ブランディング プロモーション IP活用 2023.03.31
多種多様な「スポーツコンテンツ・マーケティングビジネス」【第2回】「スポーツコンテンツと企業ブランディング」

目次
はじめに
スポーツコンテンツの育成
スポーツコンテンツとスポンサー企業
企業内スポーツコンテンツ
おわりに

はじめに

 このコラムでは、スポーツコンテンツをどのように企業が活用し、そのブランド価値を向上させることにつなげているのかについて説明します。

 第1回のコラムでも書きましたが、各スポーツ団体が、競技の発展を目標にさまざま普及活動を行い、競技価値を向上させようと日々努力しています。しかし、生活者が競技に興味を持ち、その競技への観戦意向を高めてもらい、実際にイベントに参加してもらえるようになるには、かなりの労力と何よりも実行していくための資金が必要となります。みなさんは興味のある競技がある場合、テレビやデジタル配信および紙面などで楽しんでいるでしょう。しかし、そういったメディアで競技を取り上げてもらえるようにするには、スポーツ団体の苦労は並大抵のものではないという背景を知る機会はないでしょう。また、プロ野球のように企業名をタイトルにしてチームを応援することが企業を応援することになるという仕組みが当たり前になっていることについても、深く考えることはないと思います。

スポーツコンテンツの育成

 「スポーツコンテンツ」は、各競技団体のまさに血のにじむような日頃の努力によって作り上げられているものです。メディアで情報が発信されていることなどは、そのほんの一部を切り抜いている瞬間でしかありません。私自身もスポーツ団体の広報担当として活動していた経験があり、この状況はよく理解しています。各スポーツ団体の組織規模はさまざまですが、組織の大小にかかわらず、競技の普及や発展は最も根底にある共通の課題です。どのようにすれば競技人口が増加するのか、何をすれば生活者に興味を持ってもらえるのか、さらにはグローバルに通用するような選手育成はどうすれば良いのかなど、スポーツ団体は日々課題と向き合い頭を悩ませています。活動を目の当たりにしている私からすると、頭が下がる思いですし、スポーツ団体職員の方々の情熱や意欲を感じる機会が多く感じます。ポーツ団体によってアスリートを育てることに関しても大きな役割を担っています。スポーツ団体が選手育成を担っていない競技もありますが、競技発展のためにアスリートたちのサポートを何らかのかたちでは担っています。全ての団体ではないですが、多くのスポーツ団体には強化チームや強化委員会と呼ばれる組織があり、選手育成担当として日々選手サポートを行っています。日本代表チームの編成や海外への遠征支援、選手スキル向上のためのトレーニング施設の手配、その監督、コーチ、トレーナー、事務方をはじめ、アスリートがストレスなく競技に集中できる環境を作ることに全力を尽くしているのです。

 また、トップ選手育成のためのジュニア指導や大会の実施なども並行して行われています。一方で、このような組織や体制などを構築できていない、まだまだ小規模なスポーツ団体が多く存在していることも現実です。こうしたスポーツ団体の取り組み下で、選手たちは実力を高め、各競技の世界で活躍し、感動を呼ぶシーンを生み出していくことになり、スポーツ団体とアスリートは両輪となって成長していると言えます。

 ただし、現実はスーパースターが現れてくれることが、競技の普及や認知度拡大、さらには資金調達に最も近道だということです。大きな世界大会などで活躍すると、メディア取り上げニュースになることで一気に話題となるのです。

スポーツ団体職員と海外トーナメントを訪問

スポーツコンテンツとスポンサー企業

 各スポーツ団体の活動の源となる資金調達は、何よりも最大の課題です。人気スポーツコンテンツに育てるには長い期間を通して莫大な資金が必要となるのです。また、競技として成長し、そのブランドが醸成されたとしても、維持していく上での資金もまた莫大です。各スポーツ団体は、世界に通用する選手を育成し、競技自体の認知を高めるさまざまな活動を行い、さらなる競技ブランドの価値向上を目指し、人気を高めることで興味を持つ企業から資金を調達するのです。しかし、それは簡単なことではありません。まずは、競技がどの程度生活者に認知されているのか、またどの程度の影響力があるのかなど、競技自体の価値が値踏みされることから始まります。その競技が企業にとって、ブランド醸成や生活者とのコミュニケーションに効果があるかの判断がなされることになるのです。どれだけの視聴者や読者がその競技に接触しているのか、また競技を支援する企業に好感を持ってもらえるのかなどを検証します。企業側と一緒に、その競技を応援する生活者に好意を持ってもらいブランド醸成を図り、その競技を支援していることへの企業姿勢を理解してもらい、企業の商品やサービスを利用してもらえるようにしなければならないからです。アスリートが過酷なトレーニングを積み、そのすべてをぶつけ合いトップを目指す姿と企業姿勢をオーバーラップさせられるかが重要です。一方で企業にとっては、「CSR活動(企業の社会貢献」などの視点でも効果的にスポーツコンテンツを活用できるようになります。

 企業はアスリートの努力やスポーツ団体の普及促進活動を支援することで、企業自らのビジネス拡大につなげていくことを目指します。生活者は、自分が応援している競技を支援している企業のサービスや商品を利用しようと考えるようになる傾向にあります。よって、短期的なサポートをしても企業のイメージの醸成にはつながりにくく、一度その競技を支援し始めると長い期間継続して支援をする企業が多いのも事実です。このように、企業がスポーツ競技や大会を支援することで、企業ブランドの醸成を図ることは古くから行われています。これには、スポーツ団体と企業の両社が共に成長する状態が続くことが大切なのです。

エジプトのベニ・ハッサン村で撮影(古代スポーツ壁画/紀元前2100年頃)

 ちなみにエジプトの新聞社記者である友人に聞くと、エジプトでもスポーツが盛んだという。特に、サッカーが最も人気があるスポーツだそうです。

 他の球技ではバスケットボール、テニスが比較的高い人気を誇っているそうです。また、世界選手権がカイロで開催されたこともあり、意外にも日本の柔道など武道の人気が高まってきているとのこと。友人が言うには、「ナイル川を使ってボートレースを始めたことや、レスリングのような格闘技、力比べのような重量挙げ、そしてアテネからオリンピアまでの360㎞の距離間で到達の速さを競ったものなど、全てのスポーツはエジプトが起源だ」とのことですが、私は彼の言うことをまともに聞くこともなく、事実かどうか全く根拠はありません。古代エジプトのことはさておき、近代スポーツとして世界的に競技は盛んになってきている感覚がありますが、スポーツが存在する場所には同じような育成と継続の課題はあると思います。エジプトでも企業がスポーツをサポートする活動は非常に活発だそうです。

 スポーツをサポートすることが、企業のイメージに好感度をもたらす仕組みができているのです。そういう意味でもスポーツと企業活動には非常に親和性があると言えますし、既に構築されているスポーツのイメージを利用したブランディングは非常に有効な手段となっています。

右:エジプト新聞社記者(筆者友人)

企業内スポーツコンテンツ

 さて、ここまでスポーツ団体と企業の関係について見てきましたが、ここからは「企業内スポーツ」についても少し触れておきたいと思います。第1回目のコラムでも書きましたが、1964年の東京オリンピックを境に、スポーツと共に企業成長が歩めるように、社内にスポーツ競技チームを誕生させて会社のチームとして保有することが増加しました。これが、現在のサッカーやバレーボール、バスケットボールをはじめとするプロ競技の基礎となったと言えるでしょう。

 大きな要因は東京オリンピックで活躍した女子バレーボールチーム「東洋の魔女(大日本紡績株式会社貝塚工場の日紡代表女子バレーボールチーム/現:東レアローズ女子バレーボール部)」※1の大きな宣伝効果に多くの企業が気付いたからです。特に多くのB to B企業が社内にスポーツチームを編成し、ブランド構築に運動部を活用していくようになりました。現在でも多くの企業が社内にチームを抱えていることは、皆さんもご存じの通りです。毎年元日に開催されるニューイヤー駅伝や、夏に開催される社会人の都市対抗野球大会などもその一つの例です。大学という組織においても「箱根駅伝」「出雲全日本大学選抜駅伝競走」などを通して、学校名が全国に知られることは言うまでもありません。一時的にバブル崩壊後、企業がスポーツチームを解散し、スポーツ支援から離脱していく事象も起きていましたが、企業スポーツチームとして新規参入も含めるとその数に大きな変動はないと言われています。企業にとっては、スポーツコンテンツをブランディングに活用する効果は十分にあると考えられています。ちなみに「会社員」として「企業選手」の立場で1920年のアントワープオリンピックに参加した選手の中で、日本人が歓喜と共に知ることとなったのは、硬式テニスの「熊谷一彌(三菱合資会社銀行部/現・三菱UFJ銀行)」と「柏尾誠一郎(三井物産)」で、熊谷はシングルス、および柏尾と組んだダブルスで銀メダルに輝きました。※2日本選手が獲得したオリンピック史上初メダルとして有名になりました。

おわりに

  「企業内スポーツ(実業団)」とは、企業がスポーツ選手を社員として雇用する形態で、スポーツの興行そのものを主たるビジネスとしないという点で「プロスポーツ」とは大きく異なります。また海外では、スポーツは地域に根差して活動するものという概念が普通です。各地域にプロチームが存在し、そのチームを各企業がサポートするスタイルです。チームに対して企業はサポートしており、そのコンテンツを利用して企業ブランディングに生かしているのは日本企業がスポーツ団体などをサポートするのと同様です。これは日本でも野球やサッカーは、その代表例かと思います。

 スポーツコンテンツはさまざま形で企業と深く関わっていますが、最近では「SDGs」というキーワードも広く知られ、その中でも「サステナブル経営」「健康経営」などの理念も重要な経営ファクターとなってきています。働く社員の健康やモチベーションを向上させるための企業戦略としても、スポーツは深く関与しています。スポーツコンテンツと企業のつながりには今後もお互いのメリットを活用しながら形を変えながらもますます発展することになるだろうし、私自身もそれを期待しています。
スポーツコンテンツ・ブランディングに興味をお持ちでしたら、ぜひお声がけください、全世界どこでもサポートいたします。次回のコラムでは「アスリート・マーケティングビジネス」について書きたいと思います。

  1. 所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。
  2. また記事中の技術、手法等については、今後の技術の進展、外部環境の変化等によっては、実情と合致しない場合があります。
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著者プロフィール

プロフェッショナルズ執行役員奥田 東(おくだ はじめ)

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