J-CSV推進プロジェクト
「J-CSV専門情報サイト“J-naradewa”」インタビュー
いい会社に、いい社会に
つながるヒントを生み出していきたい。

一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 客員教授 名和 高司先生(左)、 コミュニケーションデザイン 橋本 和人(右)

朝日広告社は企業の経済価値と社会価値を共に高め、サスティナブルな成長戦略を描く「CSV 経営戦略」に着目し、一橋大学大学院国際企業戦略研究科で日本のCSV企業戦略研究(J-CSV)の第一人者 である名和高司特任教授監修のもと、J-CSV専門情報サイト「J-naradewa(ジェイ・ナラデワ)」を開設。日本ならではのCSVを考察し、企業のCSV活動を支援している。広告会社がCSVを研究し、企業サポートに活用する意義について、名和先生に話を伺った。

その企業ならではのCSVを考え、サポートしていく。
それがASAKOならではのこと。

橋本 : 企業のCSV戦略をサポートするのはコンサルティング会社が一般的だと思われていますが、広告会社の強みとしては「コミュニケーション技術」があること。企業やブランド、商品の言いたいことを「社会文脈に織り込む技術」が我々にはあると考えているのですが。

名和先生 : その通りだと思います。現に朝日広告会社は、企業に求められる社会性の高まりを踏まえ、独自の社会価値ブランディングメソッド「Ship Branding Method® 」を構築されました。その診断結果に基づくパーパス設定、価値の発見・創出、コミュニケーション戦略 など、一貫したソリューションサービスを提供しています。しかも、「J-naradewa」という独自のメディアを持ち、日本ならではのCSVを浸透させようとしている。CSVならASAKOというブランドができあがりつつありますね。

橋本 : それも浸透させていきたいところですが(笑)。

名和先生 : どこの企業もいい会社だと思われたいわけで、社会に対してどう貢献しているかを、思いっきり世の中に伝えたい思いはある。でも、そのストーリーづくりができていない。苦手なんですよね。先日伺ったある企業も、立派なモノをつくっているかもしれないが、裏側にあるこだわりや想いが見えてこない。「モノを見て解ってくれればいい」と言うけど、こちらには響いてこない。だから企業のみなさんに言うんです。ちゃんとこだわりがあるなら、ストーリーにして世の中にフィーチャーしましょうと。

橋本 : 自社の良さに気づきにくいことはあるかもしれません。ですから「見つける」ことが私たちの役割だと思っています。企業の存在意義まで立ち返って価値を見つけ、活動を見立て直す指針にしたり、新たな価値を創る立脚点としたり。「パーパス」を提供するのがCSVの一歩かと。

名和先生 : 多くの企業が成果としてあれもやってます、これもやってますとアピールしたがる。フラクタルにいろんなことが出てくるけど、一体何が言いたいのかコンセプトとして出てこない。そういう企業を朝日広告社がお手伝いしたらいいと思います。

橋本 : 実はクリエイティブの可能性がもっと広がるといいなと思っていまして。企業の事業、ビジネス自体も再構築するようなこともサポートできないかと。私たちは広告会社として、広告の範疇の中でずっとやってきましたが、コミュニケーション技術をもっと広い捉え方で企業に活用してもらいたい、またできれば同じリスクテイクの中で一緒になって社会に価値を創出したい、そういう想いがあって、今CSVを研究、実践に向けてソリューション開発をしているところです。

名和先生 : それもASAKO“ならでは”のことですね。請負的な営業部隊だけでなく、CSVクリエイティブの弾込め部隊もいる。CSVを考慮したコンセプトメイキングやPRのプロ集団がいるユニークネス、それが強みだと思います。

橋本 : 「J-naradewa」を立ち上げたおかげもあり、いろんな企業からお話を伺うことができています。そこには共通するところもあったり、学ぶべきところも多かった。そうした場と経験があることで、さまざまな企業からお声がけいただくようになりました。

SDGsに当てはめない。
自分たちの信念に基づいて伝える。

橋本 : 広告は世の中の空気、雰囲気づくりができるので、今までの常識や視点を変えたりすることができると思うんです。企業のビジネス環境が良くなったり、優位性がそこで生まれたり。企業自体ではできないことをサポートするのが我々の仕事かと。

名和先生 : それが広告代理店の役割ですね。CSVというテーマの立ち位置で、世の中の流れをつくる。CSVに取り組んでいるつもりでも、結果CSRにとどまっている企業は多い。そこをASAKOがプロとしてアドバイスし、導いていくことをされたらいいかと思います。いま、SDGsを意識し17のカードに当てはめようとしている企業もありますが、いかがなものでしょう。3年くらい前ならいいですが、今さら遅いし、それだけを意識してもしょうがない。

橋本 : 確かにそうですね、オリジナルの強みを“ならでは”のメッセージで伝えることは必要だと思います。ある企業のトップの方もおっしゃっていましたが、SDGsの17の項目だけでは足りないと。独自性のある企業は、そういうところに違和感を憶え、独自のメッセージを発信している。

名和先生 : あの17枚のカードにないことを言って欲しいですね。この国には長い伝統を持つ企業も多い。なのにそのカードを意識しすぎて、自身の「伝統文化」をフィーチャーしていなかったり。IRでもそれは平板ですが、そこを突き抜けた自社らしいメッセージを磨こうというのは企業に刺さると思うんですよ。今みなさん迷走している。世の中みんな。今こそ、もう少し特徴あるところを突き抜けて出す時期に来ていると思います。

橋本 : そうかもしれません。

名和先生 : そもそも日本の企業はコーポレートブランディングが得意ではないんですよ。まずプロダクトがあるからその広告を打とうとする。ブランディングはプロダクトだけでなく、コーポレートの方こそ大事なのに。隠れてしまっている。もっとコーポレートメッセージをPRすることを考えてほしいと思います。

「J-naradewa」から可能性のリンクを広げて。

橋本 : 「J-naradewa」で取材させていただいた企業も増えつつあり、いずれはネットワークを大きくしていけたらと。ここをプラットフォームとして様々なコンテンツを発信し、企業と企業、企業と人をつないで、いろんな価値を創出していけたらと考えています。

名和先生 : イベントをするのも効果的かもしれませんね。「J-naradewa」に登場する人たちが集まって、例えばそれぞれの地方創生のテーマに沿った形でやるとか。

橋本 : “ならでは”のことを体現する方々が生の声で語るんですね。リアルなイベント、いいかもしれません。

名和先生 : 現在、私も地方創生のプロジェクトに関わっていますが、地方の街や企業にはいろんな資産があります。潜在的なものをいかに掘り起こし、PRしていくか。そこにもCSVの視点でサポートしてあげられるといいですね。

橋本 : そういう方法論の一つとしてデジタルも重要になる。

名和先生 : みんな気にしてるけど、どう使っていいかわからないんですよ。CSVとデジタル。それが鍵になるとは思いますね。

橋本 : 広告だと、アドテクノロジーみたいな話になってしまって。そうじゃないデジタルのあり方を考えていきたいです。

名和先生 : リアルなものとオンラインを結ぶ。そういう話は企業のみなさんは聞きたくなるのではないでしょうか。

橋本 : デジタルもリアルも。いろんな価値をつなげていけたらと思っています。

名和先生 : 「J-naradewa」が起点となって、CSVの知の集積をどうフラクタルに広げていくか。イベントをするにしても一過性で終わらないものになればいいですね。「J-naradewa」からいろんな可能性のリンクが生まれ、これからの日本の企業や世の中がよいものになっていく。そのきっかけになることを期待しています。

「J-naradewa」監修:
一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 客員教授 名和高司先生

名和高司先生

東京大学法学部卒、ハーバード・ビジネス・スクール修士。三菱商事の機械(東京、ニューヨーク)に約10年間勤務。 2010年まで、マッキンゼーのディレクターとして約20年間、コンサルティングに従事。自動車・製造業分野におけるアジア地域ヘッド、ハイテク・通信分野における日本支社ヘッドを歴任。『高業績メーカーはサービスを売る』(2001、ダイヤモンド社、共著)、『戦略の進化』(2003、ダイヤモンド社、共著)、『学習優位の経営』(2010、ダイヤモンド社)、『日本企業をグローバル勝者にする経営戦略の授業』(2012、PHP研究所)、『失われた20年の勝ち組企業100社の成功法則 「X」経営の時代』(2013、PHP研究所)、『CSV経営戦略』(2015、東洋経済新報社)、『成長企業法則~世界トップ100社にみる21世紀型経営のセオリー』(2016、ディスカバー・トェンティワン社)、『コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法』(2018、ディスカバー・トェンティワン社)、『企業変革の教科書』(2018、東洋経済新報社)など著書・寄稿多数。

※所属等は執筆当時のもので、現在とは異なる場合があります。