はじめに|なぜ今「ブランディング」が企業成長に不可欠なのか
かつてのマーケティングでは、「良いモノをつくれば売れる」という構図が成り立っていました。
しかし、今は違います。
技術水準は底上げされ、どの企業も「それなりに良いモノ」を当たり前のように提供できるようになりました。機能や品質だけを比べても、決定的な違いを感じにくい時代になっています。
そうした環境では、人はもはや“実利”だけではモノを選びません。「安いから」「性能が良いから」だけでは、選ばれ続けるブランドになる理由にはならなくなっています。
では、人は何を基準に選んでいるのでしょうか。
それは、「どんな感情を満たしてくれるか(感情価値)」「どんな理想の自分に近づけるか(自己実現価値)」といった、感情面・自己実現面での満足)です。これはブランディングで設計すべき中核の価値でもあります。
たとえば、Appleの製品を手に入れることは、単にスペック上の実利を得る行為ではありません。それは「創造的で、自分らしい生き方を選ぶ」という理想の自分を体現する体験です。
スターバックスに立ち寄るのも、単なるコーヒー購入ではありません。「自分の時間を大切にし、心を整える」という感情が満たされる場所として、スターバックスというブランドを選んでいるのです。
ブランディングとは、一言でいうと、「企業や商品・サービスの独自の認識を形づくり、感情移入を通じて“指名で選ばれる状態”をつくるための戦略的な活動」です。
この記事は、BtoB/BtoC問わず「価格競争から抜け出したい」「ブランド戦略をゼロから整理したい」経営者・部ランディング担当者・マーケティング担当者の方を想定しています。
本記事では、私たちASAKO独自の研究データを交えながら、ブランディングの
- 意味・定義(ブランディングとは何か)
- 目的・効果(なぜ今必要なのか)
- 種類(企業/商品/サービス/採用/パーパスなど)
- 具体的なやり方・進め方(8つのステップ)
- 成功事例・FAQ
までを体系的に整理します。
読み終える頃には、自社が「何を売るか」ではなく「どんな感情価値で選ばれるべきか」が、戦略として描けるようになるはずです。
ブランディングとは?意味・定義と「製品/商品/ブランド」の違い
ブランディングとは、企業や商品・サービスの独自の価値やイメージを明確にし、他社と差別化しながら、「このブランドを選びたい」という感情移入を育てる活動です。
その目的は、価格や機能だけで比較される状態から抜け出し、 “指名で選ばれる状態” をつくることにあります。
では、その「指名で選ばれる状態」とは、どのように生まれるのでしょうか。
Apple、Google、ディズニー、スターバックス、コカ・コーラ…。これらのブランドを思い浮かべてみてください。
どのブランドも、人々のライフスタイルの中で 独自の認識 を築き、単なる「モノ」や「サービス」を超えて、「このブランドが好きだ」「このブランドを選びたい」という強い感情移入を生んでいます。
このことは「製品」「商品」「ブランド」の違いを理解すると、より直感的にわかりやすくなります。
❶ 製品とは?|まだ顧客に知られていない「モノ」の段階
製品とは、工場や倉庫で出荷を待つ段階の“モノ”です。顧客の目に触れておらず、まだ存在を認識されていない状態です。
「製品」として存在しているだけでは、ブランディングはまだ始まっていない段階だと言えます。
❷ 商品とは?|売り場に並び「偶然の選択」に委ねられる段階
商品になると、値段がつき、店頭やECで販売される状態になります。人々の目には触れるものの、
- たまたま通りかかった
- たまたま手に取った
- たまたま価格で選んだ
といった 偶然の選択(衝動買い) に頼らざるを得ない状態です。この段階では、「商品」として存在しているだけで、まだブランドとしての指名買いは起きていません。
❸ ブランドとは?|認識と感情移入が生まれ「指名買い」される段階
ブランドは、人々の認識や感情の中に存在するものです。なぜなら「指名買い」とは、人々の心の中に、
- このブランドなら、自分の感情を満たしてくれる
- このブランドなら、理想の自分に近づけてくれる
という「認識」や「感情移入」があって、初めて実現します。ここまで見てきたように、ブランディングとは単なる訴求や広告ではなく、
- 独自の認識をつくり
- その認識に感情移入してもらい
- 指名で選ばれる必然をつくること
なのです。「製品 → 商品 → ブランド」の3段階をどう進化させるかが、ブランド戦略・ブランディングの出発点になります。
製品・商品・ブランドの違い
❹ リサーチと心理学から見たブランディングの根拠
私たちASAKOは、数多くのマーケティングリサーチの経験を有しています。
その経験からしても、独自の認識を築き、感情移入が伴っているブランドとそうでないブランドでは、指名購入意向率が5倍以上変わる例は珍しくありません。一方で、その逆の例は1件も見たことがありません。
認知心理学の研究によると、人はモノやサービスに対して感情移入が起きると、その対象は単なる物体ではなく、
- 意味
- ストーリー
- 自分との関係性
といった 解釈価値を帯びることがわかっています。この「意味」や「ストーリー」が帯びた瞬間、その対象は人にとって特別な存在、すなわちブランドへと変わるのです。
どのようなモノやサービスも感情移入が伴った時、その人にとっての「ブランド」に変わります。
これはリサーチでも心理学でも裏付けられた、一貫した事実です。もし、あなたがこれからブランディングに取り組むのであれば、まず自社の商品・サービスに問いかけてみてください。
- 私たちの提供物には、他社と違う“独自の認識”があるだろうか?
- 顧客はそこにどれだけ“感情移入”してくれているだろうか?
- それは指名買いにつながるレベルだろうか?
この問いに答えられるようになったとき、あなたの企業は「ブランド」という強い武器を手に入れ始めています。ここからが、本質的なブランディングの始め方です。
ブランディングとマーケティングの違いとは?|「どう認識されるか」と「どう売れるか」の違い
ブランディングとマーケティングはよく混同されますが、「何を変える取り組みなのか」が違います。
一言でまとめると、ブランディングは「どう認識されるか」をデザインし、マーケティングは「どう売れるか」を設計する活動です。
ここからは、ブランディングとマーケティングの違いを、より詳しく見ていきましょう
❶ ブランディングとは?|ブランドの認識と感情移入を築き上げる取り組み
人は誰しも“認識”を通してしか、物事を理解し、判断することができません。つまり、「認識のされ方」次第で、理解のされ方も、評価のされ方も、ひいては“売れ方”までもが変わっていきます。
ブランディングとは、この “認識のされ方” を意図的にデザインし、そこに感情移入を生み出す取り組みです。
誤解を恐れずに言えば、人は事実そのものではなく、“自分がどう認識しているか” を基準に判断します。たとえば、同じメッセージでも、
- ある人は「伝統がある」と認識し、ポジティブな感情を抱く
- 別の人には「古臭い」と認識し、ネガティブな感情を抱く
と受け取り方が変わるように、認識によって評価は大きくブレます。だからこそ、ブランディングは次の問いから始まります。
- 「このブランドは、どう認識されるべきなのか?」
その認識がポジティブな印象や信頼につながり、最終的には “感情移入” を生み出すことがブランディングの目的です。
❷ マーケティングとは?|ブランディングを起点に「売れる仕組み」を築き上げる取り組み
一方のマーケティングは、ブランディングによって作られた「認識」や「感情移入」をテコに、購買・利用・リピートといった行動を生み出す取り組みです。
- 誰に届けるか(ターゲティング)
- どのチャネルで伝えるか(チャネル戦略)
- どの体験を提供するか(UX/CX)
- どのように売上につなげるか(ファネル設計)
といった具体的な“売るための仕組みづくり”がマーケティングの領域になります。つまり、
- ブランディング:認識と感情移入をつくる
- マーケティング:購買行動と売上獲得の仕組みをつくる
という明確な役割分担が存在するのです。「ブランディングのあとにマーケティングを設計する」という順番が、持続的な成果につながるポイントです。
ブランディングとマーケティングの違い❷
ブランディングとマーケティングの違い
❹ ブランドマーケティングとは?ブランディングとマーケティングの一体運用
外資系企業でよく使われる「ブランドマーケティング」という言葉は、この2つの領域を “一つの流れ” で捉える考え方です。具体的には、
- ブランディングで魅力的な認識と感情移入をつくり
- マーケティングでその認識を行動へと転換する
という連動を設計することを指します。
ブランディングで認識が変わるからこそ、マーケティング施策が効果を発揮し始めます。この2つが正しく噛み合ったとき、初めて商品は“ロングセラーブランド” へと進化していくのです。
ブランドマーケティング
ブランディングの必要性とは?今求められる4つの背景と時代変化
ブランディングが「なぜ今これほど重要視されているのか」を理解するには、ここ10年で大きく変化した市場環境・顧客行動・情報構造を押さえる必要があります。
ここからは、企業がブランディングに取り組むべき必然的な理由を「4つの背景」として体系的に整理します。
❶ 市場成熟化で差別化が難しくなった|機能では勝てない時代へ
多くの市場で技術水準は頭打ちになり、機能や品質の差は、一般の人から見てほとんど違いがわからないレベルに均質化しています。
かつては「より性能が高い」「より便利」という理由で選ばれた市場も、いまや競合が同等レベルまで追いつき、“機能で差がつく時代” が終わりつつあるのです。
では、真似されにくい独自の価値とは、いったいなんでしょうか?
それは、企業の姿勢や価値観への共鳴、ブランドに対する感情移入――つまりブランドそのものです。ブランディングは、最も真似されにくい競争優位性を築き上げる取り組みでもあるのです。
❷ 価格競争の激化|「安さ」以外の選ばれる理由が必要に
インターネットの普及により、あらゆる商品・サービスが瞬時に比較されるようになりました。機能の差が小さい市場で起きるのは 「価格競争の消耗戦」 です。
- 値下げ
- キャンペーン連発
- リード獲得の広告コスト増
- 利益率の圧迫
ブランド力がない企業ほど、“価格以外に選ばれる理由がなくなる” → 価格勝負に巻き込まれるという負のループに陥ります。一方で強いブランドは、
- 価格競争に巻き込まれにくい
- 顧客の離脱率が低い
- 高価格でも選ばれる
- 長期的なLTVが高い
という“持続的な優位性”を築くことができます。
私たちASAKOの独自研究では、ブランドに感情移入がある状態では「多少高くても購入したい」 と感じる人が30%以上増えることが明らかになっています。
価格ではなく、ブランド価値で選ばれる状態をつくれるかどうか。ここがブランディングの可否を分けるポイントです。
❸ 顧客の価値観の変化|“姿勢・価値観”でブランドを選ぶ時代に
Z世代を中心に、人々の価値観は大きく変化しています。
- この企業は、どんな姿勢を持っているのか?
- どんな文化の中でつくられたサービスなのか?
- その企業の取り組みに賛同できるか?
- そのブランドを選ぶことが、自分の価値観と一致するか?
商品そのものだけでなく、「その企業の姿勢や価値観」 に人々の感情が動く時代です。ブランドは顧客との“価値観の接点”をつくるために欠かせない取り組みになりつつあるのです。
❹ SNS時代|企業の姿勢・人格そのものがブランドになる
現代の人々は、企業の表側だけを見て判断しません。
- 社員の発信
- ユーザーの口コミ
- SNSでの態度
- 社会への姿勢
- 不祥事への対応
- 価値観の一貫性
こうした情報が常に公開され、企業の姿勢そのものがブランド価値として評価される ようになりました。これは、企業の内側(文化・価値観)と外側(マーケティング)が分離していた従来のやり方が通用しないことを意味します。
企業の姿勢・行動・発信に一貫性がなければ、SNSで瞬時に見抜かれ、信頼を失います。だからこそ今、企業は “信頼” という名の感情移入を築くブランディングが求められています。
「信頼」とは、理屈を超えて「この企業・商品なら信頼できる」という「感情移入」に他なりません。「信頼」もまた、ブランディングによって形づくる「感情価値」の一つなのです。
ブランディングの目的とメリットとは?企業が得られる6つの効果
ブランディングは“感情移入を通して選ばれ続ける取り組み”です。その成果は、売上や指標だけでなく、顧客からの感情移入・期待・誇りといった“無形資産”として現れます。
ここでは、ブランディングが企業にもたらす6つの主要な効果を紹介します。
❶ 新規顧客の獲得拡大|「知られているから選ばれる」状態をつくる
当たり前のことですが、顧客は「知らないものを欲しがる」ことはできません。
逆に言えば、ブランドの知名度が上がり、多くの人にその存在を認知してもらえれば、それに比例して「欲しい」と感じる人も増え、販売数の増加につながります。
さらに、同じジャンルで「無名の商品」と「有名な商品」が並んでいた場合、多くの顧客は有名な方を選ぶ傾向にあります。これは、「有名=信頼できそう」という感情が購買の後押しをするからです。
社会心理学者ロバート・ザイアンスの研究によれば、人は見知らぬ記号であっても、何度も目にするうちに親近感が生まれ、好意を抱くようになります。
つまり、人間は「知らないもの」より「知っているもの」に好意を持ちやすいという心理が科学的に証明されているのです。
現代では、ソーシャルメディアやレビューサイトの普及により、クチコミの影響は飛躍的に拡大しています。ブランドの知名度と好感度が高まれば、そのポジティブなクチコミが新たな販売機会を次々と生み出すことになるでしょう。
新規顧客獲得の効率を上げたい企業ほど、ブランディングへの投資が重要になります。
❷ 価格プレミアム効果|価格競争から抜け出し高単価でも選ばれる
価格競争が激しい市場では、「似たような商品なら安い方がいい」という判断がどうしても支配的になります。これは顧客心理として自然な反応です。しかし、ここに“ブランド”という視点を加えると一変します。
ビジネスの売上は「販売単価 × 販売数量」で決まります。
しかし近年、競争が激化し、多くの企業が「販売単価」の下落圧力にさらされています。そんな中でも、適切なブランディングを行えば、高い単価を維持できるという大きなメリットがあります。
その理由は、ブランドへの感情移入が深まるほど、顧客にとって「特別で思い入れのある存在」へと育っていくからです。この状態になると、たとえ競合商品より多少価格が高くても選ばれやすくなります。
たとえば、同じようなスペックのノートパソコンであっても、「Appleでなければ」と考える人は一定数存在します。それは機能や価格ではなく、「Appleらしさ」への感情移入や、過去のポジティブな体験、さらにはブランドがもつ価値観に共鳴しているからです。
あるミネラルウォーターの事例では、単にブランドが認知されるだけでなく「実利的な価値」が認識されると、価格プレミアムは9%上がり、感情移入がなされると22%上がることがわかっています。
さらに、自己実現価値(=理想の自分に近づけてくれる喜び)が認識されると30%上がることがわかっています。
ミネラルウォーターは、機能的な差別性はほとんど持ちません。しかし「感情移入の度合い」で価格プレミアムはこれだけ大きく差が出るのです。
このように、感情移入が起こると、顧客の判断基準は実利から「自分にとっての意味」へと移行します。そして「意味づけ」に成功したブランドは、価格競争の土俵から離れ、高価格を維持できるのです。
これがブランディングで語られる「価格プレミアム」という現象です。以下の図は、ASAKOの独自研究で裏付けられた、価格プレミアムの効果です。
ミネラルウォーターという、ほとんど機能的な差別化が作れない商品ですら、感情移入の度合いによって、価格プレミアムが大きく変わることが示されています。
価格プレミアムー多少高くても買いたい
高価格を維持できれば、利益率も高く保てるため、企業の好業績を支える大きな原動力になるのです。
❸ LTV向上|ファン化・推奨・紹介が循環する収益構造をつくる
ビジネスの利益構造を考えるうえで、LTV=顧客生涯価値の向上は欠かせません。
LTVとは、ある顧客が取引を開始してから終了するまでに、企業にもたらす累計利益を指します。LTVを高められれば、新規顧客獲得のために投じたコスト(CAC:顧客獲得単価)を効率的に回収でき、事業の収益性が大きく改善します。
しかし、多くの市場では競合がひしめき、あなたの既存顧客を奪おうとしています。
もし競合商品のほうが魅力的に映れば、顧客は競合商品に乗り換え、LTVは低下していきます。新規獲得にコストをかけても、長く取引が続かなければ投資は回収できず、事業の成長は頭打ちになるでしょう。
ここでブランディングが強力な武器になります。ブランドへの感情移入が深まれば、顧客にとってそのブランドは「特別な存在」となります。愛着が強くなるほど、競合への乗り換えは起こりにくくなり、継続購入やアップセル、クロスセルの機会が増えます。
一般的に、既存顧客を維持するコストは新規顧客を獲得するコストの約5分の1で済むとされます。つまり、ブランディングによってLTVが向上すれば、新規獲得コストの回収が容易になるだけでなく、利益率の改善や長期的な収益の安定にも直結します。
LTVを高めることは、単なる売上増ではなく、企業全体の成長基盤を強固にする戦略です。そしてその最短ルートの一つが、顧客との感情的なつながりを育むブランディングなのです。
ブランドへの感情移入が進むと、指名買いが増える
❹ 仕入れコスト削減|選ばれるブランドが生むサプライチェーンでの交渉力
「ブランディングに取り組めば売上が上がる」──これは多くの人がイメージしやすい効果です。ブランドが知られ、感情移入されることで、“指名買い”が増えていく。まさにブランディングの王道的な効能です。
しかし、それによって「仕入れコストが下がる」と聞くと、少し意外に感じるかもしれません。
ブランド力が高まれば販売数量が増え、それに伴って仕入れ数量も増えます。数量がまとまれば、スケールメリットによって1個あたりの仕入れ単価は下がっていきます。ここまでは比較的わかりやすい話です。
注目すべきは、その次の段階です。ブランドが社会的評価を得ると、仕入れ先や取引先の態度が大きく変わります。
- 「ぜひ、あのブランドと取引したい」
- 「あのブランドに材料を供給していること自体が、自社のステータスになる」
こうした心理が働くと、“選ばれる側”に立ったブランドは、価格や条件面でこれまで以上の譲歩を引き出せるようになります。
たとえば、アップルのようなブランドは、部品メーカーに対して極めて有利な取引条件を引き出せることで知られています。価格交渉においても、納期や品質要求においても、ブランドの力が“交渉カード”となっているのです。
ブランドとは「選ばれる理由」の集合体です。その影響力は、顧客だけでなくサプライチェーン全体にも波及し、企業のコスト構造すら変えてしまうのです。
❺ 広告宣伝費の最適化|「自転車操業」から「自走型ブランド」への転換
広告宣伝費は、一見すると「売上を上げるためのコスト」と捉えられがちです。
しかし本質的には、ブランドを育てるための“投資”です。そしてブランドが育てば、やがてその投資を回収できるフェーズに入ります。
ブランドがある程度確立すると、顧客の行動は変わります。「広告で知ったから買う」ではなく、「そのブランドだから買う」──いわゆる“指名買い”が起こる段階です。
この状態になれば、膨大な広告費をかけて知名度を広げる必要はなくなります。広告は、知名度拡大のためではなく、ブランド力を維持・強化する“メンテナンス投資”にシフトします。
広告費削減の効果
ASAKOでは、この状態を「自転車操業ブランド」から「自走型ブランド」への転換と呼んでいます。
特に、CPA(顧客獲得単価)が高騰している現代において、この変化は非常に重要です。広告は費用をかければ売上が伸びる“コスト型”の手法ですが、いつまでも依存すると、顧客獲得のたびに「税金」のように広告経費がかかる状態が続いてしまいます。
一方、ブランディングによって「広告に頼らなくても、ブランド力で売れる状態」をつくれば、収益性の高いビジネスモデルになります。これこそが、持続的な競争力を生み出す成長エンジンなのです。
❻ 資金調達コストの削減|投資家・金融機関から信頼されるブランドになる
ブランディングの効果は売上や顧客だけにとどまりません。意外かもしれませんが、「資金調達」の条件にも大きく影響します。
企業経営において「有利な条件で資金を調達できるか?」は、事業の成長スピードや投資判断を左右します。投資家や金融機関は資金提供の際、主に次の2点を見ています。
- 成長性:将来どれだけの利益を生む可能性があるか
- リスク:その利益が、どれだけ安定的・継続的に得られそうか
この2つを強く裏付けるのが、ブランドの力です。
ブランドが確立され、顧客に広く支持されていれば、売上は安定し、利益率も高くなります。さらに、「感情移入が伴ったブランド」であることは、競合による顧客奪取を防ぐ参入障壁となり、売上急落のリスクを下げます。
結果として、投資家や金融機関は「この企業の収益は安定している」「収益低下のリスクは低い」と判断します。すると、金利の引き下げ、融資枠の拡大、エクイティ出資の集まりやすさなど、資金調達条件が大幅に改善されるのです。
つまり、ブランドの信頼性は市場だけでなく、資本市場においても強力な武器になるのです。
ブランディングの種類とは?|企業ブランディングから採用・パーパスまで6つの代表例
ブランディングの効果が理解できたら、続いては「ブランディングの種類」についても見えおきましょう。
一口に「ブランディング」といっても、その対象や目的によっていくつかの種類に分かれます。ここでは、押さえておくべき代表的な6種類のブランディングをご紹介します。
❶ コーポレートブランディング(企業ブランディング)とは?
コーポレートブランディングとは、企業そのものの「社会に示す存在価値」を明確にし、ステークホルダーから選ばれ続ける状態をつくる取り組みです。
商品やサービス単位のブランディングが「独自の認識づくり」を主軸とするのに対し、企業ブランディングは企業の挑戦姿勢や価値観を社会に伝え、信頼と期待を築くことに重点を置きます。
- 企業の理念・パーパス
- 社会へのスタンス
- 組織の挑戦姿勢
などを通して、企業全体の“人格”をデザインする最も基盤となるブランディングです。
※参考|企業ブランディングとは?意味・効果・進め方を徹底解説
❷ プロダクトブランディング(商品ブランディング)とは?
プロダクトブランディングは、特定の製品に対して独自の認識や感情移入をつくる取り組みです。
- この商品は何のためにあるのか
- どのような感情や体験を提供するのか
- 他の商品とどう違うのか
を明確にし、顧客の記憶に強く残る“独自性と提供価値”を設計します。AppleのiPhoneやコカ・コーラが象徴的な例で、商品の枠を超えブランド体験 を生み出すのが目的です。
❸ サービスブランディングとは?体験そのものをブランドにする
サービスブランディングは、無形サービスを提供する企業において体験そのものをブランドとしてデザインする取り組みです。
- 接客の姿勢
- UI/UX
- カスタマーサポート
- 導入後のフォロー
- 体験の一貫性
これらがブランド価値を決めるため、“体験の品質そのもの” がブランド構築の中心になります。スターバックスやホテルブランドなどが代表的です。
❹ インナーブランディングとは?社員の行動をブランドとつなげる
インナーブランディングとは、企業の理念やミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を、社員一人ひとりが自分の言葉と行動に落とし込み、日常業務に活かせる状態をつくる取り組みです。
言い換えれば、社員が理念やMVVを自分ごととして捉え、「この会社で働く意味」や「この仕事の価値」を誇りとして再認識できる状態をつくることが目的です。
- 理念の浸透
- バリューの運用
- 社員教育
- 組織カルチャーづくり
- 社内コミュニケーションのデザイン
などを通じて、社員一人ひとりが“ブランドらしい行動を自然と取れる状態” を目指します。
❺ 採用ブランディングとは?「働く誇り」をつくる
採用ブランディングは、求職者に対して「この会社で働く誇り」や「働く魅力」を伝える取り組み です。
- EVP(従業員価値提案)
- 採用サイト
- 採用広報
- 社員のストーリー発信
などを通じて、“この会社で働きたい” と心から思ってもらえる状態をつくります。
今の採用市場では、給与や待遇の向上だけでは「待遇向上チキンレース」となり、競合企業と同質化してしまうため、ブランド力がそのまま採用力につながります。
❻ パーパスブランディングとは?存在価値への感情移入を生む
パーパスブランディングは、企業が 「何のために存在しているのか?」という存在価値(パーパス)に対して感情移入を促すことで、ステークホルダーから選ばれ続ける状態をつくる取り組みです。
- 社会にどう貢献するのか
- どんな社会をつくりたいか
- その企業が生まれた理由は何か
こうした“社会に向き合う企業の姿勢”を定義し、社内外に浸透させることで、強い共鳴感情を強いブランドへと成長していきます。
社会的価値が求められる現代において、最も注目されているブランディングの一つです。
※参考|パーパスブランディングとは|採用・エンゲージメント・組織改革に効く理由と定量効果
❼ すべてのブランディングに共通する本質|「独自の認識」と「感情移入」
ブランディングと一言で言っても、
- 企業ブランディング
- 商品ブランディング
- サービスブランディング
- インナーブランディング
- 採用ブランディング
- パーパスブランディング
など、多様な切り口があります。しかしどのブランディングも本質は同じです。
- “独自の認識と感情移入をつくること”
この本質を抑えておくことで、どの領域のブランディングも一貫性を持って実行することができます。
ブランディングの構成要素とは?|Brand PRISMで整理するブランドづくりの7つの視点
ここまで、ブランディングの全体像や背景について解説してきました。
しかし、実際にブランディングを機能させていくためには、「ブランド」を構成する要素を分解し、一つひとつを丁寧に積み上げていくことが欠かせません。
そこでここからは、ブランディングの代表的なフレームワークであるBrand PRISMで使って、ブランドを構成する7つの要素を解説していきます。
ASAKO Brand PRISM©
❶ ペルソナデザイン|“誰に感情移入されたいか”を明確にする
ブランドの構成要素の一つ目は「誰から感情移入をしてもらいたいか」を明確にする「ペルソナデザイン」です。性別や年齢などの属性に留まらず、
- どんな価値観を持つ人か
- どんな不満や願望を抱えているのか
- どんな未来を望んでいるのか
といった「価値観ベース」で設計することが重要です。
ブランドはすべての人に好かれる必要はありません。むしろ、感情移入してもらう相手を絞り込むことが、ブランドの個性と存在感を際立たせます。
❷ ブランド提供価値|実利・感情・自己実現まで含めた価値を設計する
ブランドの構成要素の二つ目は、ブランドが提供する価値=ブランド提供価値 です。
ここで重要なのは、実利価値(利便性・性能)だけでブランド価値はつくれないということです。現代の人々が求めているのは、
- 感情が満たされる体験
- 理想の自分に近づける感覚
- そのブランドを選ぶ意味
といった 感情価値や自己実現価値 です。例として、
- Apple:「創造的で、自由である感覚」
- スターバックス:「心が整う、自分を取り戻せる時間」
など、ブランドは提供価値によって“選ばれる理由”をつくっています。
ブランド提供価値
❸ ブランドパーパス|ブランドが実現したい社会・存在価値を言語化する
ブランドの構成要素の三つ目は、ブランドパーパスです。ブランドパーパスとは、
- このブランドは何のために存在するのか?
- どんな社会の実現に貢献するのか?
という問いに対する答えです。パーパスが明確になると、
- 社員
- 顧客
- パートナー
- 社会
など多様なステークホルダーからの共鳴感情が生まれ、“ブランドを応援したくなる感情移入” が広がります。
※参考|社会的存在価値を事業成長に繋げる「ブランドパーパス」徹底解説
❹ ブランドパーソナリティ|ブランドの「人格」と個性を定める
ブランドの構成要素の四つ目は、ブランドに個性を与えるブランドパーソナリティです。ブランドも人と同じように、
- 誠実
- 革新
- 挑戦
- 親しみ
といった個性を持たせることができます。強いブランドパーソナリティを築くと、人々はモノや実利を超えて、「ブランドの個性」に対して感情移入をしてくれるようになります。
※参考|ブランドパーソナリティとは?記憶に残り差別化・ファン化を促す効果
❺ ブランドポジショニング|比較ではなく「独自のポジション」を築く
ブランドの構成要素の五つ目は、ブランドポジショニングです。
従来のように「競合より優れているか」という比較優位を競うのではなく、比較されずに選ばれる独自の文脈(Context)を築くのがブランドポジショニングです。
差別化が“比較”の発想であるのに対し、ブランドポジショニングは“独自化”の発想です。顧客が共鳴するのは、スペックの比較差よりも、ブランドの独自性と一貫した姿勢です。
ポジショニングMAP
❻ Brand ACT|カスタマージャーニー全体でブランド体験を築く
ブランドの構成要素の六つ目は、ブランドのアクションです。
ブランドは、言葉や理念だけでは伝わりません。実際の接点(広告、Web、店舗、営業、サポートなど)で、体験として意味を実感させることが必要です。
この「ブランドの行動=Brand ACT」は、カスタマージャーニー全体を通じて設計します。顧客が触れるたびに、「このブランドらしさ」を感じられる状態をつくることが重要です。
❼ ブランドステートメント|ブランドをストーリーで描く
ブランドの構成要素の七つ目が、ブランドのステートメントです。
ブランドステートメントは、これまで見てきたブランドの構成要素を統合し、ブランドの存在理由と価値を示したストーリーです。
心理学者のジェローム・ブルーナーによれば、ストーリー形式の情報は情報の羅列と比べて、最大で20倍記憶されやすいことが示されています。また、ストーリーテリングは聞き手の感情に訴えかけるため、独自の認識や感情移入を促しやすくなります。
このブランドステートメントが、社員・顧客・社会をつなぐ“共通ストーリー”として機能していくのです。
ブランドステートメントの作り方
ブランディングのやり方|8ステップでブランドを構築・実行する方法
強いブランドを築くには、認識 → 感情移入 → 体験 の流れを一貫させる「ブランド構築プロセス」が欠かせません。ロゴや広告を整えるだけでは、ブランドは顧客の心に根づかないからです。
ここで紹介する8つのステップは、戦略から実装、そして改善までを一貫してつなぎ、「感情移入され、選ばれ続けるブランド」 を育てるための実践プロセスです。
ブランディングの進め方【8ステップで構築する方法】
STEP1:現状把握をする|ブランドの“現在地”を可視化する
STEP1では、まず自社ブランドの「今」を、主観ではなくデータと認識の両面から正確に把握します。
認知度・好意度・信頼度・共感度などを整理し、「伝えたいブランド」と「実際に伝わっているブランド」とのギャップを可視化することがゴールです
最初に行うべきは、自社ブランドの「今」を正確に知ることです。主観ではなく、データと認識の両面から現状を把握します。
- 認知度:どの程度知られているか
- 好意度:どんな印象を持たれているか
- 信頼度:どの程度信じられているか
- 共感度:どの価値観が支持されているか
社員・顧客・パートナーなど、複数の視点を通して現状を可視化することで、「伝わっているブランド」と「伝えたいブランド」のギャップを明確にします。
STEP2:課題と機会を見つける|外部環境×社内文化を診断する
STEP2では、STEP1で明らかになった現状をもとに、ブランド成長を妨げている要因(課題)と伸びしろ(機会)を見つけていきます。
市場環境や競合状況だけでなく、自社のカルチャーや組織風土まで含めて診断し、「どこを変えればブランドが伸びるのか」を明確にするステップです。
市場トレンド:社会課題や顧客価値の変化
競合分析:他社がどんなブランド体験を提供しているか
社内文化:自社の価値観や行動特性がどうブランドに影響しているか
課題の発見は同時に、ブランドの“伸びしろ”を見つけるプロセスでもあります。
PEST分析
STEP3:STP戦略を決める|誰に・何を・どう届けるかを明確化する
STEP3では、ブランドの方向性を決める骨格として、STP(セグメンテーション/ターゲティング/ポジショニング)を整理します。
「どの市場の、どんな価値観を持つ人に、どのような役割として存在したいのか」を言語化し、以降のすべてのブランディングの基準をつくるステップです。
- セグメント:どんな市場・顧客層に焦点を当てるか
- ターゲット:どの価値観を持つ顧客を中心に据えるか
- ポジショニング:どのような役割・存在として認識されたいか
ここで定めた「市場における自社の立ち位置」が、後のすべての体験設計の基準になります。ブランドは、“価格で選ばれる”存在から、“価値で選ばれる”存在 を目指します。
STP戦略
STEP4:ブランドコンセプトを言語化する|価値・個性・パーパスを統合する
STEP4では、ブランドの中心となるコンセプト(核となる考え方)をつくります。
提供価値・ブランドパーソナリティ・ブランドパーパスを統合し、「このブランドは何のために存在し、どんな価値と個性を届けるのか」を一つのストーリーとして言語化します。
ブランドコンセプトは、すべてのブランディング活動の中心となる核心です。ここでは、次の3軸を統合して整理します。
- ブランド提供価値:どのような価値(喜び・嬉しさ)を提供するのか
- ブランドパーソナリティ:どのような個性・価値観を掲げ、共有するのか
- ブランドパーパス:どのような社会を実現するのか?
これらが一貫して言語化されると、企業内・社外のどちらにも“共通の信念”が生まれます。
※参考|ブランドコンセプトとは|抽象化思考で概念と実体を統合する4つのステップ
STEP5:デザインポリシーを定める|視覚・言葉・体験の一貫性を設計する
STEP5では、ブランドの見た目やトーンを決めるデザインポリシー(表現のルール)を定義します。
ロゴやカラー、コピーの言葉遣い、接客の振る舞いまで、あらゆる接点で「同じブランドらしさ」が感じられるよう、視覚・言葉・体験の一貫性を設計するステップです。
人々がまず目にするのは、ブランドのデザインです。そしてブランドの認識は、デザインの“美しさ”以上に、“一貫性”によって作られていきます。
ロゴ、カラー、フォント、写真、言葉づかい、接客態度など、あらゆる接点が同じトーン&マナーで語られているかを定義するのがデザインポリシーです。
見た目だけでなく、「どんな体験を通じてどんな感情を届けたいか」を基準に設計します。ビジュアルと体験の一貫性が、ブランドの“個性”を感じさせます。
ビジュアル要素の例
STEP6:カスタマージャーニーを描く|感情の変化に沿って接点を設計する
STEP6では、顧客の感情の変化の流れ(カスタマージャーニーを描きます。
「認知 → 関心 → 信頼 → 共感 → 推奨」という一連のプロセスの中で、どのタイミングでどんな体験・メッセージを届けるべきかを設計し、ブランドとの出会いからファン化までの道筋を描くステップです。
ブランディングの主戦場は、顧客の体験の中にあります。どんな出会いから、どんな感情の変化を経て、どのように信頼へと至るのかを可視化します。
- 認知 → 関心 → 信頼 → 共感 → 推奨
という“感情の旅路”を描き、それぞれの段階で「どんな体験を届けるべきか」「どんな言葉で語るか」を設計します。感情の流れを設計できているブランドほど、ファンが自然に増える力を持っています。
STEP7:マーケティングミックスに展開する|7Pにブランドを統合する
STEP7では、定めたブランドの方向性をマーケティングミックス(7P)全体に落とし込みます。
Product/Price/Place/Promotion/People/Process/Physical Evidence のそれぞれにブランドの考え方を反映させ、「ブランディング=ビジネスそのもの」として機能させる段階です。
ブランドをビジネス全体に浸透させるために、マーケティングミックス(7P)に展開します。
- Product(製品・サービス)
- Price(価格)
- Place(流通・チャネル)
- Promotion(広告・PR)
- People(人材・文化)
- Process(提供プロセス)
- Physical Evidence(実体的な証拠・デザイン・空間)
これにより、ブランディングが単なる発信活動ではなく、ビジネスそのものとして機能します。
※参考|マーケティングミックスとは?4P・4C・7Pを徹底解説|STP戦略との違いと活用法
マーケティングの7P
STEP8:効果測定と改善を続ける|定量×定性でブランドを育てる
STEP8では、ブランドの成果を定量指標と定性指標の両面からモニタリングし、改善を続けていくフェーズです。
数字だけでなく、顧客や社員の声に表れる「感情の変化」も捉えながら、ブランドを中長期で育てていく運用プロセスがゴールになります。
- 定量指標(KPI):ブランド認知率、好感度、リーチ数、自然流入、指名検索、NPS、リピート率、LTVなど
- 定性指標:共感度、信頼度、社内浸透度、推奨コメントなど
重要なのは、KPIだけで評価しないことです。「どれだけ人の心を動かせたか」「どれだけ共感の循環を生めたか」を評価軸にします。
ブランドは、一度つくって終わるものではなく、感情移入と意味を育て続けるプロセスです。
この8ステップを通じて、企業は、“何を売るか” ではなく“どんな感情を満たす存在なのか” を問い直すことができます。
これこそが、ブランド戦略の第一歩です。
ブランディングの成功事例|AppleとStarbucksに学ぶ「理念×体験×感情」の設計法
強いブランドに共通するのは、「理念」「体験」「感情」の一貫性です。どの接点でも、顧客が同じ“世界観”を感じられる設計がなされています。
◎ Apple|創造性を解放する「自分らしさの体現」
Appleは、製品スペックではなく「創造する喜び」という感情を売っています。iPhoneもMacも、機能より先に「自分らしく、自由に創る人の象徴」として位置づけられています。
製品を通して感じるのは、“便利さ”ではなく“誇り”や“アイデンティティ”です。
- 理念(パーパス): 「人間の創造性を拡張する」
- 体験: シンプルで直感的な操作、洗練されたデザイン
- 感情: 自分の感性を信じられる喜び、創造する誇り
Appleは、製品を通じて「あなたの中の創造性を解放する」という心理的価値を提供しています。これこそが、模倣できないブランドの核心です。
◎ Starbucks|サードプレイスで「心を整える時間」を設計
スターバックスが提供しているのはコーヒーではなく、「感情のリセット体験」です。通勤前や仕事の合間、帰宅途中に立ち寄ることで、人々は“自分を取り戻す時間”を過ごしています。
- 理念(パーパス): 「サードプレイス」
- 体験: パーソナルな接客、空間デザイン、香り・音楽の演出
- 感情: 安心・癒し・自分の時間を大切にする感覚
スターバックスは、感情を中心にサービスを再設計したことで、「日常に寄り添うブランド」から「人生に寄り添うブランド」へと進化しました。
◎ 共通点:理念 × 体験 × 感情 の一貫性が指名買いを生む
成功しているブランドに共通するのは、「理念 × 体験 × 感情」を一貫してデザインしていることです。
ブランドとは、見た目でも広告でもなく、顧客が感じる「このブランドと関わると、どんな自分でいられるか」という感情体験の総体です。
意味を伝え、体験を設計し、感情を動かす。この循環こそが、 “選ばれ続ける理由”を生み出します。
FAQ|ブランディングの始め方・マーケティングとの違い・効果測定・中小企業の進め方
ブランディングは「重要」とわかっていても、実際に取り組もうとすると多くの疑問が生まれます。ここでは、企業からよく寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。
Q1. ブランディングとは何ですか?
A. ブランディングとは、人々の頭の中に「独自の認識」をつくり、その認識に対する「感情移入」を育てていく活動です。目的は、比較されずに“指名で選ばれる状態”をつくることです。
ブランディングによってブランドならではの認識と感情移入が生まれると、商品やサービスは「数ある選択肢の1つ」ではなく、「このブランドだから選びたい」という存在に変わります。
機能や価格だけでなく、「このブランドと関わるとどんな感情が満たされるか」「どんな自分でいられるか」という意味のレイヤーまで設計していくことが、ブランディングの本質です。
Q2. ブランディングとマーケティングの違いは何ですか?
A. マーケティングは「どう売るか」を設計する活動、ブランディングは「どのように認識され、どんな感情移入を生み出すか」を設計する活動です。両者は対立ではなく補完関係にあります。
マーケティングが短期的な成果(CV・売上)を目的にするのに対し、ブランディングは中長期的な信頼・共感・指名を育てるための取り組みです。
- ブランディング:意味・認識・感情価値をつくる
- マーケティング:その意味や認識を行動(購買・利用・推奨)に転換する
という役割分担があり、「ブランディングが意味をつくり、マーケティングが行動を促す」という関係にあります。
Q3. 中小企業でもブランディングは必要ですか?
A. はい。むしろ中小企業こそ、ブランディングが成果に直結します。広告投資や価格競争で大企業に勝ちにくいからこそ、“意味の独自性”で選ばれることが重要です。
大企業のように大量の広告投資や値下げ合戦で戦えないからこそ、
- なぜこの企業でなければならないのか
- 地域や業界の中で、どんな役割を果たす存在なのか
- どんな価値観や姿勢に共感してもらいたいのか
といった「意味の独自性」が、最大の競争優位になります。
地域密着・高い専門性・人の魅力・理念の強さなど、中小企業には「小さいからこそ深く共感されるブランド」になれる要素が数多く存在します。
それらを整理し、言語化し、体験として届けるのが中小企業のブランディングです。
Q4. ブランディングの効果はどのように測定すればいいですか?
A. ブランディングの効果は「定量指標(数字)」と「定性指標(感情・声)」の両面で評価します。“どれだけ売れたか”だけでなく、“どれだけ感情移入してもらえたか”を見ることが重要です。
定量指標の例:
- ブランド認知率・想起率
- 指名検索数(ブランド名での検索)
- 好意度・推奨意向(NPS など)
- リピート率・LTV(顧客生涯価値)
定性指標の例:
- 顧客インタビューで語られるブランドのイメージ
- 「好き・信頼している」といった感情ワード
- 社員がブランドをどう語っているか(誇り・共感度)
重要なのは、「数字だけを追いかけて終わり」にしないことです。
どんな感情が生まれているのか/どんな意味として受け取られているのかをセットで見てはじめて、ブランディングの成果を正しく評価できます。
Q5. ブランディングを始めるには、まず何から取り組めばいいですか?
A. 最初の一歩は、「現状のブランド認識を見える化すること」です。顧客・社員・市場が自社をどう見ているかを把握し、「伝えたいブランド」とのギャップを整理します。
具体的には、
- 顧客は、あなたのブランドをどう見ているのか?
- 社員は、ブランドの価値をどう理解しているのか?
- 市場の中で、自社はどんなポジションにいるのか?
といった問いに対して、アンケートやインタビュー、既存データを通じて“今の姿”を可視化します。そのうえで、
- パーパス(存在価値)
- ブランド提供価値(実利・感情・自己実現)
- ブランドパーソナリティ(個性)
を整理し、発信・体験・デザインに一貫性を持たせていくことが、ブランディングの第一歩です。
まとめ|ブランディングとは何か──感情移入を生むブランディングのこれから
ブランドが長く愛され、安定した売上を生み続けるためには、単に商品やサービスの機能が優れているだけでは不十分です。人々の頭の中に「感情移入」が生まれていることが決定的に重要です。
感情移入が伴ったブランドは、価格の変動や競合の派手なキャンペーンに左右されにくくなります。
なぜなら、そのブランドは単なる「数ある選択肢の一つ」ではなく、生活者にとって自分の価値観やライフスタイルに欠かせない「唯一無二の存在」になっているからです。
Appleが世界中で根強いファンを持つのは、「スマートフォンメーカーだから」ではありません。
Appleは「創造性を刺激してくれる存在」として、ユーザーの中に明確な役割を築いています。新しいiPhoneやMacBookが登場すると、多くの人が「これを手に入れることで、自分の創造力や生産性が高まる」と信じて行動します。
そこにはスペック表では説明できない感情移入が存在しているのです。
同じように、スターバックスは単なるコーヒーチェーンではありません。
多くの人にとって「自分の時間を楽しむ場所」「気分を切り替えるためのサードプレイス」として日常に溶け込んでいます。この役割が確立しているからこそ、多少価格が高くても、近くに他のカフェがあっても、指名して選ばれ続けるのです。
【無料DL】まずは「ブランド提供価値」を整理しよう。
自社が「何を売るか」ではなく「顧客にどんな価値を届けているか」を、チーム全員の共通言語に。
ブランド提供価値を4領域×11の視点で可視化し、戦略・商品企画・コミュニケーションまで一気通貫で整える実務ワークシートを無料配布。BtoC/BtoBの記入例付です 。
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