多様なスポーツコンテンツを活用したマーケティングビジネスの可能性を探る。第1回ではスポーツコンテンツとメディアビジネスの関係性を解説。歴史的事例や市場規模、ビジネスモデルを紹介し、活用のヒントを提供。

はじめに

約20年間で私自身が経験してきた「スポーツコンテンツ・マーケティングのマネタイズビジネス」に関して分かりやすく解説していきます。スポーツコンテンツをマネタイズする上で重要となるのは「メディア(テレビや新聞など)」「スポンサー(広告)」「アスリート」「消費者(生活者)」「スポーツ団体」。この関係性を理解することで、スポーツコンテンツのビジネスは面白い視点で捉えることができるようになります。その他にも、密接に関連してくる要素は多岐にわたりますが、第2回以降のコラムを含め随時解説の中で触れながら説明していくことにします。第1回コラムでは、「スポーツコンテンツとメディア」についてメディアの歴史とともに解説することにします。

スポーツコンテンツとメディアビジネス

「スポーツコンテンツ」という言葉が世の中で認知されるきっかけとなった、ひとつの大きな要因は、メディアのスポーツへの取り組みがあったことではないでしょうか。1915年に朝日新聞社が社会貢献の一環でアマチュアスポーツとしての「全国高校野球選手権大会(当時は中等学校)」(※1)を始めたのも、スポーツコンテンツとメディアの関係の始まりの一つと言えると思います。現在では夏の甲子園など多くの生活者が楽しみにしており、その大会から有望な選手が多く輩出されています。その後、1950年代には当時生活者の情報収集メディアとして中心となっていた新聞社の資本によってテレビ局やラジオ局が開設されたことで、ますますスポーツ報道が熱を帯びていき、徐々にスポーツコンテンツとメディアビジネスの関係が構築されていきました。私自身が生まれる以前の話ですが、1960年には「ローマオリンピック」が日本でも放送されたことはテレビ業界では有名です。オリンピックというスポーツコンテンツがビジネスとして活用され、それらが生活者においてもスポーツが更に身近になる要因となりました。そして1964年に日本で初めて開催された「東京オリンピック」は世界70か国に放送(※2)されていたと記されています。高度経済成長の始まりの時期に、戦後復興の象徴として日本で最初のオリンピックが開催されました。柔道、体操、レスリングなど次々とメダルを獲得していく日本人の姿を見て、国民は熱狂し感動を覚え、スポーツコンテンツを自らの成長とオーバーラップしていたと、私の父親が話をしていたことを覚えています。その熱狂ぶりを表すひとつの一例として、当時の日本代表女子バレーボールチームは「東洋の魔女(とうようのまじょ、英: Oriental Witches)」と呼ばれ、全世界に名声を轟かせたことはあまりにも有名です。その日本代表女子バレーボールチームは1964年の東京オリンピックでは、当時世界ランキング1位のソビエト連邦(現ロシア)チームを破り金メダル獲得となりました。

スポーツコンテンツの価値向上

そうした中、紆余曲折がありながらも、メディアにとってスポーツは、いわゆる「キラーコンテンツ化」してきました。メディアはスポーツコンテンツを正確に感動的に「伝える」ことが重要な役割で、その感動を生み出す「競技の場と競技運営」を提供するのは各スポーツ競技団体の役割です。要するに、メディアが制作するのは視聴者や聴取者さらには読者に正確でより感動的な情報や番組であって、当然ながら会場作りや競技運営は必要ないのです。ある意味、比較的「楽に稼げるコンテンツ」となっていたと考えられます。その代わりに、その競技を放送する権利をメディアがスポーツ団体や主催者および運営母体から購入する契約となっているのです。これが、スポーツコンテンツとメディアビジネスの関係です。特に最近ではオリンピックの放映権料は肥大化しているのは周知の事実で、IOC(国際オリンピック委員会)は、2032年までの夏冬6大会における米国内での放映権について、米国のNBC(テレビ局)と76億5千万ドルで契約(※3)していると報道されています。

日本においても、肥大化した放映権料をメディア1社では払い切れない上、競技種目の増加による放送枠確保の効率化の面からも、競技ごとに放送局を決めて放映権料を分担して支払っています。近年では、BS(放送衛星)やCS(通信衛星)も放送枠を分配し、より多くの競技が放送できるようにも対応しています。このBSやCSの発展に寄与している理由のひとつがスポーツコンテンツと言えます。これらの放映権料は莫大ですが、生活者はこのスポーツコンテンツに注目しており、メディアの存在価値と意義を提供できることにつながっています。

ほぼ毎週末のように開催されるゴルフ、サッカーなどをはじめ、卓球、バスケットボール、また最近ではBSやCSなども併用して世界のテニストーナメント、プロ野球およびメジャーリーグ、更には最近活況となってきているeスポーツなど、バラエティ豊かな生活者の趣向を満たすためのスポーツコンテンツは拡大しています。スポーツの価値を認識し、スポーツを育て、価値向上に寄与したひとつの要因はメディアであり、また、メディアの価値向上(発行部数や視聴率・聴取率の向上)のひとつの要因としてもスポーツコンテンツが寄与し、生活者にとっても欠かせないコンテンツとなったのです。

私が小学生の頃の話ですが、両親はどちらも関西出身で、父親が南海ホークス(現:福岡ソフトバンク・ホークス)の大ファン、母親が阪神タイガースの大ファンでした。夕飯時に、セ・リーグの阪神タイガースとパ・リーグの南海ホークス(現:福岡ソフトバンク・ホークス)が同じ時間帯で放送されていた時は、テレビのチャンネルが違うため、二人でどちらのチャンネルを見るかで争っていたのを覚えています。また、二人ともチームの勝敗で機嫌の善し悪しが変わり、例えば母親は阪神タイガースが勝っているとご機嫌で、ごはんのお代わりを入れてくれたものでした。我が家にもスポーツコンテンツがテレビを通して大きく影響を及ぼしていたというエピソードのひとつです。

スポーツコンテンツとメディアの今後

スポーツコンテンツを提供する側とメディア側との間で、放映権料を中心としてビジネスは拡大し、また、テレビと生活者の関係性は、メディアのかたちを変化させながら未来永劫発展し継続していくことになると思われます。最近ではテレビという媒体を離れてオンライン配信が増加していることからも、メディアが激動の時代に入っていると言えます。従来はテレビという媒体の価値を問われていましたが、最近ではオンライン配信と共に、テレビの成長が問われる時代となっています。先日のサッカーワールドカップでもオンライン配信が有名人の解説と共に大変話題になっていました。しかし、夜中にも関わらずテレビの視聴率も30%を超える数字が記録されていました。大画面でリアルに感動を自宅で体験できるテレビの価値がありますし、私もテレビでのリアル視聴により、寝不足の日々を過ごしていました。

 

このさき、テレビよりもオンライン配信が主力となる時代が、近い将来に訪れる可能性もあると考えられます。また、スポーツコンテンツはテレビでのリアルタイム視聴が価値あるものとされていましたが、オンライン視聴が増加することで、テレビの存在価値自体が問われるようになるのか、それともテレビの大画面でのリアル視聴が生活者の興味関心を満足させるのか、今後のメディアとスポーツコンテンツの関係性から目が離せません。いずれにしても、メディアもスポーツも共存してきたことで、切磋琢磨しながらお互いに価値を向上させて育ってきたと言える関係だと思います。

筆者友人(左)ポーランドメディア在籍、筆者(右)

出典:

※1 小学館「日本大百科全書」(1994.01)

※2 NHKアーカイブスカフェ(No.21)「NHK放送史/1964年東京オリンピック制作者座談会」(2008年6月),(https://www2.nhk.or.jp/archives/search/special/detail/?d=news-sports002)

※3 朝日新聞デジタル「五輪開催に突き進むIOCの本音は、放映権料に分配金」(2021年5月10日),(https://www.asahi.com/articles/ASP5B4VPFP5BUTQP00Q.html)

 

  • また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
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著者プロフィール

奥田 東

奥田 東 (おくだ はじめ)

経営・ビジネス戦略担当

2002年入社(前職:エネルギー産業)。入社後20年間営業として顧客の課題解決のマーケティング支援に携わる。製薬会社、カード会社、スポーツ団体などの支援を中心にビジネスの拡大をサポート。特にスポーツビジネスに関しては、日本唯一で最大の国際テニストーナメント運営を主導する立場として現在も活躍。またアスリートを起用した顧客ブランディングサポートも担っている。スポーツコンテンツビジネスに関しては、当社随一の経験者で、スポーツ界においても世界に幅広い人脈を有する。

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