます。

例えば、MUJI(無印良品)は「自然体で無駄のない暮らし」という「概念(=ブランドコンセプト)をテコに、雑貨・衣料・食品・ホテル運営など多岐にわたる事業(=実体)を展開しています。

また、IBMは「グローバルなテクノロジーリーダー」という概念(=ブランドコンセプト)をテコに、ハードウェアからソフトウェア、コンサルティング、クラウドサービスなどへ事業(=実体)を進化させています。

いずれの企業も「概念(=ブランドコンセプト)」を出発点としたブランド展開によって、一貫性を保ちながらも時代の変化に応じた柔軟な商品ライン(=実体)を実現しています。

ブランドコンセプト設計の手順とPDCA|4ステップで一貫性を実装

強いブランドは偶然ではなく、明確な「概念」と、それに即した「実体」の合わせ技によってつくられます。

以下の4ステップを順に実行することで、ブランドの軸が揺らがず、顧客に長く選ばれ続ける存在へと成長できます。 

 

◎ ステップ1:現状ブランドの「概念」と「実体」を棚卸し 

まずは、現在のブランドがどのような価値や意味(=概念)を持ち、それが製品・サービス・広告・接客といった「実体」にどのように反映されているのかを整理します。

この段階で、概念(=ブランドコンセプト)と実体が乖離していないかを確認します。 

 

◎ ステップ2:市場・顧客の変化を踏まえて概念を磨く 

社会や顧客ニーズは常に変化しています。その変化を踏まえ、ブランドの「概念(=ブランドコンセプト)」を見直していきます。

概念は一度決めたら固定ではなく、時代に合わせて進化させることが重要です。 これを「リブランディング」と言います。

 

◎ ステップ3:実体のデザインや表現を「概念」に沿って整える 

磨き上げた「概念(=ブラドコンセプト)」をもとに、製品仕様、サービス内容、広告表現、接客スタイルなど、顧客接点の「実体」を一貫性のある形に整えます。この段階での整合性が、ブランド体験の質を決定づけます。 

 

◎ ステップ4:継続的に検証・改善するPDCA 

ブランドは一度作って終わりではありません。市場や顧客の反応を定期的に確認し、必要に応じて概念・実体の両面を見直します。この改善サイクルを回すことで、ブランドは時代とともに成長し続けます。 

この4ステップを繰り返すことで、ブランドは一過性ではなく、長期的に価値を発揮し続ける「なくてはならない存在」へと進化します。 

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著者プロフィール

羽田 康祐

羽田 康祐 (はだ こうすけ)

ビジネス開発局

産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。 日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。外資系コンサルティングファームなどを経て現職。 「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『本質をつかむ』『ブランディングの教科書』『パーパスブランディングの教科書』がある。

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