市場が成熟し選択肢が溢れる中、価格や機能だけで差別化するのは困難です。成功の鍵となるのが、顧客が競合に乗り換えにくくなる強い愛着=ブランドロイヤリティです。
本記事では、価値提案の明確化、親近感づくり、ユーザー教育、コミュニティ形成、シリーズ化、利便性向上、ゲーミフィケーション、One to Oneコミュニケーション、ロイヤリティプログラムの9手法を解説し、相乗効果で長期的な競争優位を築く方法を紹介します。

はじめに|ブランドロイヤリティが利益を生む理由と背景

ビジネスの世界では、商品やサービスの機能や価格だけで競争優位を築くことが年々難しくなっています。

市場が成熟化し、似たような選択肢が溢れる中で、顧客が「迷わず選び続ける」理由を持つブランドはごくわずかです。

しかし、ブランドロイヤリティが高い顧客は、多少の価格差や利便性の違いでは競合ブランドに乗り換えません。それどころか、周囲に積極的に推奨し、長期的な売上や利益を支える「ブランドの資産」となります。

本記事では、このブランドロイヤリティを高めるための具体的な9つの手法をご紹介します。

ブランディングやマーケティングの現場で今すぐ活用できるアプローチを厳選していますので、自社の状況に合わせてぜひ取り入れてみてください。

※参考:ブランディングとは?意味・目的・効果を「感情価値」から理解する戦略入門

ブランドロイヤリティを高める向上施策9選|選ばれ続ける仕組み

施策1|ブランド提供価値の明確化:パーソナリティ×物語×体験の設計

ブランドロイヤリティを高めるための出発点は、ブランドが顧客に提供する価値(=喜び・嬉しさ)を明確にすることです。

価値提案が不明確なブランドは、価格や利便性といった条件でしか勝負できず、競合と同質化しやすい存在になってしまいます。一方で、「このブランドだからこそ得られる」と顧客が感じられる価値が確立されていれば、多少条件が劣っても選ばれ続けます。

そのためには、次のようなポイントが重要です。

 

◎ ポイント1|ブランドパーソナリティを言語化し全接点で一貫

価値観・世界観・態度など、ブランドが持つ「個性」を明確にし、すべての顧客接点で一貫して表現します。

 

◎ポイント2|ストーリーテリングで“選ぶ理由”を可視化

単なる商品説明ではなく、ブランドの背景や開発者の想い、社会的使命など、共感を生む物語を語ることで、顧客の心をつかみます。

 

◎ ポイント3|ブランド体験価値(CX)で心地よい驚きを設計

商品やサービスの利用時に「心地よい驚き」や「嬉しい発見」を提供することで、愛着形成を加速させます。

感情移入を促すブランドは、「自分らしさを表現する手段」になります。こうした心理的な価値こそが、長期的なブランドロイヤリティの土台となります。

施策2|ブランドアフィニティ強化:親しみ×継続コミュニケーション

ブランドロイヤリティを強化するうえで欠かせない要素の一つがブランドアフィニティ(親近感)です。

顧客が「このブランドは親しみやすい存在だ」と感じることで、単なる商品・サービス提供者から、生活や価値観を共有する伴走者のような存在へと昇華します。

スターバックスでは、店員がカップにメッセージを書いたり、好みを覚えて提案してくれたりします。こうした何気ない行動が「自分はこの店の特別な顧客だ」という感覚を与え、ブランドへの愛着を深めています。

親近感は、一度で築かれるものではなく、継続的なコミュニケーションによって少しずつ醸成されます。この「心理的な身近さ」が、ブランドを「他人事」から「自分事」に変える重要な要因となります。

 

施策3|ユーザーエデュケーション:使いこなしでスイッチング抑制

ユーザーエデュケーションの目的は、顧客が商品やサービスを深く理解し、使い慣れしてもらうことで、他ブランドへの乗り換え(ブランドスイッチ)を心理的にも物理的にも起こりにくくすることです。

たとえば、スマートフォンのiPhoneユーザーとAndroidユーザーの関係を考えてみましょう。

どちらのユーザーも、一度使い方に慣れてしまうと、別のOSに乗り換えることに大きな抵抗を感じます。これは、使い慣れた操作体系や設定、機能の知識が「スイッチングコスト」として働くからです。

このスイッチングコストを意図的に高めるために有効なのが、教育型アプローチです。具体的には、以下のような施策が挙げられます。

 

◎ 教育1|ガイド/チュートリアル整備(動画・マニュアル)

初心者から上級者まで活用できるマニュアルや動画チュートリアルを整備する。

 

◎ 教育2|活用シーン提案で“日常利用”を増やす

顧客が気づいていない機能や活用シーンを紹介し、日常的に利用する場面を増やす。

 

◎ 教育3|ワークショップ・ウェビナーで体験学習を提供

顧客が実際に体験しながら学べる機会を提供する。

顧客は、そのブランドを使いこなすほど、その利便性や快適さが日常に組み込まれ、他ブランドへの移行はますます面倒になります。

結果として、ユーザーエデュケーションはブランドロイヤリティの深化と顧客生涯価値(LTV)の向上につながるのです。

施策4|ユーザーコミュニティ:オンライン×オフラインの共創場づくり

ユーザーコミュニティの形成は、ブランドロイヤリティを飛躍的に高める有効な手段です。

顧客がブランドを好きになる理由の一つは、そのブランドを通じて生まれる人とのつながりです。ファン同士が交流できる環境を提供すると、「同じブランドを愛する仲間」という一体感が生まれ、ブランドは単なる商品やサービスを超えて「居場所」になります。

近年は、SNSやオンラインプラットフォームの発達により、コミュニティ形成のハードルが大幅に下がっています。InstagramやX(旧Twitter)、Facebookグループなどを活用すれば、地理的な制約を超えて世界中のファンとつながることが可能です。

さらに、オフラインイベントやファンミーティングを組み合わせると、オンラインで築いた関係性をより深いものにできます。重要なのは、企業が一方的に情報発信するのではなく、顧客が主役として参加できる場を設計することです。

施策5|シリーズ企画で単純接触効果を最大化(収集・継続導線)

心理学でいう「単純接触効果」によれば、人は接触回数が多い対象に対して好意を抱きやすくなります。つまり、ブランドに触れる機会が増えれば増えるほど、自然と愛着が深まっていくのです。

この効果を意図的に活用する方法が、商品やキャンペーンのシリーズ化です。シリーズ化には以下のようなメリットがあります。

  • 継続的な関心の喚起:「続きが気になる」「次も欲しい」という期待感を生み出す
  • コレクション欲の刺激:アイテムや特典を揃えたくなる心理を活用できる
  • 接触頻度の維持:定期的に顧客との接点を持ち続けられる

事例として有名なのが、長年続くパンメーカーの「春のパン祭り」。毎年テーマの異なる白いお皿をプレゼントするこのキャンペーンは、「集めたい」というコレクション心理を刺激し、長期的なロイヤリティの維持に成功しています。

また、コンテンツマーケティングの分野でも、雑誌やWebメディアの連載記事や動画シリーズは、次回作への期待を生み出し、定期的なアクセスや購買を促します。

施策6|利便性(UX)向上

多くのマーケティング施策では、機能や品質の向上に注目しがちですが「どれだけ便利に使えるか」もまた、顧客の継続利用を大きく左右します。

その代表的な事例がAmazonです。欲しい本や商品を検索すれば一瞬で見つかり、ワンクリックで購入できるシンプルなUI。さらに、レコメンド機能によって興味のありそうな商品を提案してくれるため、「探す手間」がほとんどありません。

配送スピードや返品のしやすさも含め、Amazonは徹底的にUX(ユーザー体験)を磨き上げることで、多くの顧客にとって「無くてはならない存在」になっています。

利便性の向上は、顧客にとってブランドを選び続ける理由になります。

なぜなら、便利さは一度体験すると元に戻れない特性を持つからです。他社が同等の商品やサービスを提供していても、「あちらのほうが便利だから」という理由だけで選び続けてもらえるのです。

 

施策7|ゲーミフィケーション:バッジ・称号・長期ストーリーで継続

ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素や仕組みを非ゲーム領域に応用し、ユーザーのモチベーションや参加意欲を高める手法です。ブランドロイヤリティ向上においても、このアプローチは非常に効果的です。

本質は、ブランドにまつわるストーリーや達成体験を設計し、顧客をその世界観に巻き込むことです。単なる購入や利用ではなく、「遊び感覚」や「達成感」を伴う体験が、ブランドへの感情移入を促進します。

代表的な事例がウェアラブル端末や健康管理アプリです。例えばスマートウォッチの歩数計は、日々の歩数を記録するだけでなく、友人と歩数を競い合えたり、一定の歩数を達成すると「バッジ」や「称号」がもらえる仕組みを持っています。

中には、歩数を積み重ねることで日本地図を制覇できるといった、長期的なストーリーを楽しめるサービスもあります。

このような仕組みは、「次はもっと頑張ろう」という意欲を生み、継続利用を自然と促します。ブランド側にとっては、顧客との接触頻度が増え、愛着やコミュニティ内での共有が加速する効果もあります。

 

施策8|One to One:データ起点のパーソナライズで“自分ごと化"

One to Oneコミュニケーションとは、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされた情報提供や提案を行い、「自分だけ特別に扱われている」という感覚を生み出すアプローチです。

ブランドロイヤリティを高めるうえで重要なのは、顧客が「このブランドは自分を理解してくれている」と感じることです。そのためには、過去の購買履歴、行動データ、アンケート回答などを活用し、顧客ごとに最適化された体験を提供することが欠かせません。

重要なポイントは、データの活用を“売り込み”ではなく“価値提供”として感じさせることです。あくまで顧客の利便性や満足度を高めるためのパーソナライズであることを意識し、自然で心地よいコミュニケーションを心がけましょう。

このようなOne to Oneの取り組みは、特別感と信頼感を醸成し、長期的なロイヤリティ形成につながります。

施策9|ロイヤリティプログラム設計:目標可視化×体験特典×セグ別運用

ロイヤリティプログラムとは、ポイント制度や会員特典などを通じて顧客の継続利用を促す仕組みです。航空会社のマイレージやECサイトのポイント付与、会員限定セールなど、幅広い業界で活用されています。

ポイント制度の最大のメリットは、顧客に「貯めたい」「使いたい」という動機を生み出し、再来店や再購入のきっかけを作れる点です。

しかし、ロイヤリティプログラムには限界もあります。単に「気づいたらポイントが貯まっていた」という状態では、ブランドへの愛着は育ちません。

運用で成果を出すためには、以下の条件が重要です。

 

◎ 設計1|“あと〇〇で特典”の可視化で行動喚起

顧客が「あと〇〇ポイントで特典獲得」という状況を常に認識できるようにすることで、利用促進につながります。

 

◎ 設計2|値引きではなく“体験”を特典化

単なる値引きや金券ではなく、限定イベントやオリジナルグッズなど、ブランドならではの価値を付加します。

 

◎ 設計3|ロイヤル/ライト別の段階設計で関係深化

ロイヤル顧客には特別感を、ライト顧客には参加ハードルの低い特典を用意し、段階的に関係を深めます。

うまく設計されたロイヤリティプログラムは、短期的な売上だけでなく、長期的なブランドロイヤリティ強化にも寄与します。

【FAQ】ブランドロイヤリティ|上げ方・ゲーミフィケーション・会員設計

Q1: ブランドロイヤリティを高めるための最も重要なポイントは何ですか?

A1: ブランドが顧客に提供する価値を明確にすることが重要です。顧客が「このブランドだからこそ得られる」と感じられる価値が長期的な愛着の土台となります。

 

Q2: ゲーミフィケーションはどのようにブランドロイヤリティに影響しますか?

A2: ゲーム要素を応用し、顧客の参加意欲や達成感を高めることでブランドへの感情移入を促し、継続利用とコミュニティ形成を自然に促進します。

 

Q3: ロイヤリティプログラムの効果的な運用には何が必要ですか?

A3: 顧客が目標達成状況を認識しやすくし、特典にブランド体験を組み込み、顧客セグメントごとに設計することが成功のカギです。

まとめ|9つの施策でロイヤリティを高める

本記事で紹介した9つの手法は、それぞれ単独でも効果を発揮しますが、組み合わせることで相乗効果を生み出します。
たとえば、ブランド提供価値の明確化とユーザーコミュニティの形成を同時に行えば、顧客の共感と参加意識を一度に高められますし、One to Oneコミュニケーションとロイヤリティプログラムを連動させれば、特別感と継続意欲を両立できます。

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自社が「何を売るか」ではなく「顧客にどんな価値を届けているか」を、チーム全員の共通言語に。

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著者プロフィール

羽田 康祐

羽田 康祐 (はだ こうすけ)

ビジネス開発局

産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。 日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。外資系コンサルティングファームなどを経て現職。 「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『本質をつかむ』『ブランディングの教科書』『パーパスブランディングの教科書』がある。

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