本記事は、ブランディングが売上拡大にとどまらず企業の経営基盤を強化する戦略投資である点を解説しています。
強いブランドは①仕入れ条件の優位化、②広告費削減による自走型モデル化、③資金調達条件の改善をもたらし、取引先・顧客・投資家からの信頼を高めます。
その結果、コスト・資本構造を最適化し、持続的成長を支える仕組みとなります。

はじめに

「ブランディングって、要するに“売れるようにするため”のものでしょう?」

そんなふうに思っている方がいたら、ぜひこの記事を最後まで読んでみてください。

ブランディングと聞くと、多くの人が「知名度を上げる」「商品を売れるようにする」「広告でイメージを良くする」といった、“攻めの効能”を思い浮かべるのではないでしょうか。

もちろんそれらもブランディングの重要な役割ですが、実はそれだけではありません。本質的なブランディングは、単に“売上を上げる”ための手法ではなく、“経営体質を強くする”ための戦略です。

たとえば、仕入れコストを下げたり、広告費を削減したり、さらには資金調達の条件を有利にしたり…。つまり、売上“以外”の経営指標にも、多大なインパクトを与えるのです。

今回は、あまり語られることのない「コスト削減」や「資本力強化」といった、ブランディングの意外な効能についてご紹介します。

※参考:ブランディングとは?意味・目的・効果を「感情価値」から理解する戦略入門

仕入れコストの削減──選ばれるブランドがもたらす交渉力

「ブランディングが進めば売上が上がる」──これは多くの人がイメージしやすい効果です。ブランドが知られ、信頼されることで、“指名買い”が増えていく。まさにブランディングの王道的な効能です。

しかし、それによって「仕入れコストが下がる」と聞くと、少し意外に感じるかもしれません。

ブランド力が高まれば販売数量が増え、それに伴って仕入れ数量も増えます。数量がまとまれば、スケールメリットによって1個あたりの仕入れ単価は下がっていきます。ここまでは比較的わかりやすい話です。

注目すべきは、その次の段階です。ブランドが社会的評価を得ると、仕入れ先や取引先の態度が大きく変わります。

  • 「ぜひ、あのブランドと取引したい」
  • 「このブランドに材料を供給していること自体が、自社のステータスになる」

こうした心理が働くと、“選ばれる側”に立ったブランドは、価格や条件面でこれまで以上の譲歩を引き出せるようになります。

たとえば、アップルのようなブランドは、部品メーカーに対して極めて有利な取引条件を引き出せることで知られています。価格交渉においても、納期や品質要求においても、ブランドの力が“交渉カード”となっているのです。

ブランドとは「選ばれる理由」の集合体です。その影響力は、顧客だけでなくサプライチェーン全体にも波及し、企業のコスト構造すら変えてしまうのです。

広告宣伝費の削減──自走型ブランドへのフェーズシフト

広告宣伝費は、一見すると「売上を上げるためのコスト」と捉えられがちです。

しかし本質的には、ブランドを育てるための“投資”です。そしてブランドが育てば、やがてその投資を回収できるフェーズに入ります。

ブランドがある程度確立すると、顧客の行動は変わります。「広告で知ったから買う」ではなく、「そのブランドだから買う」──いわゆる“指名買い”が起こる段階です。

この状態になれば、膨大な広告費をかけて知名度を広げる必要はなくなります。広告は、知名度拡大のためではなく、ブランド力を維持・強化する“メンテナンス投資”にシフトします。

広告費削減の効果

ASAKOでは、この状態を「自転車操業ブランド」から「自走型ブランド」への転換と呼んでいます。

特に、CPA(顧客獲得単価)が高騰している現代において、この変化は非常に重要です。広告は費用をかければ売上が伸びる“コスト型”の手法ですが、いつまでも依存すると、顧客獲得のたびに「税金」のように広告経費がかかる状態が続いてしまいます。

一方、ブランディングによって「広告に頼らなくても。ブランド力で売れる状態」をつくれば、収益性の高いビジネスモデルになります。これこそが、持続的な競争力を生み出す成長エンジンなのです。

資金調達コストの削減──信頼されるブランドの効果

ブランディングの効果は売上や顧客だけにとどまりません。意外かもしれませんが、「資金調達」の条件にも大きく影響します。

企業経営において「どんな条件で資金を調達できるか?」は、成長スピードや投資判断を左右します。投資家や金融機関は資金提供の際、主に次の2点を見ています。

  • 成長性:将来どれだけの利益を生む可能性があるか
  • リスク:その利益が、どれだけ安定的・継続的に得られそうか

この2つを強く裏付けるのが、ブランドの力です。

ブランドが確立され、顧客に広く支持されていれば、売上は安定し、利益率も高くなります。さらに、「愛されるブランド」であることは、競合による顧客奪取を防ぐ参入障壁となり、売上急落のリスクを下げます。

結果として、投資家や金融機関は「この企業の収益は安定している」「収益低下のリスクは低い」と判断します。すると、金利の引き下げ、融資枠の拡大、エクイティ出資の集まりやすさなど、資金調達条件が大幅に改善されるのです。

つまり、ブランドの信頼性は市場だけでなく、資本市場においても強力な武器になります。

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著者プロフィール

羽田 康祐

羽田 康祐 (はだ こうすけ)

ビジネス開発局

産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。 日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。外資系コンサルティングファームなどを経て現職。 「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『本質をつかむ』『ブランディングの教科書』『パーパスブランディングの教科書』がある。

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