ウェルビーイング アクティブシニア デジタル 2024.04.17
【データ分析から探るシニア像】~クラスタでコンテクストが変わる~

コロナ禍がシニア世代のデジタル化を加速させる
目次
コンテクストは大事
「我が道シニア×旅行」のコンテクスト例
「世話好きシニア×旅行」のコンテクスト例
おわりに

左:内⽥ 拓磨(うちだ・たくま) データソリューション部データアナリスト [趣味]芸人さんの深夜ラジオをひたすら聞くこと

右:桐⼭ 忠介(きりやま・ただすけ) ストラテジックプランニング部部⻑ [趣味]ゴルフ。ラウンドも好きですが、朝から晩までひたすら練習するのはもっと好きです。



【前篇】【データ分析から探るシニア像】~デジタルシニアってどんな人?~はこちら

コンテクストは大事

桐山:広告におけるコンテクスト(文脈)とは、広告が提示される場所や状況は当然として、受け手側の価値観や志向性など、広告の受容や理解に影響を与える要素全般をいいます。どんなに商品・サービスが優れていてもターゲットに届くコンテクストでないと響かないし理解もできない状態に陥りやすいです。

内田:「多様の3乗」となるシニアでは、余計にコンテクストが大事だなと思います。
データで見ても、デジタルリテラシーに差があるのがシニア層の特徴なので、WEB広告においてもターゲットのデジタルリテラシーを理解しないと無駄が多そうです。

桐山:まさにその通り!広告を例に出して説明したけど、コンテクストは事業プロセス視点で見ても大事な考え方なんだよ。

内田:そうですよね。ターゲットをしっかり理解できないと事業はできませんよね。

桐山:事業には情報収集や研究、企画などのR&D(研究開発)や商品開発、メーカーであれば生産技術、製造技術などのモノ作り、生活者に届ける店舗開発や物流、アフターサービスまで幅広いフェーズがあるけど、ターゲットを前提としたコンテクストがあってこそ成り立つよね。

内田:となると、クラスタはコンテクストに大きく関与するということですね。

桐山:事例で説明していきましょう。題材は「旅行」です。
今回のASAKOシニアクラスタ調査®で、どのクラスタにおいても人気の趣味が「旅行」です。
ですが、クラスタが変わると商品も異なるし、コミュニケーションも異なることを説明します。取り上げるクラスタは「我が道シニア」と「世話好きシニア」の2つです。

「我が道シニア×旅行」のコンテクスト例

桐山:我が道シニアは、自分の人生を謳歌する意識が高い一方で、その他のことには関心が低いクラスタです。旅行が好きな人なら徹底的に旅行を楽しむ人であり、研究熱心な一面を持っています。だから、旅行では旅先での目的意識が非常に強いと考えられるので、「何をしに」行くか?に人一倍関心が高い。

内田:なるほど。思う存分目的を達成しようとする、そんな志向性ですね。1点豪華主義的な考えとも言えそうです。

桐山:では、我が道シニアに向けたコンテクスト開発を考えてみましょう。ここではシンプルにクラスタの「ニーズ」、提供する「商品・サービス」、クラスタへの「メッセージ」、利用する「メディア」の4つの項目で作ってみました。

桐山:まずニーズですが、仮説として我が道シニアの関心事を歴史・文化と設定しました。

内田:歴史・文化は奥が深そうだし、いくらでも追求できそうなテーマです。シニア層の中でも人気のテーマと思いますね。

桐山:次は、提供する「商品・サービス」。ここでは歴史・文化への追求心をくすぐるために「専門家のQ&A付き 世界遺産「〇〇〇」巡り」としました。単に観光するだけでなく、その世界遺産に関する専門家と一緒に巡ることで、 より深い知識や専門的な質問にも答えられるような商品としました。

内田:それは良いですね!クラスタの志向性にも合いますし、商品のオリジナリティや差別化といった商品ポジショニングにも好影響を与えそうです。

桐山:いい気付きだね。そして、「メッセージ」は「世界遺産『〇〇〇』の謎を一緒に解きませんか?」。商品・サービスの特徴を踏まえた訴求とします。
最後に「メディア」。ここはASAKOシニアクラスタ調査®の結果からシニア層の中では一般的なデジタルリテラシーだったので、「マスメディア、動画サイト」として、マスメディアとデジタルの混在が効率の良いメディアとなりそうです。

内田:ニーズからメディアまで一貫したコンテクストができましたね。また、少しマニアックなところが新たな需要にもつながりそうですね。続いて「世話好きシニア」のコンテクストも知りたいです!

「世話好きシニア×旅行」のコンテクスト例

桐山:世話好きシニアで特徴的なことは、人との触れ合いや応援など人との交流がとても好きだということ。人が喜ばれることが自分の喜びにもつながるような意識があるクラスタです。では、この点を踏まえて「世話好きシニア×旅行」のコンテクストも考えてみましょう。このクラスタから考える旅行における重要ポイントは「『だれと』いくか」 。

我が道シニアでは旅行先ありきでしたが、世話好きシニアは行く人によって旅行先はもちろん、服装や予算も大きく変わると考えられます。

内田:そうですね。自分に当てはめて考えると、家族と旅行に行くことと、友人と行くことでは、全く違います。

桐山:世話好きシニアのクラスタでは、夫婦での旅行と学生時代の友人との旅行では、内田さんの世代よりももっと意識的に違いを感じていると考えられます。それでは、世話好きシニアの「ニーズ」、提供する「商品・サービス」、クラスタへの「メッセージ」、利用する「メディア」の4つの項目を考えていきましょう。

まずニーズですが、ここでは「学生時代の仲間と遊びたい」としました。

内田:人との付き合いを大事にする世話好きシニアなら、数十年のお付き合いをする人も多そうですね。

桐山:まさにそんな人。年に一回必ず会う約束をしている…そんなイメージがぴったりくる人。このクラスタへの商品・サービスを考えると、「旅行もさることながら会話が楽しくて仕方がない!」といったインサイトに響くような「個室で気兼ねなく美味しい料理を楽しめる旅行」としました。このクラスタは話が盛り上がりすぎて周りを心配するようでは楽しい旅行も台無しです。なので個室を用意し気兼ねなく会話をエンジョイしてもらう商品としました。
そして、メッセージは、「気兼ねなく仲間とワイワイ!女子会ツアー!」。世話好きシニアの価値観に徹底的にフォーカスします。

内田:我が道シニアの時のような観光地押しはもはや無く、対照的ですね。

桐山:最後にメディアはネットリテラシーが高いクラスタなので、思い切って「デジタル施策中心」に設定しました。広告から申し込みまでデジタルで管理できるなら、店舗やコールセンターも最小限で済む可能性があり、事業全体の利益構造にも影響します。

内田:なるほど。広告だけでなく、事業の利益構造にまで影響を与えるんですね。「シニア層」というだけでひとくくりにしていてはいけないことがよく分かりました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は旅行商品について「世話好きシニア」「我が道シニア」の2つのクラスタを用いて、コンテクストを作ってみました。シニア層は「多様の3乗」と呼んでいるように、最も多様性がある世代です。ただし、一人ひとりにフォーカスしすぎると、マーケティング自体が難しくなることも考えられます。そんな時にはぜひASAKOシニアクラスタ調査®を活用いただき、新しいシニアコミュニケーションで幸せなシニア層の増大につながれば幸いです。。

次回のテーマは「シニア層の幸福って何ですか?」です。


もし当社にご相談いただければ、シニアマーケティングにおける商品開発支援からブランディングやマーケティング支援まで幅広く対応することが可能です。
お気軽にお声がけいただければ幸いです

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著者プロフィール

プロフェッショナルズプランニング・ディレクター桐山 忠介(きりやま ただすけ)

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