この記事に辿り着いたあなたなら、何らかの理由で「パーパスブランディング」や「ブランドパーパス」について関心をおもちのことでしょう。しかし「パーパス」や「ブランディング」は抽象的で曖昧な概念であることから、ネット記事やパーパスブランディング関連の本を読んでも「いまいち、ふわっとしている」「ビジネスへの具体的な貢献が見えづらい」と感じている方も、多いのではないでしょうか?この記事では、広告代理店と外資系コンサルティングファームの両方のキャリアをもつ筆者が、パーパスブランディングについて「直感的な腹落ち感(右脳的な理解)」と「合理的な納得感(論理的な理解)」の両方を伴った丁寧な解説を目指します。この記事を最後までお読みいただければ、以下の内容が理解できるようになるはずです。
  • パーパスブランディングとは何か?
  • パーパスブランディングが必要な背景とは?
  • パーパスブランディングのメリットとは?
  • パーパスブランディングの始め方と進め方

パーパスブランディングとは?

パーパスブランディングを「腹落ちするレベル」で理解するには、

  • パーパスとは何か?
  • ブランディングとは何か?

の両方の理解することが必要不可欠です。そこで、この二つを個別に説明したあとに「パーパスブランディングとは何か?」について解説していきましょう。

パーパスとは何か?

「パーパス」とは、辞書的には「目的。用途。ねらい。意図」と定義されています。一方で、パーパス関連のビジネス本やネット記事では「パーパス=企業・商品の社会的存在意義」と説明されることが多いようです。

ここで、突然ですがあなたに質問です。

あなたは「パーパスとは社会的存在意義のことです」と説明されて、心の底から腹落ちできたでしょうか? あるいは「”意義”とは、結局のところ何ですか?」と聞かれて、なんと答えるでしょうか?

この問いは、あなたがパーパスブランディングを検討しているなら、極めて重要な問いになります。

なぜならパーパスブランディングは多くの人たちを巻き込んで進めていく必要がありますが、前述した通り「パーパス」や「ブランディング」は抽象的で曖昧な概念であることから「認識のずれ」「足並みのずれ」が起こりやすく、プロジェクトが頓挫する原因になりやすいのです。

これらのことが起こる根本原因は「社会的存在意義」の中に含まれる「意義」という言葉の意味の曖昧さです。

辞書によると「意義」とは「その事柄にふさわしい価値」を指すそうです。

  • 意義=その事柄にふさわしい価値

このように紐解いていくと「存在意義」とは「存在価値」とほぼ同じ意味であることがわかります。そして「価値」とは「相手に提供できる喜びや嬉しさ」のことですから、

「社会的存在”意義”=社会的存在”価値”=パーパス」とは、

  • 「社会に対して、あなたの企業がもたらしたい喜び・嬉しさとは何か?」

に対する「答え」であることがおわかりいただけると思います。

ブランディングとは何か?

続いては「パーパスブランディング」における「もう一つの曖昧な概念」である「ブランディング」について解説していきましょう。

筆者は、ブランディングを以下のように定義しています。

  • ブランディングとは?
    そのブランドならではの独自の役割を築き「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」感情移入を促す取り組み

抽象的で曖昧になりがちな「ブランディング」を理解するためには「概念」と「実体」を切り分けて考える頭の使い方が有効です。たとえば、ガラスでできた円柱形の立体物を前にしたとき、

  • 「水を飲むためのもの」という概念を加えれば、それはコップになります。
  • 「花を生けるためのもの」という概念を加えれば、それは花瓶になります。
  • 「部屋に飾るもの」という概念を加えれば、それはインテリア雑貨になります。

概念と実態を切り分ける

物理的な形は同じでも、その存在に「どんな意味(=概念)を与えるか」によって、用途や選ばれる理由は大きく変わります。

つまり、「モノ」の在り方を決定づけているのは「目に見える実体」ではなく「目に見えない概念」の方なのです。

「概念」とは、英語に訳せば「コンセプト」であり、企業や商品が提供する「価値」「用途」など、ブランドの核をなす要素です。これが「ブランドコンセプト」と呼ばれるものです。

一方「実体」とは製品やサービスのスペックや仕様、接客、広告、ロゴといった具体的ものすべてを指します。

もし「概念=ブランドコンセプト」が曖昧なまま実体を展開すれば、ブランディングの方向性はバラバラになり、一貫性のないブランド体験を生み出してしまいます。

逆に、明確なブランドコンセプトがあれば、あらゆる実体に統一感が生まれ、ブランドは強く揺るぎないものへと成長するのです。

より理解を深めるために、今度はビジネスシーンに応用して考えてみましょう。さらに以下の画像をご覧ください。

概念と実態を切り分ける_無印

賢明なあなたなら、もうお分かりだと思います。

「雑貨を売っている」「服を売っている」「食品を売っている」などの実体が、無印良品の「在り方」を決定づけているわけではありません。なぜならこれらはコンビニでも百貨店でもECサイトでも売っているからです。

無印良品の「在り方」を決定づけているのは「自然体でシンプルで無駄のない暮らし」という「概念」のほうであり、この「概念」が独自で、かつ多くの人からの感情移入が伴うことで初めてブランドとなり、取り扱っている商品(=実体)が売れていくのです。

ここまでお読みになれば、

  • ブランディングとは?
    そのブランドならではの独自の役割(=概念)を築き「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」感情移入を促す取り組み

の意味がご理解いただけたと思います。

パーパスブランディングとは何か?

ここまで「パーパス」と「ブランディング」について、個別に解説してきました。この二つを重ね合わせると、パーパスブランディングとは以下のように定義できます。

  • パーパスブランディングとは
    パーパス(=社会に提供したい喜び・嬉しさ)をもとに、独自の役割(=概念)を築き「できるだけ多くの人に」「できるだけ強い」感情移入を促す取り組み

ここまでの話から、パーパスブランディングを考える上では三つのポイントが重要であることがおわかりいただけると思います。

  1. 「パーパス」の本来の意味は「目的。用途。ねらい。意図」であることから、パーパスブランディングには、組織としての「志」や「意志」が込められている必要がある。
  2. 「パーパス」は「存在価値」であることから、パーパスブランディングは社会や顧客の「喜び・嬉しさ」につながっていなければならない。
  3. パーパスブランディングは、実利を超えて人々の感情に働きかけ、感情移入をもたらすものでないとならない。

パーパスブランディングが必要な背景とは?

ここまでお読みになって「パーパスブランディングとは何か?」については、ご理解いただけたと思います。

続いては「今、なぜパーパスブランディングなのか?」という「パーパスブランディングの必要性」について、以下の五の視点で説明していきましょう。

  • 社会の変化
  • 生活者の変化
  • 従業員の変化
  • 学生の変化
  • 投資家の変化

社会の変化

現在SDGsの機運が広がりを見せ、その認知度は80%を超えています。今では持続可能な社会の実現が社会課題になっているのはあなたもご存じの通りかと思います。

もはやSDGsは中学校や高校の教科書に掲載され、若者世代は「SDGs感覚」が標準装備されています。

今後世代が移り変わっていけばSDGsは今以上に当たり前になっていくのは必然であり、もはやブランドを「市場」に位置付けるだけでなく、パーパスを通して「社会」に位置付けることが、企業の社会的責任になっているのです。

生活者の変化

「#MeToo」や「#BlackLivesMatter」など、今や世論や評判はソーシャルメディアから発信され、企業の風評・ブランドを左右する時代です。

企業の取り組みが「炎上」するか「神対応」と評価されるかは、社会に向き合う姿勢の問題であり、ソーシャルメディアを味方につける意味でも「パーパス」の重要性は増しています。

従業員の変化

日本の生産人口は減少し、多くの企業が人材不足に悩まされる時代が訪れています。

また、新型コロナウイルスの蔓延により副業・リモートワーク当たり前になると、どうしても企業と従業員との関係が希薄になり、離職リスクが増していきます。

これは別の言い方をすれば、従業員に対する企業姿勢が強く問われる時代であり「この企業で働けば、どのような社会を実現できるのか?」を明確にし「企業と個人のパーパスが通じ合った状態」を目指す「パーパス採用」が注目されています。

学生の変化

少子化もまた、日本の生産人口を減少させ、人材不足を加速させていきます。

今や多くの学生が「高い給与水準」や「安定」よりも「社会貢献」や「成長」を重視する時代であり、優秀な学生を採用する上で「パーパス」は不可欠です。

投資家の変化

ESG投資が台頭し、もはや「お金の出し元」が「パーパス」や「サステナビリティ」を求める時代です。例えどんなに多くの利益を出したとしても、社会的な存在価値を明確に説明できない企業は投資家からの資金調達は難しくなり、事業拡大の妨げになります。

パーパスブランディングのメリットとは?

ここまで「パーパスブランディングとは何か?」「パーパスブランディングの必要性」について説明してきました。

続いては、パーパスブランディングがもたらすメリットについて「インナー効果」と「アウター効果」に分けてご説明します。

パーパスブランディングのインナー効果

パーパスを掲げ、パーパスブランディングを推進していけば、リクルーティングにおいて「パーパス採用」を推進することができるようになります。

「パーパス採用」とは明確にパーパスを掲げ、近しい価値観や考えをもった求職者と「共鳴」を通してつながりあう採用のことを指します。

パーパスを掲げれば、同じ志を持った求職者と出会いやすく、組織に強くコミットメントした人材の採用ができるようになります。ひいては、同じ志を持った従業員が増えていくことで、強い組織カルチャーを醸成していけるようになるでしょう。

また「パーパス」を掲げれば、その企業の従業員達は、生活者や社会とともに、より良い社会を実現するという使命に意義と誇りを感じるようになるでしょう。

多くの従業員が売上や利益の追求を超えて、その先にある「人々の生活をより良く変えるために働いているのだ」と思えれば、仕事は今よりも意義あるものに変わり、もっと多くの知恵や工夫を生み出せるようになるでしょう。

パーパスブランディングのアウター効果

パーパスブランディングを通して「パーパス」を広く社会で共有できれば、そのブランドは商品と生活者の壁を越え、社会において果たすべき役割をもち、生活者からの共鳴感情を引き出すことが可能になります。

その結果、その企業は「世界をよりよい場所に変えようとしている」ブランドとみなされるようになり、

  • 「このブランドを購入することは、より良い社会の実現につながっている」
  • 「このブランドを推奨・応援することは、より良い社会の実現につながっている」

という認識を創り上げ「その企業のブランドを使い続けること」に対して、誇りや自尊感情を生み出していくでしょう。

ビジネス目的と社会目的を一致させる

あるミネラルウォーターの事例では、単にブランドが認知されるだけでなく「自分の自尊心を満たしてくれる」という感情移入が伴うことで、積極購入意向率は24%上がる結果となりました。

また、価格プレミアムは30%上がることがわかっています。

このように「水」という、最も機能的な差別化がしづらい商品ですら、感情移入の度合いによって「積極購入意向率」や「価格プレミアム」にこれだけの違いが生まれるのです。

パーパスブランディングは、その企業で働く従業員はもちろん生活者に至るまで、そのブランドに関わるすべての人々を味方につけ、時に社内外の壁を超えた誇りや連帯を生み出します。

その成果は、多くの生活者やステークホルダーが「このブランドだけは、自分にとって特別」と感じる感情移入であり、その感情移入こそが、指名買いされ続けるロングセラーブランドを形づくるのです。

パーパスブランディングの始め方と進め方

これからパーパスブランディングを検討するにあたって、
  • そもそも何から手を付けて、どのように進めていいかがわからない
  • どのような論点を検討すればいいかがわからない
  • 社内だけでは視野が狭くなるので、外部の専門家の視点や意見が欲しい
  • パーパス設定やインナーブランディングで終わらせず、広告やホームページリニューアル、PRなどのアウターブランディング施策までワンストップで支援してほしい

などの課題・要望がありましたら、ぜひお気軽に弊社までご相談ください。

パーパスブランディングは、今後の貴社ブランドの「在り方」を決定づける、極めて重要な取り組みです。

「さあ!パーパスを考えよう!」という機運が生じても「パッ」と思い浮かぶものでもなく組織の「認識」や「足並み」を揃えるのも、簡単なことではありません。

もし弊社にご相談いただければ、パーパスブランディングに関するフレームワークや始め方・進め方、事例などを紹介させていただきますので、お気軽にお声がけください。

※本資料に掲載した当社商標以外の会社名および製品・サービス名、サービスマーク、商標は、各社が保有する商号、登録商標または商標(出願中含む)であり、それぞれを表示するためだけに引用しています。
※出典:小学館 デジタル大辞泉(https://dictionary.goo.ne.jp/jn/
  • また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
  • 各記事における最新の動向につきましては、当社までぜひお問い合わせください。

著者プロフィール

羽田 康祐

羽田 康祐 (はだ こうすけ)

ビジネス開発局

産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。 日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。外資系コンサルティングファームなどを経て現職。 「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『本質をつかむ』『ブランディングの教科書』『パーパスブランディングの教科書』がある。

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