2023年に発売35周年を迎えた丸美屋の大人気商品「混ぜ込みわかめ」。子どものお弁当づくりから日々の食卓まで、多くの家庭を支えてきた定番のふりかけです。その節目にあわせて、新たな取り組みを共に進めたのがASAKOでした。
35周年プロジェクトのテーマは、味や素材を変えることではありません。ブランドとして、これからどんな価値や想いを届けるのか──“パーパス(存在意義)”を明確にすることでした。そのために活用されたのが、ASAKOが開発したソリューション「ASAKO Brand PRISM™」です。
長年、商品力の追求を続けてきた丸美屋が、なぜパーパスの策定に取り組むことになったのか。そして、ASAKO Brand PRISM™を使ったフレームワークでどのように議論が進み、どのような未来を描き出すことができたのか。
当時、丸美屋「混ぜ込みわかめ」のメンバーとして、プロジェクトに参加した丸美屋の藤井茜さん(以下、敬称略)、南部真衣さん(以下、敬称略)、靏千晶さん(以下、敬称略)、そしてASAKOの羽田、川津を含む5名に、プロジェクトを振り返ってもらいました。

今求められるパーパスを使ったブランド作り

「気持ちがこもった、あたたかい毎日へ。」 
丸美屋「混ぜ込みわかめ」シリーズの商品パッケージに記載されたこの言葉。一見シンプルで当たり障りのないブランドパーパスですが、ふりかけ業界のトップランナーとして新たな一歩を踏み出す、丸美屋の決意を示したものです。 

——パーパスを作るきっかけはなんだったのでしょうか?

藤井:当社にはブランドの周年を大切にする文化があります。2023年に「混ぜ込みわかめ」が35周年を迎えるにあたり、会社としても、個人的にもブランドを改めて見つめ直す機会だと考えました。
しかし、当時、ふりかけ業界はコロナ禍でおにぎりの消費機会が減り、市場は縮小傾向にありました。「混ぜ込みわかめ」は国内ふりかけシェア4割を超えるトップブランドですが、従来の「競合より優れている」という訴求だけでは、お客様の心に届きにくくなっていたのです。周年のタイミングでどのようなメッセージを発信し、市場全体を盛り上げるかが、社内の大きな課題となっていました。

川津:ご相談をいただいた当時は、コロナ禍で先行きが不透明で、ASAKOとしても周年記念だからといってすぐに何かを提案できる状況ではありませんでした。丸美屋さんではどのような方向性を検討していたのでしょうか。

藤井:私たちは他社事例を参考にしながら、ヒントになるアイデアを模索していました。そんな中、セミナーで「パーパス」という概念に出会ったのです。ブランドと社会の関わり方を見直すことが、今後ますます重要になると感じました。

:実際に「パーパス」を意識するようになると、電車広告や商品パッケージなどで目にする機会が増えました。世の中には思った以上に多くのブランドがパーパスを掲げていました。

南部:これまで「混ぜ込みわかめ」は美味しさや手軽さなど機能的価値を中心に訴求してきました。しかし、消費者の行動や市場は変化しています。便利だから購入するのではなく、好きだから選ぶ、ブランドの世界観に共感して手に取る、という価値観への変化です。こうした時代の変化とパーパスの意義が合致していることから、今こそ取り組むべきだと考えました。

藤井:ただ、私たちはパーパスブランディングの経験がなく、考えをどう整理し、どのようにメッセージに落とし込むのか、その手順がまったく分かりませんでした。

羽田:そこで、私たちが提供する、「ASAKO Brand PRISM™」の採用が決まったのですね。実際、企業を支援する立場から見ても、丸美屋さんの「混ぜ込みわかめ」はすでにトップシェアを誇るブランドで、社会をより良くしていく責任を持っています。さらに、お米に関わるブランドである以上、日本の社会との関係性まで視野に入れる必要がありました。

パーパスを理解するのは難しい? 

「ASAKO Brand PRISM™」とは、ブランドの特徴、役割、ターゲットペルソナ、ブランドパーパス、ブランドパーソナリティ、提供価値、ブランドシンボルの7つの問いに答えることで、自社ブランドの“パーパス(存在意義)”を明確にするフレームワークです。ここでは、実際に体験した丸美屋のメンバー3人に、当時の戸惑いや取り組みの舞台裏を伺います。 

——プロジェクトへの取り組みはいかがでしたか? 

藤井:パーパスブランディングは会社として初めての取り組みでした。「混ぜ込みわかめ」チームだけでなく、マーケティング部全体で学びたいという意識から、他のブランドチームからの参加もありました。

南部:同じ会社の仲間だからこそ共通認識を持っていて、方向性の一致も感じました。その一方で、「混ぜ込みわかめ」チームだけで盛り上がる部分を他ブランドチームから客観的に指摘してもらえたのがありがたかったです。参加したメンバーはとても意欲的で、何かを吸収しようと積極的でした。しかし、社内には「何のためにやっているの?」という視線もあったのが現実です。

藤井:最初は、誰も“最終的にどういう形になるのか”を想像できていませんでした。アウトプットのイメージがないまま始めたため戸惑いもあり、「最終的にどう活用されるのか」「売上につながるのか」という疑問が出るのは当然でした。

川津:フレームワークでは、まずDAY1でペルソナを設定し、DAY2でそのペルソナをもとに提供価値・パーパス・役割・特徴を策定するという段階を踏んで進めていきましたね。

 

藤井:実は、最初のペルソナ設定からつまずきました。特に“未来志向”の部分で、どうしても「今、買ってくれている方」に基づいたペルソナを考えてしまい、未来の顧客像への切り替えに苦戦しました。また、チーム内でも意見が異なり、「未来志向って何だろう?」と頭が混乱した記憶があります。

羽田:未来志向については多くの企業が苦戦します。現在のお客様はもちろん大切ですが、トップシェアブランドでは新たな市場や未来への広がりを意識する必要があります。意見が異なるのは自然で、チーム内で「本当に大切にしたいお客様のイメージ」が違うためです。だからこそ、最初のステップで方向性を揃えることが重要でした。

南部:逆にペルソナを作り込みすぎると、取りこぼされるお客様が出るのではないかと不安でした。お子さんがいる家庭が中心層のイメージはありますが、実際はそうでない方にも広く使っていただいています。特定層に寄りすぎると、商品を手に取ってもらいにくくなるのでは、と悩みました。

川津:その悩みは印象的でした。「混ぜ込みわかめ」は幅広い人に愛されるべき商品だからこそ、皆さんが「誰を中心に据えるべきか」という問いに真剣に向き合っていました。まさに新しい試みならではの迷いだったと思います。

ASAKO Brand PRISM™ フレームワーク

こんなところに効果が!? 意外なパーパスの活用 

パーパスを策定する目的は、ブランドの価値を高め売上を伸ばすためだけではありません。その過程や成果において、会社全体や個人にもポジティブな影響をもたらしたと、プロジェクトに参加した3人は語ります。 

藤井:最初は「未来志向」「変わらなければいけない」といったキーワードばかりが頭にあり、落としどころが全く見えませんでした。しかしフレームワークを進めるうちに、“混ぜ込みわかめの良さ”や“競合に対して積み上げてきた強み”を生かせばいいのだと気づき、急に前向きになりました。「もっと世の中に知ってもらう価値がある」「広げていく使命がある」という強い自信と愛着が生まれました。

南部:私も同じです。ブランドの解像度が大きく上がり、以前は“ご飯に混ぜておにぎりを作るもの”という認識だったのが、“気持ちに寄り添ってくれる存在”という感覚に変わりました。機能的価値だけでなく、心のパートナーのようにお客様に愛される存在でありたいと思うようになりました。

羽田:それを聞けてうれしいです。私たちはブランドを“誇りをもたらす伴走者”として捉えています。機能だけでは伝わらない魅力を、ブランドの誇りと自信として届けたい。チームの皆さんが誇りを持てば、その先のお客様にも誇りや自信が伝わり、ブランドを中心に“誇りの連鎖”が生まれる。世の中をより良くする力になると信じています。

:当時、私は入社してまだ数年だったのですが、急に大きなプロジェクトが始まり最初は不安でした。しかし、「混ぜ込みわかめ」は高校生の頃から使っていて、食べ手としての視点は持っていました。そこに作り手の視点が加わり、全く新しい見え方を得られたのです。作り手としても食べ手としても共感できるパーパスにまとまったことに、大きな納得感がありました。

藤井:さらに、営業や宣伝など全ての部署にメッセージを共有したことで、「何を伝えるブランドなのか」が視覚的に分かりやすくなりました。意外だったのは営業の反応がとても良かったことです。単に「広告を出すから売ってください」という話ではなく、新しいマーケティングの姿勢や、今の消費者に必要な価値に向き合う点に共感してくれました。

川津:社内に対しても良い影響があったわけですね。

南部:はい。次の年の売上も好調で、広告も統一した方向性で展開できました。新聞や雑誌などすべての媒体で、伝えたいことが一貫していたのが大きかったです。以前はトンマナや表現の方向性が曖昧なまま進むことが多かったのですが、「混ぜ込みわかめのトリセツ」のように社内で共有でき、全員が「誰に何を伝えるか」を揃えられたことは大きな成果です。

今日から実践。パーパスを使って愛されるブランドに 

ここまで、ASAKOが開発したソリューション「ASAKO Brand PRISM™」のプロジェクトをみてきました。
実は、丸美屋では、その後、他の自社ブランドでも作成を行なったという。しかし、その出来には決して満足していないようで……。

川津:その後、別のふりかけブランドのパーパス開発にも取り組まれたんですよね。

南部:はい。「混ぜ込みわかめ」での経験を参考に、見よう見まねで挑戦してみました。ただ、実際に自分たちだけで作ってみて初めて、「混ぜ込みわかめ」のパーパスの完成度の高さに気付かされました。私たちはライターではないため、気持ちをうまく表現するのが難しく、未来志向で感情面まで描こうとすると、ブランドの“正体”がぼやけてしまいました。

藤井:ただ、一つ大きな発見がありました。開発前は、ブランドの中でも商品ごとに購入者の年齢や生活スタイルが異なり、共通点を見いだすのは難しいと思い込んでいました。しかし、「混ぜ込みわかめ」で使ったフレームを当てはめてみると、意外にも共通する部分が見えてきたのです。入口は違っても、「ご飯がより楽しくなる」「こういう気持ちで食べたい」といった想いでつながり、最終的には同じパーパスでまとめられると気づきました。

南部:改めて振り返ってみると、ASAKOさんのソリューション「ASAKO Brand PRISM™」を活用し、専門家の視点で「混ぜ込みわかめ」のパーパスを監修していただけたことが非常に心強かったです。
チーム内では理系と文系で捉え方が異なり、アウトプットの方向性がぶつかる場面もありました。理系メンバーが機能重視に寄せると、文系メンバーが「それでは今までと変わらない」と指摘する。抽象度を調整しながら落としどころを探る作業は、刺激的なプロセスでした。

藤井:「混ぜ込みわかめ」のパーパス作成は初めての取り組みでしたが、これをきっかけに「こうした考え方を社内に広げていきたい」という思いが強くなりました。パーパスブランディングを経験する中で、「今までのままではいけない」という意識が芽生え、取り組む過程そのものが自分たちの成長につながったと感じています。

羽田:ブランドプリズムは、「商品を長く愛される存在にする」ための考え方です。その中には必ず“エモーショナルベネフィット”(商品やサービスを通じて得られる感情的な価値)を含めています。メーカーはどうしても機能や成分、実利に目が向きがちですが、「お客様をどう幸せにするか」まで考えることが重要です。お客様の幸せは、やがて社会の良さにもつながります。そうした視点を持つことで、組織としての選択肢や判断の幅も広がっていくはずです。
ぜひ皆さんも、パーパスの策定から始めてみてはいかがでしょうか。

ASAKOメンバー紹介

長谷川 純

長谷川 純 (はせがわ じゅん)

第八局 第一部

プロジェクトリーダーとして、多様な課題に寄り添い、お客様の事業、お仕事の成功に尽力。小売、食品、エネルギー、人材、金融など幅広い業種、および企業の経営統合案件にも携わった経験を活かし、対お客様の最前線として真摯に向き合い、ご安心いただけるよう迅速で円滑な進行を心がけている。

羽田 康祐

羽田 康祐 (はだ こうすけ)

ビジネス開発局 プランニングディレクター

産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。 日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。外資系コンサルティングファームなどを経て現職。 「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『本質をつかむ』『ブランディングの教科書』『パーパスブランディングの教科書』がある。

川津 絹代

川津 絹代 (かわづ きぬよ)

クリエイティブ局 プランニングディレクター

新卒入社後、メディア・マーケティング領域を経験したのちクリエイティブ部門へ。官公庁、食品、ヘルスケア、BtoBなど幅広い業界において、課題整理から戦略設計、コミュニケーションデザインまでを一貫して担当。生活者視点と事業視点を往復しながら、実装可能な企画立案を強みとする。(公社)日本マーケティング協会認定マーケティングマスター(株)SeeYou主催モデレーター養成講座修了(一社)日本広告業協会 第49回懸賞論文入選。

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