ウェルビーイング アクティブシニア デジタル 2024.04.17
【データ分析から探るシニア像】~デジタルシニアってどんな人?~

コロナ禍がシニア世代のデジタル化を加速させる
目次
はじめに
シニア層のデジタル化が加速
デジタルシニアって具体的にどんな人?
各クラスタの「趣味」を確認してみる
【解説編】各クラスタを「趣味」でコレスポンデンス分析
【解釈篇】各クラスタを「趣味」でコレスポンデンス分析
おわりに

はじめに

内⽥ 拓磨(うちだ・たくま) データソリューション部データアナリスト
幼少期の思い出: 休み時間にひたすらドッジボールをしていたこと


内⽥︓皆さまこんにちは︕ 朝⽇広告社データアナリストの内⽥です。
今回から、「データ分析から探るシニア像」シリーズを連載していきます。
今回掘り下げていくテーマは、 「デジタルシニアってどんな人?」 です︕

桐⼭ 忠介(きりやま・ただすけ) ストラテジックプランニング部部⻑
入社以来、マーケティング・プランニング部門に一貫して携わる。R&D機関を受け持つ社内機関「サステナラボ®」メンバー。ASAKOシニアクラスタを開発・発表。
幼少期の思い出: 自動車を運転したくて、ダンボールでハンドルを作って街を歩いていたこと


桐山:みなさまこんにちは︕ 朝⽇広告社ストラテジックプランナーの桐山です。

桐山:今回は私の専門領域であるシニアマーケティングに焦点を当て、内田さんと協力して、シニアの多様なライフスタイルやデジタルリテラシーの普及などについて、データから傾向を読み解り、シニア層の理解を深めることを目指していきます。

内田:シニア層への理解は、まだなかなか追い付いていない部分もありますが、ぜひよろしくお願いします!

シニア層のデジタル化が加速

桐山:人口に対するシニアの割合は年々増加していますが、その中でもデジタルシニアと呼ばれる方々が増えていることを知っていますか?

内田:なんとなくは知っていますが、詳しくは理解できていないです…

桐山:デジタルシニアとは求める情報をインターネットで調べたり、SNSを使って友人とコミュニケーションをとるシニア世代を指します。スマホやPC、タブレットといったデジタルツールを複数台持ち、現役の若者世代にも劣らないITスキルやSNSスキルを持っている人も多く見られます。

内田:そうなのですね!  確かに私の祖母も数年前にスマホを買って、今ではLINEで友達と連絡をとったり、好きな演歌をYouTubeで見ていたりします!

桐山:そう、シニアの中でも、デジタル技術を日常的に使いながら生活を送っているシニアが増えているんです。
実際に、総務省が実施した*1「令和4年通信利用動向調査の結果」を見ると、2020年から、シニア層(60歳以上)のインターネット利用率は右肩上がりに上昇しています。

*1  総務省,「令和4年通信利用動向調査の結果」(2023年5月29日),(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/230529_1.pdf

内田:60代未満は横ばいですが、60代以降は利用率が伸びていますね。

桐山:2020年の60代ネット利用率は83%ですが、2年で約4ポイント上昇していて、シニアのデジタル化が進んでいることが分かりますね。そして今後もシニアのデジタル化は加速していくことが予想されます。

デジタルシニアって具体的にどんな人?

内田:デジタルシニアが増えていることは理解できましたが、デジタルシニアって具体的にどのような方々なのでしょうか?
桐山:いい質問ですね。シニアへのデジタルプロモーションの重要性が高まる中で、デジタルシニアへのターゲット理解は非常に重要になります。
朝日広告社ではシニアを十把ひとからげにしないために「ASAKOシニアクラスタ調査™」を実施しています。その調査は、シニア層(60歳以上)1,000人に対し、趣味や幸福度、ネット利用状況などについて調査・分析をしました。似た傾向のデータをグルーピングできる機械学習の一つであるクラスタ分析を実施し、シニア層を6つのグループに分類しました。

→シニア層のクラスタ分類についての詳細はこちら
 *ソリューション資料ダウンロードページヘ(https://www.asakonet.co.jp/download/)

以下、6クラスタの概要を説明します。

① 世話好きシニア

趣味、旅行にと活動的で、その楽しみには人との触れ合いや応援などの人との交流にも及んでいることが特徴。情報収集にはSNSなどデジタルを活用し、ネットリテラシーは高い。

② つつまシニア

日々の生活を波風立てずに穏やかに暮らすことを重視し、全体的につつましい生活を送っており、インドア系の活動が目立つ。幸福度、健康状態、余暇を楽しむ金銭的余裕、いずれもシニア層全体と比べて低調です。

③ 我が道シニア

シニア層の中では60代前半が3割弱を占めており、年代が若めの層。人生謳歌の意識が高く、自分の人生を充実させることに集中しています。

④ ノスタルシニア

若かりし頃の価値観を重視する層で、若い頃や自分の経験を最も信用している。シニア層全体に比べ、女性の割合が高く金銭的余裕は低調だが幸福度は平均的です。

⑤ 風まかせシニア

自然に年齢を重ね、なすがまま、成り行きに身を任せる傾向がある層。情報入手やネットリテラシーは他の層と比べると低い傾向。

⑥ 今でしょシニア

好奇心が旺盛で、過去を省みるよりも「今」を大切に生きる意識が高く、活動的な層。情報入手の意識、ネットリテラシー、SNSの利用度、全て高い傾向にあります。

桐山:6つのクラスタのうち、デジタルリテラシーが高いのは「世話好きシニア」と「今でしょシニア」でした。

内田:活動的で人とのつながりを重視する「世話好きシニア」と、いつまでも好奇心旺盛な「今でしょシニア」がデジタルシニアってことですよね。アクティブなシニア層だからかなんだか分かる気もします。

桐山:そうなりますね。デジタルシニアの2クラスタをより理解するため、彼らの趣味を見てみましょう。

各クラスタの「趣味」を確認してみる

桐山:次に、各クラスタごとに「現在していること(趣味)」を見てみましょう。

※3

内田:どのクラスタも「テレビ」や「国内旅行」が上位を占めていますね。

桐山:まぁテレビになじみのある世代ですし、時間の余裕もあるため国内旅行が人気なこともうなずけますね。ただこれではシニア層全体の漠然とした理解にとどまってしまいますね。
もっとクラスタごとに「現在していること」の傾向の差を把握したいですね。

内田:それならぴったりの分析があります! それでは、カテゴリー同士の関連性や傾向を視覚的に理解できる統計分析手法の一つである「コレスポンデンス分析」を実施してみるのはどうでしょうか。

桐山:各クラスタの傾向が一目で把握できるのはいいですね。ぜひやってみましょう!
ただ、コレスポンデンス分析は専門用語であるため簡単な説明も合わせてお願いします。

【解説編】各クラスタを「趣味」でコレスポンデンス分析

*機械学習の専門的な解説のため、分析結果の解釈だけを知りたい方は、次の「【解釈篇】各クラスタを「趣味」でコレスポンデンス分析」へお進みください。

内田:コレスポンデンス分析は、クロス集計表を散布図にして各カテゴリーの関連性を見やすく表示するものです。通称「コレポン」と呼ばれます。以下が、分析結果を可視化した図になります。

桐山:可視化されているのは分かりますが、これってどういうふうに読み取ればよいですか?

内田:どう読み取ればいいか難しいですよね。まず青色の三角が「クラスタ名」を表し、ピンク色の丸が「現在していること」を表しています。
そして、コレポンの読み取り方としては、
① 原点(0,0)からの方角が同じデータは、似たような特徴がある。
② 原点(0,0)からの距離が離れているほど、他のデータと異なる特徴がある。

内田:上記の見方で傾向の似ているピンク色の丸と青色の四角をグルーピングし、解釈していきます。

【解釈篇】各クラスタを「趣味」でコレスポンデンス分析

内田:上記の点を踏まえ、分析結果を解釈していきます。

桐山:左右に矢印が表示されているけど、これは何を意味しているのでしょうか?

内田:横のx軸、縦のy軸に意味を与えることで、コレスポンデンス分析の図をより解釈しやすくなります。ただし、軸に対して適切な意味を付けることは簡単ではなく、今回でいえば、y軸の方向は各プロットに共通する意味を特定するのが難しいです。一方で、x軸については、最も左に配置されたプロットが「テレビ」「ペット」「終活」であり、最も右に配置されたプロットが「ボランティア」「海外旅行」「楽器演奏」であることが確認できます。この傾向から、x軸の左側は「個人的な行動」を示し、右側は「集団的な行動」を示していると解釈できます。

桐山:なるほど! まずは可能な範囲で軸に意味を与えてから、図全体の解釈をしていくという流れですね。

内田:おっしゃる通りです!

内田:次に結果の解釈について、特にデジタルリテラシーの高い「世話好きシニア」、「今でしょシニア」は以下のような傾向がありました。

内田:「世話好きシニア」は、他のクラスタに比べ「習い事」や「演劇鑑賞」「劇場鑑賞」をする傾向にあります。

桐山:「世話好きシニア」は女性の割合が高いことも特徴であり、同世代の女性友達と料理教室に行ったり、コンサートに行ったりしていることが想像できますね。

内田:「今でしょシニア」は、他のクラスタに比べ「テレビ」や「ペット飼育」「終活」をする傾向にありました。

桐山:「今でしょシニア」は好奇心旺盛で今したいことをする傾向があるため、自分の余生の過ごし方を意識して自分なりの終活を考えてみたり、世話好きシニアに比べ、男性が多いこともあり、テレビを見たり、ペットを飼ったりと集団的な行動というよりかは個人的な行動をしていることがうかがえますね。
同じデジタルシニアでも、「世話好きシニア」は友人との交流など集団的な行動をとる傾向が見られ、「今でしょシニア」は、テレビ視聴やペット飼育など個人的な行動を取る傾向が見られます。

おわりに

桐山:日本はシニアの割合が総人口に対して多くを占める中、デジタルシニアと呼ばれる、ネットリテラシーの高いシニア層が増えています。
シニア世代のデジタル化は今後も加速し続けると予想され、シニアへのデジタルマーケティングの重要性は高まっていくと言えるでしょう。

内田:その中で、シニア層の的確で詳細なターゲット設定は重要になると言えますね!

桐山:その通りです。クラスタ×コレポンの分析結果からも分かるように、ターゲット設定はとても大事で、シニア層を十把ひとからげにすると全くコミュニケーションできないことが見て取れるでしょう。これは何もシニア層に限ったことではなく、マーケティング全般に言えることですが、シニア層は全世代の中で最も長く生きている世代であり、その分「多様な属性×多様な志向性×多様な価値観」で構成されるため「多様の3乗」となるぶん、より重要と言えるわけです。

内田:確かに! 私の3倍長く生きていますからね。桐山さんは2倍です!

桐山:うるさい(笑)。では次回では、各クラスタへの訴求軸の部分である「クラスタごとに適したコンテストとは?」について議論しましょう。

内田:よろしくお願いします!

桐山:朝日広告社では、自社調査データを基にシニア層への適切なマーケティング支援ができる環境をご用意しております。
また、「ASAKOシニアクラスタ調査™」レポートは下記リンクから無料でダウンロード可能ですので、もしご興味がありましたらぜひお試しください。

https://www.asakonet.co.jp/download/
*マーケティングソリューション名「【調査結果レポート】シニア層のクラスタ分析」をお選びください。

  1. 所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。
  2. また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
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著者プロフィール

プロフェッショナルズデータアナリスト内田 拓磨(うちだ たくま)

この人の書いた記事

得意領域

  • #データアナリシス
  • #機械学習
  • #CX/DX
  • #デジタル

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「出典:朝日広告社「アスノミカタ」●年●月●日公開記事」

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