生成AIをもっと身近に 体験型ワークショップ「生成AIカフェ」が拓く未来

生成AIをもっと身近に   体験型ワークショップ「生成AIカフェ」が拓く未来

日々進化する生成AI。すでに業務に取り入れている方が多い一方で、「嘘をつくのでは」「期待ほど使えない」といった不安や誤解も少なくありません。四国商工会議所連合会では、コロナ禍を経て経営指導員の役割が拡大。それにより膨大な事務作業が増え、本来注力すべき「伴走支援(企業の課題設定や解決)」を圧迫するという課題を抱えていました。さらに、デジタルに苦手意識を持つベテラン層も多く、組織全体のレベルアップが急務となっていました。
その解決策として選ばれたのが、ASAKOによる体験型ワークショップ「生成AIカフェ」です。

生成AIを活用した事業立ち上げや、企業や学校での生成AI研修講師、AI映画祭でのパネラー登壇など、社内外で活躍するASAKOのツジと、高知商工会議所の岡林さん(以下、敬称略)との出会いから始まったこの取り組みは、単なるスキル習得を超え、生成AIを「使いこなせる道具」と捉え直す意識改革の場となりました。
2025年11月、高知商工会館で行われた研修には、四国4県の商工会議所から約70名の経営指導員が参加。「AIへの不安」を「支援の武器」へと変えた、その舞台裏に迫ります。 

生成AIは「難しい」?――現場にあった戸惑いと期待

――今回の研修会は、どのようなきっかけで実現したのでしょうか? 

岡林:そもそも私が生成AIに注目したのは、ニュースで「ChatGPT」という言葉を耳にしたという、ごくシンプルなきっかけでした。ただ、当時は職員の多くが「難しそう」「どう使えばいいのかわからない」といった漠然とした不安を抱えていました。少し試してみた人からも「嘘をつくから使えない」という声があり、意図と違う回答が出ると「やっぱりダメだ」と諦めてしまう空気があったのです。 

ツジ:私と岡林さんが最初に生成AIについてお話ししたのは、高知龍馬空港でしたね。 

岡林:そうです。飛行機の待ち時間に、辻さんから「実は生成AIをつかって新しいことをスタートしようと考えているんですよ」と伺いました。プロンプト(指示文)を細かく書かなくても、自分の目的や意図を書き出せば、AIがいろいろなものをつくってくれる。というお話に、大きな衝撃を受けたんです。 

ツジ:当時ASAKOで開発していた「POPstation(ポップステーション)」というサービスのコンセプトワークをしていた頃で、商工会議所さんの業務を助けられそうだという話をしました。そこからトライアルを重ねていただきました。
※企業向けのプロンプト不要の生成AIサービス。業務サポートしてくれる40種類以上の「モード」によって、メール作成や資料チェックなどを簡単に実行でき、ノウハウの共有やセキュリティ管理にも対応している。 

――その出会いが「生成AIカフェ」というユニークな研修会につながったのですね。 

ツジ:世の中には生成AI関連の研修が数多くありますが、その多くは講師が一方的に概論を話すものです。受講した直後は「勉強になった」と感じても、いざ現場に戻ると何も残っていない。そんな経験をした方も少なくないのではないでしょうか。そこで私たちは、「生成AIカフェ」を企画しました。「対話・実践・発見」という3つのステップで、生成AIをより身近で使えるものとして感じてもらうことを目的にしています。 

――3ステップですか? 

ツジ:はい。まずは「対話」。チーム内で話し合う時間をしっかり設け、多様な意見に触れることで、自分の課題を客観的に見つめ直し、新しい視点を得てもらいます。
次に「実践」。ハンズオン形式で実際に手を動かし、生成AIを使ってもらいます。
そして「発見」。対話と実践を通して、「自分の仕事にどう使えるのか」「何が変わり得るのか」を自分自身で見つけていきます。この流れを大切にしています。 

岡林:私たち自身も、いわゆる座学型の生成AIセミナーには何度か参加してきました。でも、事務所に戻って振り返ってみると、「ああ、セミナーを受けてきたね」で終わってしまう。実務にどう生かすかまで落とし込めない、そんな経験が正直ありました。 

ツジ:「生成AIカフェ」という名前も、堅い研修ではなく、カフェのようにリラックスしてワイワイ話しながら学べる場にしたい、という思いから付けています。 

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「できる・できない」を知ることから始めるAI活用

2025年11月に高知県で開催された研修では、四国4県から約70名の経営指導員が集結しました。そこで行われたのが、ASAKOが独自に開発した「生成AIできませんゲーム」です。 

ツジ:実は、皆さんは生成AIに「期待しすぎている」ことが多いのです。それが、生成AIを「使えない」と感じてしまう大きな原因になっています。生成AIには「できること」と「できないこと」があります。それをきちんと理解すれば、的外れな指示が減り、結果としてうまく使えるようになります。そうしたことを体感してもらうため、「生成AIできませんゲーム」というものを開発しました。 

――「できます」ではなく「できません」ゲーム、というのが面白いですね。  

ツジ:そうなんです。このゲームでは、「こんなことはできますか?」というさまざまな業務タスクが書かれたカードを用意します。それを、「得意」「苦手」「やってはいけない/できない」に仕分けしていきます。
たとえば、「ビジネスメールの作成」や「日本語を英語に翻訳」といったタスクは、生成AIが非常に得意な領域です。では、「2時間の研修動画をすべて要約する」のはどうでしょうか。 

――要約は得意なイメージがありますが、違うのですか? 

ツジ:実は、これは今の生成AIが苦手とする領域なんです。現時点では、2時間という長時間の動画をそのまま扱うのは難しく、短い時間や区切った情報であれば対応できる、というような制約があります。こうした話をしていくと、「なるほど、そういうことか」と皆さん納得されます。講義でヒントを得たうえで、ゲームの中で議論していくのがポイントなんです。 

岡林:実際にゲームをやって答え合わせをすると、「なるほどね」という言葉が自然と出てきます。グループのメンバー同士で「ああでもない、こうでもない」と深掘りしていくですよね。そのプロセス自体がとても良かったと感じました。
たとえば、医療とは無縁の会社が医療に関する内容を生成AIで診断して、それをお客さまにサービス提供する行為は、医師法などに抵触する為、ビジネスとしては禁止事項になります。一方で、個人が自己責任で使う分にはまた話が違う。

ツジ:おっしゃるとおりで、関連法令やビジネス上のルールを守ったうえで生成AIを使うことがとても重要です。個人利用とビジネス利用では、求められる判断基準が違います。だからこそ、「人間がどう判断するか」が大切になる。具体例と対話を通じて理解を深めることで、生成AIを現実的かつ効果的に使えるようになっていきます。 

岡林:四国4県の商工会議所には、若手からベテランまでさまざまな職員がいます。指導員の中にはデジタルに対して苦手意識を持つ人も少なくありませんが、こうしたゲームを通じて、組織全体としてのレベルアップや、経験・ノウハウの共有をどう進めるかという課題に切り込むことができたと感じています。 

実はベテラン層こそが、生成AIを一番活かせる

――特に40代・50代のベテラン層の方々の反応が印象的だったと伺いました。 

岡林:はい。実は、彼らのモチベーションが劇的に上がったフレーズがありまして。辻さんがおっしゃっていた「実は生成AIは、40代・50代の人が使いこなすとむちゃくちゃ強いんですよ」という言葉です。このキーワードは、その後の交流会でも「あの言葉に勇気をもらえた」という声を多数いただくほどで、まさに現場の意識を変えるキラーワードだったと感じています。 

ツジ:この言葉は、研修会の冒頭にお伝えしました。かつてデジタル技術が台頭した時代は、どうしても若手が花形になり、ベテラン層は「ついていけない」と一歩引いてしまう構図がありました。でも「AIは違うんですよ」ということを強調したかったんです。
40代以上の方々は、これまで多くの苦労を重ね、豊かな経験値を積み上げてこられました。生成AIが出してきた回答を「選択・判断できるノウハウ」をすでに持っている。そのスキルこそが、AI時代には最強の武器になるんです。 

岡林ベテラン職員たちがパッと顔を上げて「そういうもんなんですか!」と。あの納得感はすごかったですね。辻さんは教育面についても、社会的・組織的に考え直す必要があるとおっしゃっていましたが、今後は若手の育成のあり方もかなり変わってくるのではないかと感じます。 

――「プロンプトの指示が難しそう」という苦手意識については、どう解消されたのですか? 

ツジ:皆さんにお伝えする際は、できるだけ難しい専門用語は使わず、誰もが腹落ちする例えを使うようにしています。 

岡林:確かに「困ったときに未来からやってきたロボットが、便利な道具で助けてくれる国民的アニメ」の話は、とてもわかりやすくて納得感がありました。 

ツジ:いつもお話しするのは「(そのアニメの)主人公こそ、世界で一番AIを使うのが上手だよね」というものです。「今こんな状況で、こういうことに悩んでいて、できればこんな未来になったら嬉しい」と、素直に伝える。あのやりとりこそが、プロンプトの目指す姿なんです。
「なぜか?」詳しいお話は研修でお聞きいただきたいので割愛しますが、参加者が共通でイメージできる身近な例を用いて説明することで参加者の皆さんの心理的ハードルを一気に下げることができました。 

岡林:職員からも、「これだったら自分でもできるかもしれない。ちょっとやってみます」という声をいくつも聞いています。非常に大きな気づきが生まれた瞬間でした。
これまでは「生成AIは専門家やITリテラシーの高い人が使うもの」というイメージでしたが、自分たちの道具のひとつなのだと意識が変わってきたのを感じます。使い勝手のいい道具だからこそ、正しく、大切に使おうという空気になってきました。 

学びを現場へ、そして地域へ

ツジ:講師として岡林さんにお聞きしたいのですが、今回の研修はいかがだったでしょうか? 

岡林:期待以上でしたが、正直なところ「もっと時間が欲しかった」というのが本音です(笑)。ガチンコで2日間くらい開催してもよかったかもしれません。参加した皆さんが本当に真剣だったので、それだけ興味が強かったですし、「何かを持ち帰りたい」という切実な思いが伝わってきました。 

ツジ:ありがとうございます。それはよかったです。本来、フルで実施すると10時間以上のカリキュラムになる内容を、今回は1日の研修に凝縮して詰め込みましたからね。今後はさらに事例を充実させて、より具体性を持たせたお話ができると、さらに深まるかもしれません。 

岡林:辻さんに「高知龍馬空港の待ち合いで、一緒にコーヒーを飲みながら話したあの時間こそが、『生成AIカフェ』の始まりでしたよね」とお伝えしたことがあります。実は、あの日を境に、自分の中でパラダイム転換が起き、「生成AIを業務にどう取り入れるか」という前向きな視点で考えることができるようになりました。
今回の研修も、四国各県の商工会議所の職員にとって、同じように変化のきっかけになったのではないかと感じています。これからは、私たちが本来注力すべき「伴走支援」にしっかりとマンパワーを割き、それ以外の業務をいかに生成AIで効率化していくかが重要です。まずは自分たちの業務フローをあらためて棚卸しし、土台を整えたうえで、その上に最適な活用法を組み立てていく。そうした方向性をはっきりと示してくれた研修でした。 

ツジ:私自身が生成AIに強く惹かれるようになったきっかけも、自分の仕事を片っ端からAIに任せてみて「これはもうゲームチェンジが起きる」と確信したことでした。そのときの衝撃を、こうして四国の皆さんと共有できるのは、本当にうれしいですね。 

――今後の展望についてお聞かせください。 

岡林:まずは、生成AIというツールを指導員が日常的に使いこなし、業務効率化を定着させることが第一歩です。そして中長期的な視点では、この「生成AIカフェ」で得た知見を、地域の中小企業や小規模事業者の皆さんの支援に還元していきたい。さらには、それが四国全体のデジタル化の底上げに繋がっていくことが理想です。事業者の皆さんが、生成AIを自分たちの道具のように身近に感じられる。そんな未来への橋渡しができればと思っています。 

ツジASAKOとしては、せっかく「生成AIカフェ」という名前ですから、今後は本当にこだわりのコーヒーを提供したいなと考えています。休み時間に美味しい一杯を楽しんでもらって、五感で印象に残る場にしたい。生成AIは決して難しいものであってはいけないんです。講師と受講生という堅苦しい関係ではなく、もっとワイワイと楽しみながら、生成AIとどう楽しく、上手に共存していくかを考えられる場を広げていきたいです。 

ASAKOメンバー紹介

ツジ ヤスヒロ

ツジ ヤスヒロ (つじ やすひろ)

AIイノベーションディレクター / 一級建築士

大学院にて建築学を専攻後、株式会社朝日広告社に入社。
メディア担当、営業、プロデューサーとして化粧品、ファッション、ペット用品、航空・旅行、人材、金融、地方創生など、多数のプロジェクトを手掛ける。
近年は生成AI分野に注力し、社内にてプロンプト不要の法人向け生成AIサービス「POP station」の立ち上げを責任者として主導。
建築で培った論理的思考と、広告で磨いた課題解決力を武器に、AIを活用したビジネス・イノベーションを推進している。

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