ユーザー行動を“見える化”して、広告成果の理由を知る
――「Conversion Predictive Optimizer™」は、どのような課題を解決するソリューションなのでしょうか?
宍倉: 私たちが開発した「Conversion Predictive Optimizer™」は、クライアント企業が収集した1st Party Dataを活用し、顧客の未来の行動を予測するソリューションです。具体的には、サイト内での行動履歴などを特徴量(対象データの特徴を定量化して表したもの)としてモデルに組み込み、訪問者ごとにコンバージョンの起こりやすさを示す「コンバージョン予測スコア」を付与します。このスコアに基づいて配信対象を最適に振り分けることで、広告配信におけるさまざまな課題を効率的に解決します。
美那川:近年は広告プラットフォーム側の機械学習による自動最適化が主流となり、広告運用によるクライアント間での差別化が難しくなっています。そこで私たちは、プラットフォームに送るデータそのものの質を上げることに注目しました。より精度の高いデータを提供すれば、プラットフォーム側の学習精度も高まり、結果としてクライアントの成果向上につながると考えています。
仲野:広告運用の現場では、プラットフォーム側の最適化だけに依存すると、いずれ限界が訪れると感じていました。その壁を突破する手段として、1st Party Data を活用し、クライアント仕様にカスタマイズされた独自の評価軸で精緻なセグメントを構築できる点が、「Conversion Predictive Optimizer™」の最大の強みです。これにより、既存の最適化ロジックでは見逃していたかもしれない確度の高いユーザー層にもリーチできるようになります。
――従来の自動最適化と比べて、どんな点が大きく違うのでしょうか?
宍倉:従来の自動最適化配信は、広告入稿後の運用のほとんどが機械任せで、人が改善に踏み込める余地が限定的でした。成果の良し悪しは分かっても、その理由を掘り下げることができないため、改善の方向性を見いだしにくかったのが実情です。
一方、今回のソリューションでは「どんな行動をしたユーザーがコンバージョンしやすいのか」を可視化できます。もし成果が思うように出なくても、モデル自体を改修しながらPDCAサイクルを回せる点が大きな違いです。
仲野:自動最適化における広告運用は、成果の背景が見えづらいことが課題でした。「なぜ成果が上がったのか」「実際にはどんなユーザーに配信されているのか」が把握しにくく、広告会社としても説明責任を果たしづらかったんです。
今回の取り組みではデータチームと連携し、1st Party Dataを基に予測スコアからセグメントを作成します。予測スコアに応じて、検索、ディスプレイ、SNSなど複数の施策の目的に沿った展開ができる為、クライアントに提供できる価値や提案の幅が大きく広がったと実感しています。
スリーステップで手軽に成果を分析・活用
これまでの広告配信よりも、ユーザー理解を一段深めることができる「Conversion Predictive Optimizer™」。その構造は大きく3つのステップで成り立っています。
美那川: 1つ目は、1st Party Data の収集です。
Webサイトやアプリ上のデータは、当社が提供するタグを実装することで取得します。さらに、オフラインデータについてはクライアントの基幹データベースと当社のデータ基盤を連携し、オンライン・オフラインを統合して収集できる仕組みを整えています。
2つ目は、収集したデータを活用した機械学習による分析です。
まず、1st Party Data を特徴量として取り込みます。その上で「どの行動がコンバージョンと強く結びついているのか」を学習し、ユーザーの行動特徴に基づいたコンバージョン予測モデルを構築します。そのモデルをもとに、サイト訪問者一人ひとりに、モデルとの類似度から算出したコンバージョン予測スコアを付与します。
3つ目は、スコアの広告配信への活用です。
十分な精度が確認できた段階で、ユーザーを予測スコアに応じて複数のセグメントに分類し、その情報を広告プラットフォームへ連携します。これにより、より効果的な配信最適化が可能になります。
宍倉:重要なのは、2つ目のステップで行う特徴量の選定と調整です。サイト訪問時の行動データを特徴量としてモデルを構築しますが、コンバージョンへの影響が強い特徴量は企業ごとに異なります。また、コンバージョンへの影響があまりにも強い特徴量だけを選んでしまうと、現時点では具体的なアクションをしていないものの、将来的にコンバージョンする可能性があるユーザーに低いスコアを付けてしまう、いわゆる過学習のモデルになってしまう危険があります。
――なるほど。特徴量にはどのようなものがあるのでしょうか?
宍倉:特徴量には閲覧したページ、訪問曜日、アクセス時間、流入元など、多岐にわたる行動データが含まれます。
仲野::従来は、例えばトップページ・商品ページ・カートページなど、ユーザーの訪問階層に応じた重み付けをすることはありました。「Conversion Predictive Optimizer™」では、単純な階層ではなくユーザーの行動データからスコアリングする点が大きな進化だと思います。
美那川:技術面でも大きな変化があります。現在は、非エンジニアであっても膨大な行動データに機械学習を適用し、高精度な分析を行える環境が整いつつあります。かつては高度な専門スキルや多大な労力が求められましたが、アドテクノロジーやマーケティングテクノロジーの進化により、このような処理を実現するための開発のすそ野が着実に広がっています。
宍倉:今回の環境を実現できた大きな理由のひとつが、トレジャーデータ社の「Treasure Data CDP」を基盤として採用している点です。大量のデータを柔軟に扱えるCDP(顧客データプラットフォーム)の存在が、高精度のスコアリングと配信最適化を可能にしています。
スコアに応じた多彩な配信で、すべてのユーザーにアプローチ
――このソリューションでは、配信方法も複数あるそうですね
宍倉:はい。高い予測スコアのユーザーに配信するだけでなく、コンバージョン数が少ない場合には、高スコアのリストに類似するユーザーにも配信範囲を拡張できます。また、スコアの高低に応じて複数のセグメントに分類し、入札の強弱を調整して配信したりすることも可能です。つまり、ユーザーの状態や予測スコアに応じて、最適なシナリオを組み立てられる点が大きな特徴です。
――予測スコア低いユーザーも重視するんですね。
宍倉:その通りです。低スコアのユーザーは数が多く、無視するにはもったいない大きな潜在価値があります。認知施策と獲得施策ではクリエイティブの役割も異なるため、ユーザーの状態に合わせた段階的なアプローチが必要です。例えばテレビCMでは、まずブランドを知ってもらい、好意を持ってもらい、さらに理解を深めてもらうというステップがあります。それをデジタル広告でも再現するイメージです。低スコア層を適切に育成することは、広告効果を長期的に高めるうえで非常に重要です。
美那川:実際、精度だけを追求すると、商品をすぐに購入しそうなユーザーは母数が少なく、配信ボリュームが減ってしまいます。広告運用では、精度とボリュームは常にトレードオフの関係です。成果に寄与する層だけに絞りすぎると、十分な配信量を確保できず、CV「率」は向上しても、CV「数」が伸び悩み、最終的な広告目標に達しないこともあります。
宍倉:モデル精度を高める作業は、機械学習の仕組みで自動化が進んでいます。しかし、予測スコアをどう配信設計に落とし込むか、つまり、どの層にどんなシナリオで接触していくかは、まだ人間の判断が欠かせません。「高スコア層だけに配信する」のではなく、「どう育成し、どう顕在化させるか」という視点も大切です。
――なるほど。こういった将来を見据えた提案ができるのは、広告代理店ならではの経験があるからかもしれませんね。
導入メリット:成果アップと運用の負担軽減を両立
――大手プラットフォームに対して、購入件数が188%、ROASが130%改善ということですが?
宍倉:はい。まだトライアル段階ではありますが、当社の「Conversion Predictive Optimizer™」を活用することで、プラットフォーム側の自動最適化配信と比較してROAS(費用対効果)が130%向上しました。純粋なROASとしては13,036%(実績値)で、広告出稿金額の約130倍の売上を達成しています。
仲野:つまり、GoogleやMetaなどの世界的企業が行う自動最適化よりも、効果的に広告を配信できたということです。個人的にはとてもすごいことだと思います。
――なるほど、それは導入側のメリットになりますね。
仲野:はい。CPAやROASなどコストパフォーマンスを重視するクライアントにも、導入効果を十分に実感していただけると思います。また、スコアリングやモデル設計を工夫することで、例えば「女性向けに最適化したモデル」を作るなど、クライアントの要望やターゲットに応じた配信戦略も可能になります。これにより、幅広い業種や目的に柔軟に対応することができます。
美那川:「Conversion Predictive Optimizer™」の魅力は、成果だけに留まりません。クライアント側の体制面でも大きなメリットがあります。同じ環境で社内に機械学習モデルを構築しようとすると、技術的なハードルが高く、コストも増大します。しかしこのソリューションでは、データの収集・蓄積・分析をASAKO側の環境で行えるため、クライアントの工数や費用を抑えられます。これはマーケティング担当者にとって大きな魅力ではないでしょうか。
――このソリューションは今後も進化していくのでしょうか?
宍倉:現在のところは、サイト訪問履歴や行動履歴データを特徴量としてモデルを構築しています。ただ、このソリューションは「顧客の未来の行動を予測する」モデルであるため、デジタル広告以外でも応用可能です。例えば、店舗の来店履歴や購買履歴などのCRMデータを活用し、企業に貢献度の高いロイヤル顧客を特定する、といった活用も可能です。将来的にはCRM領域への展開にも挑戦していきたいと考えています。
美那川:クライアントが収集する1st Party Dataには多様な種類があります。技術的にはオフラインデータの取り込みも可能であり、クライアントのニーズや要望に応じて柔軟に対応できます。必要があれば、すぐに作業を開始できる体制も整えています。
仲野:クライアント側では、広告担当とデータ関連のチームが別々の部門に属しており、十分な連携が取れていない場面もよく目にします。我々はその橋渡し役となり、連携をサポートしていきたいと考えています。このような企業に対してトライアルしやすい形で提供し、1st Party Dataをまだ活用できていない企業にも導入しやすくしていきたいです。
――最後に一言お願いいたします。
宍倉:「Conversion Predictive Optimizer™」は特定の業種や企業規模に依存しません。
まずは、ウェブサイトの行動履歴のみを活用し、コンバージョン予測スコアが高いユーザーに配信する方法からトライしてみてください。このシンプルな配信方法だけでも、これまでにない反応や成果を実感できるはずです。