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地域創生
2023.03.27
マーケティングは暗渠に似てる?!
私、「暗渠マニア」です
「暗渠(あんきょ)」という言葉はご存知でしょうか。最近はよく『ブラタモリ』(NHK)などのTV番組でも出てくるようになりましたが、「もともとあった川や水路にふたをした場所」のことです。
私はこの暗渠が大好きで、それが高じてこれまで『暗渠マニアック!』(柏書房)、『暗渠パラダイス!』(朝日新聞出版)、『まち歩きが楽しくなる 水路上観察入門』(KADOKAWA)、『「暗橋」で楽しむ東京さんぽ 暗渠にかかる橋から見る街』(実業之日本社)など暗渠に関する本を書いてきました(全て吉村生氏との共著)。暗渠の魅力の「伝道」は著作に限らず励んでおり、あちこちからお声がけいただての暗渠トークはもうすぐ100回を数えるほどになっています。
もちろん、これらはあくまで趣味で、平日はしっかり会社で仕事をしています。
「暗渠」は新しい風景を発見するメガネ
では暗渠の魅力とは何でしょう。暗渠はたいていどこの街にもあり、よく探せばそこに川があった痕跡が残っています。かつての橋や護岸、重量のある車両から、脆いふたを守って立つ車止め、かつての水路に排水を流していた古い銭湯や染物店、細長い川跡の形を活かした駐輪場などなど…。そんな「暗渠サイン」を見つけたときの悦びたるや、まるで街を舞台にしたパズルを解いているかのようなのです。また、そんな「暗渠サイン」を見ていると、近代化以降のその街の歴史と変遷も理解することができます。暗渠は普通の道とは成り立ちが異なるため、その景観も独特です。掛けられたふたが舗装もされずそのまま残っていたり、路地の奥深くへと蛇行していたり、粗大ごみが寂しく放置されていたりと、「水を失った哀しみ」をたたえるようなその姿は、不意に街なかに現れる異次元スポットとも言えるでしょう。
これらは、暗渠好きにとってはまさに街で見つける新たな名所。「暗渠」を知ると、街の見え方が変わります。そんな「名所」が、日本全国の至る所にあふれているのがわかるでしょう。暗渠というフィルターを通すことで、普段何もないと思っていたありふれた街が、見どころだらけの面白フィールドに変わるのです。
いつも答えはクライアントが持っていた
私はかれこれ35年間、マーケターやプランナーとしてクライアントの課題解決に携わってきました。この仕事で一番大事なのは、抱えている課題を一気にブレイクスルーできる方向性(コンセプト)を掴みだすことです。それがうまくいったときは、きちんと結果もついてきます。
ところでこれまでを振り返ってみると、そのコンセプトの多くは決して私や当社だけによる創作ではありませんでした。むしろ、クライアントの言葉の端々やクライアントの現場から拾ったアイデアが元となって、それを誰もがすっと理解できるように再構築させていただいたものばかりです。すなわち、課題解決の答え、もしくはその重要なファクターはクライアントがすでに持っており、それが「目に見えなかった」だけなのです。
じぶんの中に眠る答えを見つけるお手伝い
そこで私たちは、マーケティングやプランニングのプロセスに入る前に、クライアントと接触する時間を充分に作ることで、クライアントご自身の内面に埋もれている「答え」を見つける試みを続けています。カウンセリングのように対話を通して言葉を可視化していく、あらかじめいくつかの問いから構成するワークショップを用意し関与者の思いを出し合っていく、などが私たちの持つ主なプログラムです。
休日、日本全国の地方自治体からお声がけいただき暗渠トークに出向くこともしばしばです。そんなときは、必ずその土地ならではの暗渠をご紹介しますし、また参加者同士で地元の暗渠に関するワークショップを用意することもあります。すると、皆さん目を輝かせながら「うちの近所がこんなに面白いとは思わなかった」「毎日の散歩が楽しみになった」と喜んでくださいます。ご自身の街が(多少なりとも)誇らしくなる想いを抱いてくださるのです。それは、暗渠のせいでも私のせいでもなく、ご自身の街にある宝物が「見えるようになった」だけ。答えは最初から街のあちこちにあったのです。
答えはじぶんの中にある。
私たちは、クライアント自身の中から答えを見つけ出すことをお手伝いする、良き「ファインド・ファシリテーター」になりたいと思っているのです。
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著者プロフィール
プロフェッショナルズ経営戦略センター 経営企画室長髙山 英男(たかやま ひでお)
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