デジタル CX/DX 効果検証 2023.09.11
「データ分析って何ですか?」~データアナリストに聞いてみた!

目次
はじめに
そもそも分析って、何ですか?
試しに分けてみると?
どうやって分ければいいんですか?
最終的に、どうすればいいんですか?
まとめ

はじめに

東方 真帆 データソリューション部 データエンジニア  趣味:スーパーで他の人の夕飯を予想すること

みなさま、初めまして!

朝日広告社のデータソリューション部で働いている、新卒二年目の東方 真帆(ひがしかた・まほ)です。

今回から、「データアナリストに聞いてみた!」シリーズを連載していきます。

このシリーズを通して、データの分析方法や活用の仕方について、みなさまにわかりやすくお伝えできれば幸いです。

まず私の自己紹介をします!

私は大学では社会心理学を専攻し、その過程でマーケティングに興味を持つようになり、広告業界で働くことを決心しました。

これまで文系一筋で、データやエンジニアリングといったものとは縁遠い生活をしていたのですが……。

朝日広告社に入社して配属されたのはなんと、「データソリューション部」というデータを専門的に扱う部署でした!

データソリューション部は、データを収集するシステムを構築し、使えるデータを抽出・加工する「データエンジニアチーム」と、抽出したデータを分析して戦略案を考える「データアナリストチーム」で構成された部署です。

現在、私はデータエンジニアチームとして、データの取扱方法を日々必死に勉強しています!

先輩方がわかりやすくレクチャーしてくれるので、最近はデータを扱うのが楽しくなってきました。

また、学んでいくうちにデータ分析の領域についても理解を深めたいと思うようになり、そこで今回、データアナリストチームの中野さんに「データ分析とは何か」について聞いてみることにしました!

中野 拓馬  データソリューション部 データアナリスト  趣味:スーパーで買ったアボカドの栽培

そもそも分析って、何ですか?

東方:本日はよろしくお願いします! さっそく本題に入りますが、そもそも分析って何ですか? 蓄積したデータを可視化するところまでは普段よくやっているのですが、そこから分析を進めようとすると、何から手をつけていいかわからず……。

分析とは、分けること

中野:とても良い質問ですね! 結論から言いますと、分析とはその名の通り、「分けること」です。

東方:分ける、ですか?

中野:そうです。実は、「分析」という言葉は「分解」や「分割」とほぼイコールの言葉なのです。

東方:えっと……、つまりはどういうことでしょうか?

困難は分割せよ

中野:今から説明しますね。ところで、東方さんは「困難は分割せよ」という言葉を聞いたことはありますか?

東方:あ、聞いたことあります! 難しい問題は、なるべく小さな問題に切り分けようという意味でしたっけ?

中野:その通りです! 同じようなニュアンスの格言はいくつかありますが、この発想自体は「我思う故に我あり」で有名な哲学者のデカルトが、『方法序説』という本の中で「難しい問題を解く方法」として紹介したのが原典と言われています。

東方:へえ。そんなに昔からある概念だったのですね。

中野:そうなんです。もうわかりましたね。分析とは、「難しい問題を、小さな問題に切り分けること」なんです。そして、この行為をデータを使って行えば、「データ分析」になります。そこはまったく変わりません。

東方:なるほど。わかったような、わからないような……。

中野:それでは今から具体的に実践していきましょう。東方さん、そもそも今は何の分析に悩んでいたんですか?

東方:実際の案件ではなく、社内の新人研修の課題なのですが、売上が下がっている架空の飲食店チェーンのデータを分析して、売上向上の施策を考えなければいけないんです。

中野:なるほど。すでにダミーの売上データは配布されているのですね。では、「データ分析」をしてみましょう。

試しに分けてみると?

中野:まず売上が下がっている原因は何だと思いますか? 東方さん、何か思いつくことはありますか?

東方:うーん、今のところ見当もつきません……。

データを使って分けてみる

中野:そうですよね。これはとても難しい問題です。ですから小さな要素に分けてみましょう。たとえば、全体の売上を、エリアごとの売上に分けてみたらどうでしょうか。

東方:手元のデータですと……、あっ、関西エリアだけが大きく下がっていて、それ以外の地域はそんなに変わっていません。

中野:これで、「会社全体の売上が下がった理由」という大きな問題の原因は、「関西エリアの売上が下がっていること」だと発見できましたね。問題を小さく分けたことで、一歩前進することができました。これが分析の本質です。

東方:なんだか要領がつかめてきた気がします!

中野:それでは、「関西エリアの売上低下」を探るために、次はどのように分けてみましょうか?

東方:ええと、そうですね……。来店者の性別のデータもあるので、とりあえず男性客の売上と女性客の売上に分けてみることにします。

東方:……あれ、どちらも売上が約10%下がっていて、あまり男女で違いはなさそうです。失敗ですかねえ?

「わからなかった」は重要な知見

中野:いえいえ、それはそれで重要な発見です。少なくともこれで、「男女どちらか一方の売上が大きく下がったわけではない」という事実がつかめました。何もわからなかったときと比べたら大きな前進です。実際、「売上低下は男性客に原因があるのでは?」という意見が出た際に、きちんとデータを出して反証ができるようになりましたね。

東方:なるほど! 「この観点では原因が見つからなかった」という知見が得られたわけですか。

中野:そうです。この結果は忘れないよう記録しておき、また違う分け方を考えてみましょう。

東方:違う分け方……。たとえば、メニュー別の売上とかでしょうか?

中野:それもいいアイデアですね。ほかにもたとえば、曜日別の売上や、店舗別の売上、場合によっては曜日別と店舗別の組み合わせでの分け方など、分けようと思えば無数のパターンを試すことができます。

東方:えええ……。何から手を付ければいいのかわからなくなってきました……。

中野:そうなりますよね。でも、いくつか分けるための方針はあります。

どうやって分ければいいんですか?

1.先行研究に従う

中野:まずは「先行研究に従う」と良いと思います。簡単に言えば、「セオリー通りやってみる」ということですね。これまでたくさんの人がマーケティングの研究をしていますし、飲食店チェーンの売上改善に向けて試行錯誤しています。そういった先人の知恵を借りるというのが第一ステップです。




中野:たとえば飲食店の売上の分析では、メニュー別の売上を見てみる「ABC分析」という手法や、顧客ごとの購入間隔や購入頻度を分析する「RFM分析」などがセオリーです。このあたりは第一人者の本を読んだり、論文などを検索して、知見をストックしていくことがオススメです。

東方:いろんな分析の仕方があるんですね!

中野:もちろん社内で似たような案件を扱っている人に意見を聞くというのも有効です。個人的には、まずは売上を「購入客数」×「平均購入頻度」×「平均客単価」の掛け算で分解して、さらに「購入客数」を「人口」と「ターゲット割合」、「認知率」、「購入率」の掛け算にすることが多いですね。このように分解すると、課題となる要素に対しての取るべきアクションがわかりやすくなります。

東方:なるほど! 購入頻度が低かったらクーポンなどで来店を促したり、認知率が低かったらマス広告を打つといったイメージですね!

中野:その通りです!

2.仮説を持つ

中野:二番目の方針は、「仮説を持つ」です。「ここらへんに原因があるんじゃないかな」と当たりを付けてみるということです。たとえば、売上が下がった背景について、課題では何か触れられていましたか?

東方:そういえば課題説明の際、架空のクライアントさまの声として「平日のお客さんが少なくなったような気がする」という記載がありました。そうか、「平日売上と休日売上」に分けてみれば、本当にそうなっているかはっきりしますね!

中野:はい。まさにそれが「仮説を持つ」ということです。どのように分ければいいか、すぐに思いつきますね。今回は新人研修用の課題なので、背景がきっちり説明されていたと思いますが、実際にはクライアントさまの声をしっかり聴いて、自分で引き出す必要があります。

東方:よくわかりました!

中野:実際の案件では、SNSで生活者がどんなことを話題にしているのか調べたり、自分で現場に足を運んで、原因がどこにあるのか自分なりに考えることも重要です。データがあるとついついデータだけを見てしまいがちですが、データからわかることはほんの一部に過ぎません。クライアントさまの商品を実際に試してみて、生活者の気持ちを想像してみると、分析のヒントがたくさん見つかると思いますよ。

3.統計学やコンピューターの力を借りる

中野:もうひとつは、多変量解析や機械学習といった、データから知見を引き出す技術を活用するという方法です。これには統計学や情報工学の知識が必要になってきますが、どんな要素が売上に影響を与えているのかを多量のデータから導き出したいときに、とても有用です。

※表示されているデータは本記事用のダミーデータです。

東方:おお、一気に「分析」っぽくなってきました! これは「R」を使っているのですか?

中野:はい。統計解析用プログラミング言語のRです。状況に応じて「Python」といったほかのプログラミング言語を使うこともあります。Excelだととても面倒だったり、そもそも不可能な分析などが簡単にできるので、ぜひ使うことをオススメします。

東方:SQL(※データベース用言語)は得意になってきたんですが、Rまではなかなか……。

中野:今日は「分析の考え方」がテーマなので、Rを使った分析は僕が手伝います。具体的な使い方は、また別の機会にレクチャーします! 逆に、SQLはわからないので、別の機会に教えてください。(笑)

東方:ありがとうございます! 任せてください!

最終的に、どうすればいいんですか?

(アドバイスを踏まえて分析作業中の東方)

中野:……さて、分析は大体終わりましたでしょうか? 

東方:はい。ざっくり図にまとめると、こうなりました!

東方:売上低下の主な原因は、関西エリアの売上低下にあることがわかりました。また、課題に記載されていた背景に合わせて平日の売上と休日の売上に分けてみたところ、やはり平日の売上が大きく減少していることが判明しました。加えて、中野さんに出してもらった機械学習の結果から、平日の売上に大きく貢献しているのは「会社員」の「カレーの売上」ということがわかり、実際にこの部分での売上が下がっていることも確認できました。

中野:なるほど。つまり、関西エリアの会社員が、平日にカレーを食べに来なくなったことが売上減少の原因なのですね。なぜ食べに来なくなったか、理由はわかりますか?

東方:はい。別の資料として渡されていた地図情報を確認すると、他社のカレー専門店が関西エリアに増えているようです。おそらく、これが大きな要因だと思います。

中野:だいぶ絞り込めましたね。こうやって「会社全体の売上が低下した」という大きくあいまいな問題を小さく切り分けていくことで、具体的な課題が発見できるようになります。また、データを使って定量的に分析すると、具体的にどの部分で売上がいくら下がったかが明確になるので、何がより大きな課題なのかが判断しやすくなりますね。

東方:だんだんと分析のコツがわかってきました。でも、この結果からどうすればいいんでしょうか?

戦略を立てる

中野:分析して課題が見つかったのであれば、次はその解決方法を模索する必要があります。

東方:たしかに、「売上低下の原因がわかりました。でもどうすればいいかわかりません」では、意味がないですもんね。

中野:そうです。そのためにもまずは戦略を考える必要があります。戦略とは、目指したいゴールと、分析でわかった現状の間にある課題を解決するための大まかな作戦のことです。

中野:「関西エリアの会社員が平日にカレーを食べに来なくなったことで、会社全体の売上が減少している」という課題に対して、どんな解決方法が考えられますか? 大まかで構いません。

東方:えっと、「カレーを今よりおいしくして、もっと食べに来てもらえるようにする」でしょうか?

中野:まず思いつくアイデアはそれですよね。それも一つの答えです。ただ、仮にクライアントさまに「うちはカレーがメインじゃないから、カレー専門店に勝てるようなカレーを作るのは、今の値段では無理」と言われたらどうしますか? 

東方:うっ、そう言われたら困っちゃいますね……。

中野:ほかの案はありますか? たとえばカレー以外に目を向けるとどうでしょう。

東方:あっ、「落ちたカレーの売上より大きい金額を、カレー以外のメニューで追加で稼ぐ」という方法もありますね!

中野:はい。そういった案も考えられます。最初の「カレーを今よりおいしくして、もっと食べに来てもらえるようにする」という方法は、「会社員のカレーの売上を上げる」という目標に対して考えた戦略だったと思います。一方、二つ目の案は「会社員の売上全体を上げる」という、より上位の目標に対する戦略の一つになっていますね。

中野:このように戦略を考えるときは、なるべく上位の目標に目を向けると、さまざまなアイデアが出やすいです。ほかにも「会社員以外を狙う」、「休日の売上を上げる」、もっと言えば「関西エリア以外のエリアで売上を増加させる」といった戦略も考えられます。ここはいったん網羅的に考えてみるとよいでしょう。事前にしっかりと分解していれば、自ずとアイデアは湧いてくるはずです。

分析は続く

東方:結局、どの戦略が一番いいのでしょうか?

中野:戦略を選ぶにあたって重要なのは、「クライアントさまのリソース(お金、時間、人などの資源)」がどれくらいかということです。たとえば「カレーを今よりおいしくして、もっと食べに来てもらえるようにする」戦略は、売上が下がった直接の原因を解消する戦略なので、成功すれば手っ取り早いです。ただし先ほども述べたように、競合のカレー専門店よりカレーをおいしくするには莫大なお金がかかる可能性があります。場合によってはカレーの改善はあきらめて、ほかのところで勝負するほうが、リソースがあまりかからずに大きな成果が見込めるかもしれません。戦略立案にあたっては、こういった費用対効果を考える必要がありますね。

東方:なるほど。ここからさらに、さまざまなことを検討する必要があるのですね。

中野:はい。今回は研修課題なので資料のどこかに記載されていると思いますが、実際にはクライアントさまとよく話し合って、重視していることや使用できるリソースの状況などを確認していかなければなりません。その際、これまで分析したデータや情報が判断材料としてとても役に立ちますよ。

東方:そういった打ち合わせを繰り返して、最適な戦略を考えていくんですね!

中野:そうです。戦略を考えるにあたっても、また新たな問題が出てくるでしょう。そのときが、新しい分析の始まりです。

東方:分析は一度やったら終わりというものではないのですね。

中野:はい、とても地道で時間のかかる作業です。(笑) ただ、分析を繰り返すことで、複雑な問題が少しずつシンプルになっていきます。分析を通して、具体的に取るべきアクションが明確になっていくのは楽しいですよ。

東方:本日はありがとうございました! 教えていただいたことを踏まえて、課題を終わらせられるよう頑張ります!

まとめ

  1. 分析とは、「難しい問題を、小さな問題に切り分けること」。データを使えば「データ分析」。
  2. 分け方のパターンは無数にある。
  3. まずは先行研究や仮説をもとに分ける。
  4. 統計学やコンピューターの力を使って分ける手法もある。
  5. 分析後には、戦略を立てる。
  6. 分析は何度も繰り返していく。

次回もよろしくお願いします!

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  2. また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
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著者プロフィール

プロフェッショナルズ中野 拓馬(なかの たくま)

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「出典:朝日広告社「アスノミカタ」●年●月●日公開記事」

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