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2025.12.02

ペルソナデザイン完全ガイド|ターゲットとの違いと効果的な作り方【BtoBマーケティング】

本記事の要約

ペルソナデザインとは、データの背後にある「人間の物語」を可視化し、ブランドが共感される意味を設計するための実務的な手法です。

単なるターゲット設定ではなく、生活者や意思決定者の価値観・感情・ライフヒストリーを描き出すことで、「なぜ選ばれるのか」を明確化します。

データを“人間化”することで、ブランドは「数字で動く」から「共感で動く」へと進化します。

目次

 

はじめに|ペルソナデザインの重要性とターゲットの違い

近年、広告の効果が低下し、製品やサービスの差別化が難しくなっています。

 

一方で、データ活用が進むほどに、消費者を「数値」や「属性」として扱う傾向が強まり、ブランドが本来向き合うべき“人間らしさ”が見えにくくなっています

 

この状況で求められているのは、企業視点での「売り方」や「機能訴求」ではなく、生活者の文脈から意味を設計する視点です。

 

つまり、「誰に売るか」ではなく、「どんな人の、どんな気持ちに寄り添うか」という“ターゲット逆算”の発想です。

 

ペルソナデザインとは、単に顧客像を作ることではなく、生活者の人生や感情の構造を理解し、ブランドがどのように関与できるかを“物語として設計する”行為です。

 

本記事では、ペルソナを単なるマーケティングツールではなく、ブランドが共感される意味を設計するための実務的な技術として再定義します。

 

その上で、実際に活用できる設計プロセス、項目設計、事例までを体系的に解説していきます。

 

 

ペルソナとは何か?ターゲットとの概念的な違いと役割

「ペルソナ」とは、ブランドに対して感情移入を促し、長期的なファンになってくれることが期待できる象徴的な顧客像を指します。

 

単なる“顧客の代表”ではなく、ブランドが感情移入を積み上げ、共感関係を築いていくための物語の主人公ともいえる存在です。

 

多くのマーケティング現場では、「ターゲット」や「セグメント」と混同されることがありますが、両者の役割はまったく異なります。

 

ターゲットは、性別・年齢・職業・居住地などの属性をもとにした「市場としての塊」です。一方でペルソナは、その塊の中にいる“ひとりの生身の人間”を描き出し、その人の感情や価値観、日常の文脈を理解するための手法です。

 

たとえば、「30代女性・都市部・会社員」というターゲット設定だけでは、どんな生活を送り、何に悩み、どんな瞬間にブランドと出会うのかは見えてきません。

 

しかし、ペルソナを描くことで、「朝の慌ただしさに自己嫌悪を抱えながらも、家族のために小さな幸せを積み上げたい」といった感情構造までを具体的に理解できます。

 

この“感情への距離の近さ”こそが、ペルソナ設計の本質です。

 

 

 

 

 

BtoBでの応用:バイヤーペルソナとユーザーペルソナの設計

また、BtoB領域では、バイヤーペルソナ(購買決定者)とユーザーペルソナ(実際の利用者)を分けて設計することが重要です。

 

購買の意思決定には、現場の課題、上層部のリスク回避、導入後の運用負担など、複数の人間の思考や感情が関与します。

 

それぞれの立場で「何を重視し、何を恐れているか」を構造的に描き分けることで、訴求内容と意思決定プロセスを一致させることができます。

 

ペルソナデザインは、単なる“理想の顧客像づくり”ではありません。

 

それは、ブランドと生活者(または顧客)の間にある“共感を設計するための思考法”であり、あらゆる戦略の出発点となる設計思想なのです。

ペルソナデザインのメリット|顧客理解と効果的訴求の土台

ペルソナは、単なるプロフィールや統計データの集積ではありません。ブランドがどんな価値を提供し、どんな感情を動かすのかを設計するための“物語の設計図”です。

 

ここで重要なのは、「誰なのか」だけでなく、「なぜそう考えるのか」「何を大切にしているのか」を構造的に描くことです。

 

以下の項目を押さえることで、ペルソナは“静的なデータ”から“生きた人間像”へと変わります。

 

 

ペルソナ設計の基本項目①基本属性:名前・年齢・職業・家族構成・居住地

 

まずは、生活のリアリティを担保するための基本情報を設定します。

 

架空の人物であっても、名前や居住地、家族構成などを具体的に描くことで、チーム全員が“実在する人”としてイメージを共有しやすくなります。

 

 

ペルソナ設計の基本項目②パーソナリティと価値観:誇り・こだわり・不安

 

その人の行動を支える「感情」を言語化します。どんなことに誇りを感じ、何にこだわり、どんな不安を抱えているのか。

 

これらを丁寧に掘り下げることで、マーケティングは「属性の分析」から「価値観の共感」へと進化します。

 

 

ペルソナ設計の基本項目③ライフスタイルと情報源:どこで・誰と・何を見ているか

ペルソナの一日はどのように流れているか、どんな人と関わり、どんなメディアやSNSから影響を受けているのか。

 

行動や情報接触のパターンを把握することで、「どのタイミングで」「どんな形で」ブランドが関与できるかが見えてきます。

 

 

ペルソナ設計の基本項目④ブランド態度:カテゴリー/競合/自社への印象

対象カテゴリーに対してどんな印象を持っているのか。競合ブランドや既存の代替手段をどう評価しているのか。そして、自社ブランドにどのような期待や距離感を抱いているのか。

 

これらを整理することで、ブランドの立ち位置と“感情的なホワイトスペース”を明確化できます。

 

 

ペルソナ設計の基本項目⑤ライフヒストリー:価値観を形づくった出来事

 

ペルソナのこれまでの人生経験や、価値観を形づくった出来事を描きます。

 

たとえば、「学生時代の挫折が努力の価値観を生んだ」「家族との経験が“安心感”への執着を育てた」などの過去の物語を理解することで、表面的な態度ではなく、その人の“心の文脈”を読み解けます。

 

 

ペルソナ設計の基本項目⑥ライフビジョン:理想の自己像と社会像

ペルソナが「本当はどうなりたいのか」「どんな社会を望んでいるのか」を描く項目です。これは、ブランドが共に目指す“未来の物語”を定義するパートでもあります。

 

たとえば、敏感肌の女性であれば「肌を気にせず笑える日常」――この“願いの形”こそが、ブランドの使命を導く鍵になります。

 

 

共感マップ/JTBDとの接続で“感情と行動”をつなぐ

ペルソナは、単独で存在するものではありません。

 

「何を見て・聞いて・感じているか」を整理する共感マップや、「どんな状況で・なぜ・何のために利用するのか」を明確にするJTBD(Jobs to be Done)**とつなげて考えることで、感情と行動の橋渡しを設計できます。

 

ペルソナ設計の目的は、“情報を埋めること”ではなく、“共感を再現すること”。

 

数字や属性では捉えきれない人の物語を言語化することで、ブランドは初めて「心に届く設計図」を手に入れることができるのです。

ペルソナの作り方|ステップ・手法・必要なデータ

ペルソナデザインは、感覚や勘に頼るものではなく、チーム全体で“共感を再現するためのプロセス”です。

 

以下の8ステップを踏むことで、ペルソナを「属人的な仮説」から「共有可能な設計図」へと昇華させることができます。

 

 

 

 

ステップ1|セグメンテーション:市場・消費者の文脈を整理

まずは、市場全体を俯瞰し、どの層に“意味の余白”があるのかを見極めます。

 

年齢・性別・ライフステージ・価値観など、複数の軸で分類し、生活者を「単なる属性の集まり」ではなく、「共通する課題や欲求を持つ群」として整理します。

 

この段階では、特定の人物像を決める必要はありません。

 

 

ステップ2|ターゲット設定:恐れずに絞る判断基準

次に、セグメンテーションの中から、最もブランドが響きそうな層を特定します。

 

「ターゲットを絞る=販売機会を減らす」と誤解されがちですが、実際は逆です。焦点を定めることで、ブランドの価値提案が明確になります

 

 

ステップ3|参加型ワークショップ:ペア・インタビュー/カード/プロトタイプ

有望なターゲットが定まったら、生活者を交えたワークショップを実施します。

 

形式的なインタビューではなく、ペア・インタビューカードエクササイズプロトタイピングなどを活用し、参加者が自ら語り、表現する場をつくるのがポイントです。

 

「何を買ったか」ではなく、「どんな気持ちで選んだのか」「どんな瞬間に迷ったのか」といった感情と文脈を引き出します。

 

 

ステップ4|KJ法でグルーピング:感情構造を発見する

 

ワークショップで得られた発話やキーワードをポストイットなどに書き出し、KJ法の要領でグルーピングします。似た感情や経験をまとめることで、生活者が抱える「共通の感情構造」や「思考の流れ」が浮かび上がります。

 

ここで大切なのは、“言葉の数”を増やすことではなく、“意味のつながり”を見出すことです。

 

 

ステップ5|類推エクササイズ:感情の背景を解釈する

グループ化した要素をもとに、「なぜこの発言が生まれたのか」「その感情の背景に何があるのか」をチームで類推していきます。

 

単なる観察にとどめず、「どんな価値観や経験がその行動を支えているのか」を考え抜くことで、ペルソナの内的論理を明らかにします。

 

ここで生まれるのが、ブランドが関与できる“感情の接点”です。

 

 

ステップ6|構造化:分岐点を特定しペルソナスケルトンを作成

類推によって得た洞察をもとに、要素同士の因果関係を線でつなぎます。

 

「どの価値観がどんな行動を生み、どんな矛盾を引き起こしているのか」を構造的に整理し、ペルソナの骨格=ペルソナスケルトンを作成します。

 

この際、価値観を分ける“分岐点”を見極めることが重要です。たとえば、「効率を重視する人」と「体験を重視する人」では、同じ商品でも共感する理由が異なります。

 

 

ステップ7|ペルソナ設定シート化:物語化と写真選定でリアリティを付与

ペルソナスケルトンをもとに、ペルソナ設定シート(基本文書)を作成します。

 

氏名・プロフィール・価値観・ライフヒストリー・ライフビジョンを盛り込み、チーム全員が感情移入できる “物語としての人物像”に仕上げます。

 

この段階では、ペルソナを象徴する写真も必ず設定します。ビジュアルが加わることで、記憶と共感がより深く定着します。

 

 

進行のコツ:10名規模・心理的安全性を確保する

ワークショップやインタビューにおける最適な人数は、概ね10名程度です。10名を超えると新しい発見(finding)の発生率が急激に低下し、深い洞察が得にくくなります。

 

進行時のポイントは、「問いの深さより、空気の安心感」。“話してもいい”と感じられる心理的安全性を設計することが、何よりも本音を引き出す鍵となります。

 

この8ステップを通して、“企業が語りたい物語”ではなく、“生活者が共感できる物語”を形にしていくこと。それこそが、真に機能するペルソナ設計の第一歩となります。

BtoBマーケティングにおけるペルソナ活用事例

BtoBやSaaS領域のマーケティングでは、しばしば「法人が顧客」として扱われがちです。しかし、意思決定の現場には、必ず“人”がいます。

 

どんなに合理的な購買プロセスであっても、そこには感情・不安・リスク回避といった人間的な心理が介在します。

 

したがって、BtoBのペルソナ設計とは、“企業”を描くことではなく、“意思決定を行う人間のリアリティ”を描くことなのです。

 

 

誰が使い・誰が買い・誰が決裁するのか(複数ペルソナ構造)

 

BtoBやSaaSの購買は、単一の意思決定者によって完結することはほとんどありません。

 

実際には、「導入を検討する人」「現場で使う人」「最終的に承認する人」がそれぞれ存在し、異なる視点・目的・評価基準で動いています。

 

たとえばSaaS導入を例に取ると、次のような構造が一般的です。

 

  • ユーザーペルソナ(使う人):実際の利用担当者。操作性やサポート、業務効率化への効果に敏感。
  • バイヤーペルソナ(買う人):導入を推進するミドル層。社内調整やコスト対効果を重視。
  • デシジョンペルソナ(決裁者):経営層・管理職など最終承認者。ROI・リスク・戦略整合性に焦点を当てる。

 

このように、BtoBのペルソナ設計では、複数のペルソナを“関係構造”として描くことが不可欠です。

単独の人物像に焦点を当てるのではなく、社内における力学やコミュニケーションの流れまで可視化することで、より精度の高い顧客理解につながります。

 

 

組織のKPI・リスク回避・現状維持バイアスの扱い

BtoBでは、「個人の意思」よりも「組織のKPI(評価指標)」や「リスク回避の文化」が意思決定を左右します。ここで重要なのは、企業の“論理的な要件”だけでなく、“非合理な心理的要因”をも描き出すことです。

 

たとえば次のような心理バイアスが頻繁に見られます。

 

  • リスク回避バイアス:新しいツールを導入して失敗するより、現状維持を選ぶ方が安全だと感じる。
  • 責任回避心理:結果が悪くても「前例に倣った」と言える方が安心。
  • KPI偏重思考:短期の成果指標を優先し、本質的な改善を後回しにする。

 

これらは定量的なロジックではなく、組織文化に根づいた感情構造です。

 

したがって、BtoBペルソナ設計では、「どんなデータを評価しているか」だけでなく、「なぜその判断に安心を感じるのか」まで掘り下げる必要があります。

 

 

ICP→アカウント層→人の層(Buying Committee)で設計する

BtoBのペルソナ設計を体系的に整理するには、3層構造で考えるのが有効です。

 

  1. ICP(Ideal Customer Profile)層:企業としての理想像
    業種・規模・課題・成熟度など、事業単位での最適顧客を定義。「どの企業を相手にするか」を明確にするステップです。
  2. アカウント層:部門・チームとしての文脈
    営業・マーケティング・情報システムなど、導入に関わる部門の目標や課題を特定。部門ごとの“成果責任”や“課題認識の差”を可視化します。
  3. 人の層(Buying Committee):実際の関係者たち
    意思決定に関与する複数の人物を特定し、それぞれの動機・不安・評価軸を描きます。ペルソナを一人の「典型像」としてではなく、“複数人の相互作用”として捉えるのがポイントです。

 

この構造に基づけば、SaaSやBtoBビジネスでも、「導入を阻む心理」や「決裁を動かす感情」を的確に把握できます。

 

BtoBペルソナとは、企業のロジックを描くものではなく、組織の中で意思決定を担う“人間の物語”を描くものです。

 

合理と非合理のあいだにある“人の葛藤”を理解できたとき、あなたのブランドは初めて“選ばれる理由”を手にすることができるのです。

 

 

 

 

ペルソナから戦略立案までの具体的な活用法

インサイトやペルソナデザインの目的は、単に「顧客を知ること」ではありません。生活者や意思決定者の “感情構造を再定義し、意味を設計し直すこと”です。

 

ここでは、3つの事例を通じて、「機能訴求」から「意味の再設計」への転換プロセスを紹介します。

それぞれのケースを、Tension(葛藤)→ Truth(心理の核心)→ Turn(転換)→ Move(行動・提案)で整理しています。

 

 

 

 

① マルチビタミン:機能→「感謝を託すツール」へ

  • Tension| 忙しい毎日で、夫との時間が減り、つい八つ当たりしてしまう自分に罪悪感を覚えている。
  • Truth| 本当は「健康のために飲むもの」ではなく、「いたわりや感謝を伝えたい相手」がいる。
  • Turn| マルチビタミンを“健康補助食品”ではなく、“感謝を託す小さなギフト”として再定義。
  • Move| 「マルチビタミン=自分と家族をいたわるコミュニケーションツール」へ。

 

この発想転換により、「成分」ではなく「関係性」を中心としたブランドストーリーが成立。“健康を贈る”という情緒的価値が、購買理由の再設計につながります。

 

 

② 敏感肌スキンケア:薬効訴求 → 「自信を取り戻す体験」へ

 

  • Tension| 肌荒れに悩み、スキンケアが“我慢の連続”になっている。「肌が弱い=女性としての自信が持てない」。
  • Truth| 本当に求めているのは「治す薬」ではなく、「自分を肯定できる体験」。
  • Turn| スキンケアを“皮膚科学の延長”から“自信を取り戻す行為”へ。
  • Move| 「敏感肌でも、キレイを楽しめる社会へ」というライフビジョンを掲げ、デザイン・コピー・体験を再構築。

 

「薬効訴求」から「心理的回復価値」への転換によって、ブランドの文脈を拡張。ユーザーが“肌ではなく自分自身を整える”感覚を得られるブランドへの進化につながる。

 

 

③ SaaS:機能比較→「リスク最小化/責任回避の安心設計」へ

 

  • Tension| 「新しいツールを導入して失敗したら、自分の責任になる」という不安。
  • Truth| BtoBの購買は合理的に見えて、“責任を取りたくない心理”に支配されている。
  • Turn| SaaSを「最新・高機能ツール」ではなく、「失敗しない仕組み」「他部門を説得しやすい選択肢」として位置づける。
  • Move| 「導入しやすさ」や「上申資料テンプレート」など、“安心して導入できる構造”を設計。

 

“プロダクトの優位性”ではなく、“意思決定の安心設計”を提供する発想へ。顧客企業における導入スピードと定着率の向上につながる。

 

 

3つの事例の共通点:機能強化より“意味の再定義”がブランドを動かす

3つの事例に共通するのは、「機能の強化」ではなく、「意味の転換」です。生活者やビジネスパーソンのペルソナを描き“未言語の心理”を捉え直すことで、ブランドは“同質化競争”を抜け出し、「自分たちにしか語れない価値」を再定義できます。

 

ペルソナやインサイトの発見は、データ解析ではなく、“感情を設計する技術”なのです。

 

 

よくある課題と解決策|組織内共有と活用浸透の鍵

ペルソナデザインの目的は、マーケティング施策の一部を描くことではなく、「ブランド体験の全体設計」に一貫した感情の流れを与えることです。

 

どれほど優れたインサイトがあっても、それが広告だけで完結してしまえば、一過性の共感に終わります。

 

大切なのは、ペルソナで描いた“人物の物語”を、カスタマージャーニー全体に貫くこと。つまり、「誰の、どんな感情を、どの接点で動かすのか」を明確にすることが、ブランドのLTV(顧客生涯価値)を高める鍵となります。

 

 

ペルソナをジャーニーの起点、インサイトを終点に置く

カスタマージャーニーを設計する際、最も重要なのは「起点」と「終点」の置き方です。

 

  • 起点:ペルソナ(誰の体験か)
    その人の価値観・矛盾・ライフヒストリーを物語として定義し、ブランド体験の主語に置く。
  • 終点:インサイト(どんな意味を届けたいか)
    ペルソナの“内的動機”とブランドの価値をつなげ、行動や信頼が持続する構造をつくる。

 

この起点と終点をつなぐ線上に、検索・店頭・広告・使用・共有といった複数の接点(タッチポイント)が存在します。その一つひとつが、“体験の断片”ではなく、“感情の流れ”としてつながっていることが重要です。

 

ブランドが「買われる」存在から「選ばれ続ける」存在へと進化するためには、この感情の一貫性が欠かせません。

 

 

タッチポイント別の感情|安心/誇り/確信/満足/共感

 

従来のKPIは「接触回数」「クリック率」「コンバージョン」など、行動の量的指標に偏りがちでした。

しかし、真にブランド体験を設計するには、“感情の質”が必要です。以下は、カスタマージャーニーに感情をつなげる一例です。

 

 

 

 

このように、各接点で“どんな感情を動かしたいのか”を定義することで、マーケティング活動は単なる認知・獲得活動ではなく、「共感を設計する体験デザイン」へと変わります。

FAQ | ペルソナデザインに関する疑問や課題

Q1. ターゲットとペルソナの違いは?

 

ターゲットは「市場の塊」、ペルソナは「物語を持つ一人の人間」です。

 

ターゲットは年齢・性別・職業など“属性”による分類であり、マーケティング上の方向性を決めるための指標です。一方ペルソナは、そのターゲット層を代表する“象徴的な顧客像”として、感情・価値観・人生背景までを描き込みます。

 

目的は、分析ではなく共感の再現。企業目線ではなく、生活者目線で発想を設計するためのツールです。

 

 

Q2. ペルソナは何名作るべき?

 

原則として、1ブランドにつき1〜3名</>が理想です。

1名で物語を統一できる場合はそれで十分ですが、購買・利用・推奨など行動フェーズが異なる場合は、役割ごとに作り分けます。

 

BtoCなら「主要顧客」と「潜在層」、BtoBなら「使う人」「買う人」「決裁者」の3名構成が基本です。

 

数を増やしすぎると焦点がぼやけるため、“誰の物語を軸に語るか”を明確にすることがポイントです。

 

 

Q3. BtoBでの作り分けは?

BtoBでは、意思決定が一人ではなく複数人の合議(Buying Committee)によって行われます。そのため、以下の3層構造で設計します。

 

  1. ユーザーペルソナ(使う人):現場担当者。操作性・効率・サポート重視。
  2. バイヤーペルソナ(買う人):導入推進者。費用対効果・社内調整を重視。
  3. デシジョンペルソナ(決裁者):経営層。ROI・リスク・戦略整合性を重視。

 

この3者の心理構造を描き分けることで、「導入される理由」だけでなく「導入が止まる理由」まで明確にできます。

 

 

Q4. 更新頻度の目安は?

 

ペルソナは “固定文書”ではなく、“学習ドキュメント”です。少なくとも半年〜1年に一度の更新を推奨します。ただし、以下の変化が生じたタイミングでは即時見直しが必要です。

 

  • ブランド戦略やプロダクトラインの転換
  • 社会情勢・ライフスタイルの変化
  • 新たなデータや顧客行動の兆しが観測されたとき

 

定期的なアップデートを通じて、ペルソナを「作って終わり」ではなく、組織が学び続ける“共感の装置”として運用することが重要です。

まとめ | 成果に直結するペルソナデザインの実践ポイント

データがあふれる時代において、マーケティングの本質は「分析」ではなく「理解」です。数値やロジックで市場を区切るだけでは、ブランドは“誰のために存在するのか”を見失ってしまいます。

 

ペルソナデザインとは、数字の奥にいる「ひとりの人間」へ焦点を戻す技術です。

 

それは、データを否定することではなく、データを人間化する行為。「数値」から「物語」へ、「分析」から「共感」へ――その転換こそが、ブランドを動かす原動力になります。

 

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PROFILE 著名者プロフィール

羽田 康祐 はだ こうすけ

  • ストラテジックプランニングディレクター
著者について詳しく見る
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