はじめに|PEST分析とは何か?その戦略は“今の時代”に合っているか
❶ 時代に合わないブランド戦略・マーケティング戦略は、どれだけ練っても成果が出ない
あなたはいま、ブランド戦略やマーケティング戦略を立てようとしているかもしれません。いわば、「これから何年かを支える中期戦略の骨組み」を作ろうとしている段階です。
しかし──ひとつ立ち止まって考えてみてください。その戦略は、本当に “今の時代” に合っているでしょうか?言い換えると、「いまの外部環境・社会の変化を前提にした戦略」になっているでしょうか。
多くの企業が陥るのが、「戦略そのものは正しいのに、時代とのズレが生じて成果が出ない」 という状態です。マクロ環境分析やPEST分析を飛ばしてしまうと、こうしたズレが起きやすくなります。
かつて成功した施策が、社会の空気や価値観が変わった瞬間に “古くさい” と感じられてしまう。そんな光景を、あなたも見たことがあるはずです。
- SNSでの価値観対立
- 瞬間的に変わるトレンド
- 多様化するライフスタイル
- 働き方と生き方の境界が溶けていく社会
- モノ消費からコト・意味消費へのシフト
いまの社会は、数年前には想像できなかったスピードで変化しています。つまり、過去の成功体験だけを前提にしたブランド戦略は、すでに時代遅れになっているかもしれないのです。
❷ なぜPEST分析がマーケティング・ブランド戦略の出発点になるのか
では、この“時代とのズレ”を防ぐために何が必要なのか?その答えが マーケティングの基本フレームワークである PEST分析です。
PEST分析とは、Politics(政治)/Economy(経済)/Society(社会)/Technology(技術)の 4 つの外部環境を体系的に読み解く「マクロ環境分析」のフレームワークです。ブランド戦略の立て方・事業戦略の立て方の“入り口”になる分析とも言えます。
ブランド戦略において最も重要なのは、「いま社会がどんな方向に動いているのか?」 を正確に理解することです。
なぜなら、ブランディングとは“社会の価値観の変化中で、どのように提供価値を発揮し、ブランドへの感情移入を生み出すのか?”という問いへの答えだからです。
つまり、時代の潮流を読み違えると、どれだけ優れた戦略や施策をつくっても、顧客の心には届きません。逆に、時代の価値観に沿うブランドは、共感され、応援され、選ばれ続ける存在へと成長します。
PEST分析は、その「時代との接続点」をつくるための 土台となる外部環境分析なのです。
❸ ASAKOが重視する「社会の価値観変化」とPEST分析(S:Society)の関係
PESTの4つの要素の中でも、私たちASAKOが特に重視しているのが S=Society(社会的変化) です。PEST分析のやり方の中でも、この「S」をどれだけ深く読めるかが、ブランド戦略の質を大きく左右します。
なぜなら、社会の価値観・生活者意識の変化は、ブランドの存在理由・提供価値・採用・組織文化にまで影響を及ぼす“深い潮流”だからです。
- 多様性の広がり
- ジェンダー意識の変化
- ウェルビーイング志向
- 意味消費・価値消費の拡大
- Z世代の価値観
- 働き方と生き方の再定義
こうした変化は、単なる「トレンド」ではありません。ブランドがどんな物語を語るべきか、どんな価値を提供すべきか、なぜ存在するのか(パーパス)に直結します。
この記事を最後までお読みになれば、
- PEST分析の基本
- 社会の価値観変化の読み解き方
- それをブランド戦略に落とし込むプロセス
が一気通貫でイメージでき、“選ばれ続けるブランド”へ進化するヒントが見つかるはずです。
PEST分析とは?ブランド戦略に効く外部環境分析フレームの基礎
そもそもPEST分析とは?4つの外部環境(P・E・S・T)から未来の前提を読み解く
PEST分析とは、Politics(政治)/Economy(経済)/Society(社会)/Technology(技術)の4つの外部環境を体系的に読み解き、自社のブランド戦略・事業戦略の前提を設計するためのフレームワークです。いわゆる「マクロ環境分析(マクロ環境のフレームワーク)」の代表例でもあります。
これは単なる「分析ツール」ではなく、“これからの時代にブランドはどうあるべきか”を考えるための羅針盤でもあります。
企業は自分たちの努力だけでは社会の流れを変えられません。しかし、流れを読み取り、その波にうまく乗ることはできます。そのための視点が、このPESTです。
❶ P(Politics):政治的要因のPEST分析例|規制・法改正・政策変化の読み解き方
政治的要因とは、国や自治体が定める制度・法律・規制の変化を指します。PEST分析のPにあたる部分で、「市場のルールそのもの」を動かす要素です。
- 新たな補助金や助成金制度
- 業界の規制強化・緩和
- 個人情報保護・労働関連法の改定
- 通商協定・関税政策
- 経済安全保障(特定国との取引制限など)
政治の変化は企業にとって「市場のルールが書き換わる」 ほどの影響を与えることがあります。
たとえば、広告規制が強まればマーケティング施策は根本から見直す必要があり、補助金制度が変われば参入障壁が上下します。これは、ブランドのポジショニングやコミュニケーション戦略にも影響します。
ブランド戦略も同じです。政治の変化を読むことは、未来の前提を理解することなのです。
❷ E(Economy):経済的要因のPEST分析例|景気・物価・金利・購買力の変化
経済的要因とは、景気や為替、物価、雇用、金利など、社会全体のお金の流れを左右する変化のことです。PEST分析のEに該当します。
- 物価高・インフレ
- 金利の上昇
- 為替レートの急変
- 雇用環境の変化
- 消費者の可処分所得の増減
- 株価や投資動向
経済環境は、価格戦略、プロモーション、購買行動、ニーズの優先順位すべてに影響します。PEST分析の実践ステップでは、こうした経済指標をただ並べるのではなく、ブランドへの影響まで読み解くことが重要です。
特に近年はインフレの加速により、「安さ」ではなく “価格が上がっても買う理由”=ブランド価値 を問われる時代になっています。
経済の変化は、ブランドの価値提案そのものを再設計するきっかけになるのです。
❸ S(Society):社会的要因のPEST分析例|価値観・ライフスタイル・文化の変化
社会的要因とは、生活者の価値観・生活様式・文化の変化を指します。PEST分析のSにあたり、私たちASAKOが最も重視する領域でもあります。
- 高齢化・単身世帯の増加
- 多様性とインクルージョン
- ウェルビーイング志向
- サステナビリティ意識の高まり
- ジェンダー意識の変化
- Z世代の価値観
- 働き方・生き方の再定義
- モノ消費から「意味消費」へのシフト
社会の価値観は、ブランドが語るべき物語、提供すべき価値、選ばれる理由に直結します。PEST分析の事例を見ても、Sの解像度が高い企業ほど、強いブランドパーパスを持っています。
PESTの「S」は、ブランドパーパスの源泉であり、最も深く読み解くべき領域なのです。
❹ T(Technology):技術的要因のPEST分析例|生成AI・デジタル化・購買体験の変化
技術的要因とは、商品開発やマーケティング、顧客接点を左右するテクノロジーの進化です。PEST分析のTに当たります。
- 生成AI(ChatGPT、Midjourney など)の普及
- AIによる業務効率化・自動化
- デジタルマーケティングの高度化
- OMO(オンライン × オフラインの融合)
- UGCの拡大(SNS時代の購買行動)
- アルゴリズムによるレコメンド設計
- 新しいデバイス(AR/VRなど)
テクノロジーの変化は、ビジネスモデルや購買体験そのものを変える“地殻変動”です。重要なのは「どの技術を使うか?」ではなく、「その技術が生む新しい価値は何か?」を見抜くことです。
ブランドは、技術を単なる手段ではなく、未来の顧客体験とつながる基盤として捉える必要があります。
PEST分析
PEST分析の目的は「現状把握」ではなく「未来の前提条件」を読むこと
よく誤解されますが、PEST分析とは “現状把握” のためのチェックリストではありません。PEST分析の本当の目的は、次のような「未来の前提」を読むことです。
- これから市場はどこへ向かうのか?
- 顧客の価値観はどのように変わるのか?
- その未来で、自社ブランドはどのような価値を提供すべきか?
PEST分析とは、未来から逆算してブランド戦略を設計するための思考法・フレームワーク なのです。
なぜPEST分析がブランド戦略・マーケティング戦略に欠かせないのか?
❶ 理由1:施策先行だとブランド戦略が“時代遅れ”になるから
多くの企業が陥る罠があります。それは、ブランド戦略より先に、個別のマーケティング施策を考えてしまうことです。
- 広告のABテスト
- SNS運用
- インフルエンサー施策
- SEO対策
- クリエイティブ改善
これらは確かに数字が動きやすく、「成果が出ているように見える」ため優先されがちです。しかし、時代の潮流とズレた戦略のもとで施策を打っても、どれだけ頑張っても成果は頭打ちになります。
かつて有効だった戦略が、社会の空気が変わった途端に“古くさく見える”現象は、あなたも見たことがあるはずです。
だからこそ、戦略をつくる前に「時代の前提」を読み解くこと が絶対に欠かせないのです。そのための基本手順が、PEST分析のやり方です。
❷ 理由2:PEST分析がブランド戦略の「根拠」と「説得力」をつくるから
もしあなたが社内で戦略を提案するとしたら、必ず上司や経営層からこう問われます。
- 「なぜ今その戦略が必要なのか?」
- 「その施策に投資する根拠は?」
この質問に答えられない戦略は、どれだけ正しくても通りません。戦略は次の3つで構成されます。
- 外部環境(時代)の変化
- だから必要になる機会・課題
- それに対応する戦略(ブランドの方向性)
このうちひとつでも欠けると戦略の説得力は成立しません。つまり、PEST分析がなければ、
- 何を機会と見るのか
- どんな脅威が迫っているのか
- なぜ今そのブランド戦略が必要なのか
を説明できず、戦略も施策も“根拠のない提案”になってしまうのです。PESTを分析するということは、戦略の前提条件を明確にし、意思決定を正当化する行為なのです。
❸ 理由3:変えられない外部環境を読み解き、“勝てる前提”を見極めるため
企業は広告費や製品開発によって市場を動かすことはできますが、社会の流れそのものを変えることはできません。
- 政治(規制・政策)
- 経済(景気・物価)
- 社会(価値観・文化)
- 技術(革新・普及)
これらの巨大な潮流は、*一企業の努力ではどうにもならない“変えられない前提条件”です。しかし、読み解くことはできます。そして読み解ければ、その流れを味方につけることができます。
PEST分析の本質とは、まさに「変えられない流れの中で、どう勝つか」を考えるための視点なのです。
❹ 理由4:ブランドパーパスや価値提案は「時代の変化」からしか生まれない
ブランドが顧客から選ばれる理由は、単なる機能や価格ではありません。これからのブランドが問われるのは、「この時代に、何のために存在するのか?」=パーパスの必然性です。
そしてパーパスとは、時代の変化(特に価値観の変化)を深く理解しない限り語れません。
- 働き方の変化
- 消費行動の変化
- 幸福観・生き方の変化
- 多様性・ウェルビーイングの価値観
- サステナビリティの捉え方
これらはすべて「S(社会)」の領域で起きています。つまり、ブランド戦略とは社会の変化の翻訳作業であり、PEST分析はその翻訳の起点になるのです。
❺ 理由5:PEST → 機会・脅威 → 戦略の流れが、ブレないブランド戦略を生む
PEST分析の目的は「たくさん書き出す」ことではありません。重要なのは、この3ステップをつなぐことです。
- PESTで外部環境を把握する
- 自社への機会・脅威を整理する
- ブランド戦略の方向性を導く
この流れがあるだけで、戦略の必然性・再現性・説得力が圧倒的に増します。逆に言えば、PEST分析をしない戦略は、感覚頼りの“偶然の成功”に依存した危険な戦略です。
PEST分析の4つの要素
PEST分析は、外部環境を P(政治)/E(経済)/S(社会)/T(技術) の4つの視点で整理するフレームワークです。ここでは、各要素を「ブランド戦略にどう関係するのか」という観点で、PEST分析の実践ステップとして解説していきます。
PEST分析の構成要素1:Politics(政治)|ルール変更が市場とブランドに与える影響
政治的要因とは、“市場のルール”を形づくる要素を指します。ブランド戦略の前提を大きく動かすことも多く、軽視すべきではありません。
▼具体例
- 法改正・規制強化/緩和
- 補助金・助成金制度の変更
- 判例・ガイドラインの見直し
- 輸出管理や取引制限
- 関税・通商政策の変化
- 環境・サステナビリティ関連規制
政治的変化はしばしば、業界の競争構造を一気に塗り替えるトリガーになります。たとえば、
- プライバシー保護法制の変化はデジタルマーケの前提を変える
- サステナ規制は「環境配慮型ブランド」への期待を高める
- 働き方関連法は、採用ブランディングや企業文化の価値を変える
など、ブランドに直結する影響が非常に大きい領域です。
▼ブランド戦略への落とし込み
- 規制強化を“制約”ではなく“差別化のチャンス”として活かす
- 法改正が求める社会価値をパーパスに反映する
- 新制度を活用した新しい価値提案を開発する
政治的要因は「順応するもの」ではなく、“価値提案の起点”にもなる重要な要素です。
PEST分析の構成要素2:Economy(経済的変化)|景気・物価・金利がブランドの価値を左右する
経済的要因とは、“お金の流れ”と“購買行動”を左右する変化のことを指します。企業活動の川上から川下まで、すべてに影響します。
▼具体例
- 景気・消費動向の変化
- インフレ/デフレ
- 原材料価格の高騰
- 金利の上昇
- 為替変動
- 雇用環境の変化
- 投資意欲の増減
こうした変化は、価格戦略・価値訴求・商品企画・顧客接点すべてに波及するため、ブランド戦略の方向性を左右します。
▼経済変化がブランドに与える影響
- インフレ → 「価格ではなく価値で選ばれる」ブランドが強くなる
- 景気後退 → 「失敗しない」「堅実性」への需要が高まる
- 金利上昇 → 投資判断の基準が変わり、新規事業の打ち手も変わる
経済は“外部環境”でありながら、ブランドが語るメッセージにも大きく影響します。
▼ブランド戦略への落とし込み
- 経済環境に応じた価値訴求(実利・効率・安心)
- 価格以外の“存在意義”を再定義する
- 顧客の心理的負担を軽減する体験設計
PEST分析の構成要素3:Society(社会)|価値観・ライフスタイル変化とブランド存在理由
社会的要因とは、生活者の価値観・ライフスタイル・文化の変化を指します。PESTの中でも、ブランド戦略に最も深く関わるのがこの“社会(S)”です。
▼具体例
- 少子高齢化・単身世帯化
- 多様性・DE&I価値観の浸透
- サステナビリティ志向の加速
- 心の豊かさ・ウェルビーイングの重要性
- 働き方・生き方の多様化
- 若年層の消費価値観の変化
- 地域コミュニティの再生
これらは単なるトレンドではなく、何のためにブランドが存在するのか?」を問い直す社会的文脈そのものです。
▼ASAKOが重視する理由
ブランドとは、独自性 × 感情移入でできているものです。そして感情移入は、社会の価値観とブランドの提供価値が重なったときに生まれます。つまり、
- どんな未来を望むのか
- どんな人を応援したいのか
- 社会課題とブランドの接点は何か
こうした“パーパスの源泉”はすべて社会的変化にあります。
▼ブランド戦略への落とし込み
- 価値観変化を読み解き、パーパス・ブランドストーリーに統合する
- 顧客の「生き方」や「願い」と接続した価値提案をつくる
- 社会文脈に沿った意味づけで、ブランドイメージを育てる
PEST分析の構成要素4:Technology(技術)|テクノロジー変化から“未来の顧客体験”を読む
技術的要因は、ビジネスモデル・顧客体験・競争構造を根本から変える力を持っています。
▼具体例
- 生成AI(ChatGPT、Midjourney)の普及
- 自動化・RPA・ロボティクス
- データ活用・アルゴリズム主導の購買導線
- 5G/IoT/センシング技術
- UGC(ユーザー生成コンテンツ)の増加
- OMO(オンライン×オフライン統合体験)の進化
技術は「できること」を増やすだけではありません。“顧客が当たり前に期待する基準”そのものを引き上げます。
▼技術変化がブランドに与える影響
- 購買判断がAI・アルゴリズムに委ねられる
- 体験設計がオンライン/オフラインをまたぐ前提になる
- SNSでの共感・推薦がブランド評価の中心になる
つまり、技術を理解することは、未来の顧客行動を先読みすることに直結します。
▼ブランド戦略への落とし込み
- 新しい体験価値(CX)の創造
- 顧客データを活用した個別最適化
- UGCを前提にしたコミュニケーション設計
- 技術とブランドストーリーの融合
PEST分析のやり方|ブランド戦略に落とし込むプロセスと手順
PEST分析で外部環境を把握しても、「だから、うちは何をすればいいの?」という問いに答えられなければ意味がありません。
ここでは、PESTを ブランド戦略・マーケティング戦略に落とすための実務プロセス を、ASAKO独自の整理で体系化して解説します。PEST分析のやり方・ステップを実務レベルに落としたイメージです。
PEST分析のステップ
ステップ1:PEST分析の事実収集(Facts)|情報ソースと集め方
まずは、外部環境の変化を広く集める段階です。
▼収集する情報の例
- 政府・自治体の政策/法改正の動き
- 景気・物価・雇用などの経済指数
- 価値観・ライフスタイルの調査レポート
- 技術トレンドやAIの進化
- 業界レポート・ニュース・SNSトレンド
ここでは「解釈しない」ことが大切です。やるべきは “広く・薄く・偏らず” 事実を集める こと。ブランド戦略の失敗の多くは、“外部環境の取りこぼし” によって起こります。
ステップ2:変化の“意味”を読む(Insight)|価値観・本質の解釈
事実を集めたら、次はそこに “意味づけ” を行います。ここがPEST分析と単なる情報収集の違いであり、ブランド戦略に効くかどうかの分かれ目です。
▼ポイント
- なぜこの変化が起きているのか?
- 生活者は何を求め始めているか?
- 背景にある価値観は何か?
- この変化は一時的か構造的か?
- この変化は加速するのか鈍化するのか?
ここで重要なのは、PEST分析の目的は変化の「表層」を知ることではなく、変化の「必然」を知ることであるということです。たとえば…
■例:サステナビリティ意識の高まり
- 表層:環境配慮の消費が増えている
- 内側:罪悪感のない購買行動をしたい/責任ある企業を選びたい
- 本質:生活者の価値観そのものが「意味消費」にシフト
この“内側”を読み解けないと、ブランド戦略はブレてしまいます。
ステップ3:機会・脅威(Opportunity/Threat)への分解
変化の意味が掴めたら、次は “自社にとって何を意味するか” を整理します。PEST分析の結果を、そのままブランド戦略に結びつける中継地点です。
▼Opportunity(機会)の例
- 新たな顧客層の誕生
- 価値観変化による新市場の拡張
- 新技術による新サービスの創出
- ビジネスモデル変革のチャンス
▼Threat(脅威)の例
- 旧来モデルの陳腐化
- 顧客の価値観とのズレ
- 競合の台頭
- 技術革新による代替可能性
PEST分析の本当の価値は、外部環境を“戦う材料”に変換することにあります。
ステップ4:ブランドにとっての“意味”を定義する(Brand Meaningの設計)
外部環境の機会・脅威を踏まえたうえで、
- ブランドは何を約束すべきか?
- どんな価値を提供すべきか?
- どんな世界観を描くべきか?
- 顧客のどんな感情を動かすべきか?
を定義します。これはブランドパーパスやブランドエクイティの中核を言語化するフェーズです。
ステップ5:戦略・施策への翻訳(Strategy/Execution)と実務への落とし込み
最後に、ブランドの方向性を 具体的な戦略・施策へ落とし込むフェーズです。ここで初めて、「施策の話」に入ります。
▼落とし込み例
- パーパス(存在理由)
社会の価値観変化とつながる“存在価値”を再定義 - 提供価値(Value Proposition)
機能価値+情緒価値+自己実現価値を整理 - ブランドストーリー
PESTの背景とブランドの使命を統合 - 商品・サービス開発
社会の変化が求める新規価値をプロダクトに反映 - コミュニケーション
時代の文脈に合致したメッセージや世界観を構築 - CX設計(Customer Experience)
顧客の期待値が変わる前提で体験をアップデート
ここが“抽象 → 具体”の橋渡しであり、PEST分析のすべてが“実務で使える”ようになるポイントです。
PEST分析から価値観変化・ブランド戦略・施策へつなぐ“黄金ルート”
ASAKOが考える理想のプロセスは以下です。
- PESTで外部環境の事実を収集する
- 価値観変化(Society)を中心に意味を解釈する
- 機会/脅威に分解し、ブランドにとっての意味を定義する
- パーパス・提供価値・体験・メッセージへ落とし込む
- 施策(広告・コンテンツ・プロダクト)へ翻訳する
このプロセスを踏むことで、「時代の潮流に沿った、必然性のあるブランド戦略」をつくることができます。PEST分析のやり方を“絵に描いた餅”で終わらせず、ブランド実務に直結させるための方法です。
PEST分析から読み解く「社会の価値観変化」61分類(概要版)
PEST分析の中でも、ASAKOが最重要視しているのが S=Social(社会的変化) です。その理由は明確で、ブランドを選ぶ基準の“根底”にあるのは人々の価値観だからです。
- どんなことに心が動くのか
- どんな世界を望んでいるのか
- どんな企業を応援したいのか
- どんな体験にお金や時間を使うのか
これらの答えは、商品スペックの中にはありません。すべて「価値観の変化」の中にあります。
ASAKOでは、PEST分析から抽出される 社会の価値観変化を61分類 で体系化し、ブランド戦略の中核として活用しています。ここでは、その一部をカテゴリ別に概要として紹介します。
価値観変化1:ライフスタイルの多様化と自己実現志向の高まり
● 主な価値観変化(例)
- 物質消費 → 意味消費 へのシフト
- 「効率」よりも ウェルビーイング(心地よさ) を重視
- オンライン/オフラインの ハイブリッド生活 の定着
- “正解”よりも 自分に合う選択 を求める傾向
- 趣味・嗜好の ニッチ化・個別化 が加速
● ブランド戦略への示唆
「万人に合うブランド」は価値を失い、“自分ごと化”できるブランド が強くなる。
価値観変化2:ジェンダー・ダイバーシティ・インクルージョンの拡大
● 主な価値観変化(例)
- ジェンダーニュートラルな表現や商品への支持
- 多様な生き方・働き方を肯定する空気の浸透
- 偏見のない広告・コミュニケーションへの期待
- ダイバーシティが企業選択の基準になる
● ブランド戦略への示唆
ブランドの価値観そのものが問われる時代。「誰を包摂するか?」 が、差別化になる。
価値観変化3:サステナビリティとエシカル消費・倫理観の強化
● 主な価値観変化(例)
- 環境配慮型ブランドへの志向
- 倫理的消費(エシカル)が“当たり前”に
- 企業の透明性や公正性を重視する傾向
- “安さ”より 罪悪感のない購買 を優先
● ブランド戦略への示唆
「良いものを売っているだけ」では選ばれない。“何を大切にしているブランドか” が選択理由となる。
価値観変化4:働き方とキャリア観の大転換と企業ブランディング
● 主な価値観変化(例)
- 終身雇用 → 複線キャリア・パラレルキャリア
- 転職がポジティブ化
- 会社よりも 個の成長・専門性 を重視
- リモートワークの浸透で働き方の前提が変化
● ブランド戦略への示唆
採用広報・企業ブランディングにも直結する流れ。ブランドは “誰が働くべき場なのか” を明確に語る必要がある。
価値観変化5:コミュニティ・つながり・共創価値の高まり
● 主な価値観変化(例)
- 顧客同士がつながる“共感型コミュニティ”の増加
- 企業と生活者が共に価値をつくる 共創モデル の拡大
- ファンベースのブランドが選ばれる傾向
- SNSを通じた“参加型価値創造”が当たり前に
● ブランド戦略への示唆
購買の理由は「機能」ではなく “仲間感・共感・関係性” へ。ブランドはコミュニティデザインの視点が必須になる。
価値観変化6:情報接触と購買行動の再編(デジタル×リアルの融合)
● 主な価値観変化(例)
- アルゴリズム主導の購買が一般化
- レビュー・SNSの他者評価が意思決定の中心に
- OMO(Online Merges with Offline)が生活に溶け込む
- 体験価値(UX)が選択基準の上位に
● ブランド戦略への示唆
情報の“届け方”ではなく、“受け取られ方”がすべて。知獲得はもちろん、購入前後を含むCX全体の統合設計が不可欠。
価値観変化7:ヘルスケア・メンタルウェルビーイング志向の高まり
● 主な価値観変化(例)
- 心身の健康を整える消費の増加
- 予防医療・セルフケアへの関心拡大
- “整う/やすらぐ/癒される”という情緒価値の重要度UP
- メンタルヘルスをタブー視しない社会的機運
● ブランド戦略への示唆
商品のベネフィットだけでなく、“心がどう動くか” を語れないブランドは選ばれなくなる。
PEST分析のよくある失敗例と成功させるポイント
PEST分析は、ブランド戦略の“出発点”となる重要なフレームワークですが、正しく活用できている企業は決して多くありません。
ここでは、現場でよく見られる典型的な失敗と、成功させるためのポイントを整理します。
● 失敗1:キーワードの羅列で終わる(深掘りが足りない)
もっとも多い失敗が、“現象を並べただけのPEST分析”です。
- 「高齢化が進む」
- 「リモートワークが増えた」
- 「AIが普及している」
- 「円安トレンドが続く」
──このように、新聞の見出しのような言葉を並べただけでは、何の意味も持ちません。大事なのは、
- 何が変化しているのか
- なぜその変化が起きているのか
- 自社にどう影響するのか
- ブランドの価値にどう関係するのか
の4段階で深掘りすることです。キーワードではなく「価値観」と「意味」を読み解けないと、戦略にはつながりません。
● 失敗2:企画の資料で終わり、現場に浸透しない
次によくあるのが、PEST分析が“企画資料”として眠ってしまうケースです。
- 戦略資料に入っているけれど、現場は知らない
- 役員会だけで使われ、ブランド設計には反映されていない
- プロモーションや採用現場ではまったく意識されていない
これでは、分析が現場の行動につながりません。PEST分析は、
- ブランドの提供価値
- メッセージ
- 商品企画
- 採用・広報・営業の言葉
──すべてに影響を与える“共通言語”です。
● 失敗3:PEST分析の結果がブランド戦略・メッセージに落ちない
PEST分析の目的は、外部環境を整理することではありません。最終目的は、ブランドの「語るべき価値」と「世界観」を再定義することです。しかし実際には──
- PESTで考えた内容がメッセージに反映されていない
- 行動スローガンやコピーが“時代感”と結びついていない
- デザイン・広告・SNSの表現が昔のまま
というケースが少なくありません。PEST分析は、ブランドのストーリーを方向づける“源泉”です。ここが戦略と繋がらなければ、どれだけ分析しても意味がありません。
● 失敗4:一度作って放置され、PEST分析が更新されない
PESTは“毎年変わる分析”ではありません。いまの時代は、半年で価値観が変わり、1年で市場構造が変わり、2年で購買行動が変わると言われています。にもかかわらず──
- 3年前に作ったPEST分析を使い続けている
- 新たな社会変化が組み込まれない
- 価値観変化をアップデートしていない
という企業は非常に多いのが実情です。PEST分析は、“時代のスナップショット” ではありません。継続的にアップデートされる“変化のレンズ”なのです。
FAQ|PEST分析とブランド戦略のよくある質問・使い方・活用方法
PEST分析は、外部環境を読み解くための非常に強力なフレームワークですが、「実務でどう使えばよいのか?」という疑問も多く寄せられます。ここでは、特に質問の多いテーマを整理して回答します。
Q1|PEST分析はどんな企業・ブランドに必要か?
結論から言えば、すべての企業に必要です。PEST分析は、規模や業種に関係なく、
- 事業戦略
- ブランド戦略
- 新規事業
- プロダクト開発
- 採用・組織づくり
など、あらゆる企業活動の“前提”を支える土台です。
外部環境の変化は、一企業の努力では変えられません。だからこそ、「変わる環境にどう適応するか」 を考えるために、すべての企業が取り組む価値があります。特に以下の状況にある企業は必須といえます。
- 事業の方向転換を検討している
- ブランド戦略を刷新したい
- 新サービス・新カテゴリへの参入を考えている
- 採用競争力を高めたい
- 市場の変化に違和感を抱いている
ブランドは「時代との関係性」で成り立ちます。そのため、PEST分析はどの企業にも欠かせません。
Q2|PEST分析の項目例・チェックリストの作り方は?
はい、各視点における代表的な項目例は次の通りです。PEST分析のチェックリストづくりにも使えます。
◎ Politics(政治・法律の変化)
- 法改正(個人情報保護法、労働法など)
- 補助金・助成金制度
- 業界規制の強化・緩和
- 安全保障政策・輸出入制限
- 行政の重点施策・自治体方針
◎ Economy(経済環境の変化)
- 景気動向
- 物価・インフレ
- 為替レート
- 金利
- 雇用・所得の変化
- 原材料費の変動
◎ Society(社会・生活者の変化)
- 人口構造(少子高齢化、単身増加)
- 働き方の変化(リモート、フリーランス増)
- 消費価値観の変化(ウェルビーイング、多様性)
- ライフスタイルの変化
- サステナビリティ意識
◎ Technology(技術の進化)
- 生成AI
- デジタルマーケティングの高度化
- D2C・OMOの浸透
- 自動化・ロボティクス
- プラットフォームの変化
これらのキーワードを、「何が起きているのか?」 → 「なぜそれが起きているのか?」 → 「自社にどう影響するのか?」の順で深掘りすることが実務では重要です。
Q3|競合と差別化するPEST分析の活用方法は?
はい。ポイントは、PESTの解釈を“自社の価値”に直結させることです。
多くの企業は、PEST分析で 外部環境を整理しただけで終わってしまう ため、差別化につながりません。差別化する企業の特徴は次の通りです。
- 社会変化を「ブランド提供価値」と関連付ける
- PEST → 価値観変化 → 提供価値 → メッセージの一貫性がある
- 時代の変化を“ブランドのストーリー”として語る
- 技術や社会潮流を、商品・体験・表現に落とし込んでいる
つまり、「外部環境を読んで、ブランドの必然性を再定義している」ことが差別化の源泉になります。
ASAKOの支援でも、PESTは単なる環境分析ではなく、ブランドが“なぜ今必要なのか”を語るための土台として扱います。
Q4|PEST分析をブランド戦略・マーケティング戦略に落とし込むコツは?
もっとも重要なのは、PESTを「ブランドの意味づけ」へつなげることです。
① PESTから「価値観の変化」を抽出する
外部環境をただ並べるのではなく、
- 何が求められているのか?
- 何に不満があるのか?
- 何が“正しさの基準”になっているのか?
といった生活者の内側にある“価値観”を言語化する。
② 価値観の変化から「ブランド提供価値」を定義する
- 私たちは、この価値観にどう応えるブランドなのか?
- 社会にどんな貢献をする存在なのか?
- 顧客のどんな理想を叶える存在なのか?
という「役割」を言語化する。
③ 提供価値を、メッセージ・施策に落とし込む
- コピー
- ストーリー
- プロダクト
- 体験設計(CX)
- 採用・組織づくり
- SNS・広告表現
まで一貫させることで、“時代に愛されるブランド”が生まれます。
まとめ|PEST分析を“生きた戦略フレーム”としてブランド資産に変える
PEST分析は、「戦略づくりのためのチェック項目」ではありません。むしろ “ブランドが時代とつながり続けるための羅針盤” といえる存在です。
ブランドは、企業の内部だけを見ていては成立しません。外部環境が揺らぎ、価値観が日々変わる時代において、
ブランドの存在価値は“時代との関係性”の中で再定義され続ける必要があります。
ここでは、この記事全体の要点を改めて整理します。
● PEST分析は、すべてのブランド戦略の“出発点”
どんなに優れた戦略や施策も、その前提となる「環境認識」が間違っていれば、的外れなものになります。PEST分析は、
- 何が変わっているのか
- なぜ変わっているのか
- その変化は自社にどんな意味を持つのか
を体系的に整理する、ブランド戦略の最初のプロセスです。
● 時代の潮流を理解することは、ブランドの存在価値の再定義につながる
政治・経済・社会・技術の変化は、ブランドの「役割」「提供価値」「語るべきメッセージ」まで変えていきます。時代の変化を捉えることは、
- ブランドがなぜ必要なのか
- どんな未来に寄与するのか
- 顧客にどんな感情移入を生むのか
といった“存在価値の再定義”を行うための重要な視点です。
● 変化に適応するブランドではなく、変化を味方につけるブランドへ
多くのブランドが「変化に遅れないようにする」ことに意識を向けています。しかし、ASAKOが重視するのは、もっと前向きな姿勢です。
- 変化を脅威ではなく、“自分たちの必然性を生み出す追い風”として捉える。
そのためには、PEST分析を資料で終わらせるのではなく、提供価値・体験・ストーリーへとつなげ、ブランドの進む方向を形づくる必要があります。
● まずは「社会の価値観変化」から読み解き、戦略の前提条件をアップデートする
PESTの中でも、とりわけ影響が大きいのが S=社会的変化(Society) です。価値観・文化・生活意識の変化は、ブランドが語るべきストーリーや提供価値に直結します。
- 顧客が何を求めているのか
- どんな“正しさ”が基準になりつつあるのか
- どんな未来に共感が集まっているのか
こうした“価値観の変化”を読み解くことが、ブランド戦略を今の時代にアップデートするための最短ルートです。
私たちASAKOは、この「社会の価値観変化」を中心に、PEST分析 → 価値観変化 → ブランド提供価値 → 戦略・施策
という一貫したプロセスを設計しています。
PEST分析は、単なる分析手法ではありません。未来に向けてブランドを成長させる“生きた戦略フレーム”です。時代の流れを読み解き、その流れを味方にしながら“選ばれ続けるブランド”を構築していきましょう。
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今、社会はかつてないスピードで変化しています。
「働き方・暮らし方の多様化」「ジェンダー平等」「サステナビリティ意識の高まり」──こうした潮流は、ブランドや企業活動の前提そのものを揺さぶっています。
しかし、これらの変化を“感覚”で捉えているだけでは、戦略には落とし込めません。そこで活用いただきたいのが、「社会の価値観変化ワークシート」です。
本シートでは、61の社会トレンドを一覧化し、「影響度/パーパスとの関連/ブランド機会」まで整理できる実務直結型のフレームを提供しています。