ソリューション・事例

2025.11.30

BtoB企業のブランディング戦略|ソートリーダーシップで信頼される存在になる実践法

本記事の要約

企業ブランディングとは、企業理念(PMVV)を起点に、「なぜこの会社を選ぶのか」という理由を設計し、それを言葉・デザイン・行動へ落とし込んでいく活動です。

企業理念(PMVV)→Brand PRISM→ステートメント→VI→運用の8ステップで一貫性を実装し、社内の誇りと社外の共鳴を高め、採用・開発/製造・販売・社会・資金調達を連鎖させていきます。

目次

はじめに|BtoB企業のブランディング戦略と信頼構築の重要性

BtoB企業のブランディングにおいて最も重要なのは、「知られること」ではなく、「信頼され、期待されること」です。

 

それらをつくる鍵が、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)です。

 

単なる情報発信ではなく、「の分野なら〇〇社がオーソリティだ」と思われる存在になること。それが、受注や採用、パートナーシップなど、あらゆる接点の“選ばれる理由”になります。

 

この記事では、BtoBブランディング潮流である、ソートリーダーシップを軸にしたブランド構築の考え方と実践ステップを解説します。

BtoB企業特有のブランド課題とソートリーダーシップの役割

市場が成熟化し、機能や価格では差別化しづらい時代です。BtoB企業の多くが「良い製品をつくっているのに選ばれない」というジレンマを抱えています。

 

その原因は、価値の「見えにくさ」にあります。技術やサービスの優位性が伝わらず、価格や条件で比較されてしまう。

 

しかし、顧客が本当に求めているのは“安さ”ではなく、信頼できるパートナーです。この“信頼”を構築する鍵こそが、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)です。

 

単なる商品情報やノウハウ提供ではなく、「この業界はどこへ向かうべきか」「何を信じて事業を進めているのか」を語る、コンセプトやビジョンの発信。それは、企業を“供給者”から“導き手”へと変える力を持っています。

 

かつてのBtoB取引は、スペック比較と営業力で成立していました。しかし今、顧客は情報を自ら調べ、比較し、選択します。その過程で「どの企業の考えに共鳴できるか」「どの企業が信頼できるか」が、意思決定の基準になってきています。

 

つまり、ソートリーダーシップとは、技術や製品だけでなくパーパスやビジョンで差をつけるブランディング戦略です。

 

発信を通じて顧客に“思想の拠りどころ”を与えることで、比較されない関係性――すなわち「指名で選ばれる状態」を生み出すことができます。

 

この“思想による差別化”が、BtoBブランディングにおける次の競争優位の源泉なのです。

ソートリーダーシップとは?BtoBで信頼を勝ち取るためのリーダーシップ戦略

ソートリーダーシップ(Thought Leadership)とは、単に「知識を持っている人(企業)」ではなく、「業界の未来を語り、導く存在」を指します。

 

製品や技術の優位性ではなく、「どんな思想で、どんな社会を実現しようとしているのか」を発信し、市場や顧客の思考に“方向性”を与えること。

 

それが、BtoB企業におけるソートリーダーシップの本質です。

 

 

 

❶ 情報発信との違い:語るのではなく、導く

一般的な情報発信やコンテンツマーケティングは、「知ってもらう」ことが目的です。一方、ソートリーダーシップは、「考え方の基準を提供する」ことを目的としています。たとえば、

 

  • 「当社の技術はこうです」ではなく、
  • 「この技術によって、業界はどのように変わるのか」「顧客や社会にどんな新しい価値が生まれるのか」。

 

そうした“思想”を提示することで、企業は専門性 × 信念の両面から信頼を獲得します。

 

 

❷ 信頼は「正しさ」ではなく「姿勢」から生まれる

顧客が求めているのは、常に「唯一の正解」ではなく、「この企業の考え方なら信頼できる」という信頼感です。

 

ソートリーダーシップは、まさにその“思想の一貫性”を可視化するブランディング手法です。

 

意見を表明する勇気や、業界課題への真摯な姿勢が、企業の人格(Brand Personality)として伝わり、結果として、選ばれる理由になります。

 

 

❸ BtoBにおけるソートリーダーシップの役割

BtoBの購買プロセスは、個人ではなく複数の意思決定者によって行われます。つまり、感情や好感度だけでなく、論理+信頼+共鳴」の三軸が求められます。

 

ソートリーダーシップは、この三軸を同時に満たす最も効果的な方法です。

 

• 論理:専門知識や実績を通じて“正当性”を提示する
• 信頼:一貫した思想やスタンスで“誠実さ”を伝える
• 共鳴:社会的意義や未来像で“感情的な共鳴”を生む

 

こうして、BtoB企業は「情報提供者」から「知のパートナー」へと進化します。

 

 

❹ ソートリーダーシップがブランドにもたらすもの

1. 差別化ではなく、独自化を実現する
─ 技術や価格でなく、思想や価値観で選ばれるブランドへ。

 

2. 営業の前に信頼を築く
─ “会う前から信頼される状態”をつくる。

 

3. 採用や共創にも波及する
─ 企業の思想に共感した人や企業が自然と集まる。

 

つまり、ソートリーダーシップとは「発信」ではなく、「文化の可視化」です。それは企業の“考え方”を社会に開くことで、信頼を長期的に積み上げていくブランド戦略なのです。

ソートリーダーシップがBtoBブランディングを強化する4つの理由

商談やパートナーシップ、採用など、あらゆる接点で問われるのは、「この企業は信じていいか」「長期的に、ともに歩めるか」という判断基準です。

 

その信頼を積み上げるための最も強力な手段が、ソートリーダーシップです。ここでは、BtoBブランディングを強くする4つの理由を解説します。

 

 

❶比較されない立場をつくる——「考え方」が差別化を超える

技術や価格は、時間とともに模倣されます。しかし、“考え方”や“価値観”は模倣できません

 

たとえば「持続可能な製造業の未来をつくる」「人の創造性を支えるテクノロジーを社会に」など、自社の“信念”や“目指す方向”を明確に語れる企業は、市場の中で独自の文脈を築きます。

 

ソートリーダーシップは、スペック競争から価値観競争への転換を生み出し、“指名で選ばれる”ブランドポジションを確立します。

 

 

営業活動の前に信頼を得る——“認知前接触”の力

かつて営業は「出会ってから信頼をつくる」ものでした。しかし今は、「出会う前から始まっている」時代です。

 

検索・SNS・専門メディアなどで顧客が情報収集する段階から、企業の“考え方”や“姿勢”に触れることで“信頼の予備接触”が起こります。

 

つまり、ソートリーダーシップは営業活動の前段階でのブランディンとも言えるのです。

 

「この企業のビジョンには一貫性がある」「業界をよく理解している」と感じてもらえれば、初回商談の段階ですでに心理的ハードルが下がり、受注確率も高まります。

 

 

❸採用ブランドとしても機能する——共鳴で惹きつける

ソートリーダーシップは外部向けの発信であると同時に、社員や求職者にとっての“共鳴の拠りどころ”にもなります。

 

自社の“ビジョン”や“価値観”を明確に発信することで、「この会社で働く意味」に共鳴した人材が自然と集まるのです。

 

求人広告や福利厚生よりも、「どんな誇りで仕事をしているのか」が採用・定着の決定要因になる時代です。考え方を発信する企業ほど、価値観やカルチャーにフィットした人材と出会いやすくなります。

 

 

❹社内の意識がそろう——ブランドが“共有言語”になる

ソートリーダーシップを社内外で一貫して発信することは、社員にとっての“共通の立脚点”をつくることでもあります。経営が語るビジョンが現場で共有され、営業・開発・広報が同じ考え方を起点に動くようになるのです。

 

それは単なる広報活動ではなく、ブランド文化の定着に他なりません。

 

社員一人ひとりが「自社が信じるもの」を自分の言葉で語れるようになったとき、ブランドは企業外だけでなく、企業の内側からも強くなっていきます。

 

顧客にとっての安心、社員にとっての誇り、社会にとっての意義。そのすべてを一貫した“考え方”でつなぐことで、BtoBブランドは“機能で選ばれる企業”から“信頼で選ばれる企業”へと進化します。

ソートリーダーシップを活かすための具体的ステップと実践ポイント

ソートリーダーシップは、単発の発信では生まれません。経営の意図と現場の実践をつなぎ、“一貫した考え方”を継続的に発信し続けるプロセスを設計することで、はじめて信頼が積み上がり、ブランドの資産になります。

 

ここでは、ASAKOが提唱する 「ソートリーダーシップ・ブランディング6ステップ」 を紹介します。

 

 

 

ステップ 1|目的と立ち位置を定義する ― なぜ発信するのかを明確にする

まず取り組むべきは、“発信の前に、意図を定義する”ことです。

 

多くの企業が「とにかく発信しよう」と動き出してしまいますが、目的が曖昧なままでは、メッセージが拡散し、共鳴も信頼も生まれません。最初に明らかにすべきは次の3点です:

 

  • なぜ発信するのか(目的):営業支援/採用強化/市場啓発など
  • 誰に届けたいのか(ターゲット):決裁者/現場担当者/同業界の専門家など
  • どのような立ち位置を目指すのか(ポジション):「技術の専門家」「業界の課題提起者」「共創のハブ」など

 

この段階で自社の「発信領域(Thought Domain)」を明確にすると、情報発信が“宣伝”ではなく、“立場表明”として社会に響きます。

 

 

ステップ2|ブランドアイデンティティを定義する ― 信頼の基点を言語化する

ソートリーダーシップの軸になるのは、企業の根底にある「信念」や「価値観」です。ここで整理すべきは以下の3要素です。

 

  • Purpose(存在価値):どんな社会を実現したいか
  • Personality(個性):どんな個性を大切にしているか
  • Value(提供価値):どんな価値を提供できるか

 

これらを明確にしておくことで、発信のテーマやトーンがぶれず、すべてのメッセージが一つの“考え方”につながるようになります。

 

 

ステップ 3|キーメッセージを設計する ― 一貫した語り口をつくる

ソートリーダーシップを継続的に発信するには、“何を語るか”を整理したメッセージ体系が欠かせません。おすすめは、次の3階層構造でメッセージを設計することです。

 

  1. Core Message(中核):企業の存在価値・価値観・信念
  2. Thematic Message(重点テーマ):業界課題・技術革新・人材育成など
  3. Supporting Message(支援情報):事例・研究・コラム・数字

 

このように構造化することで、どのチャネルでも“軸の通った発信”が可能になります。社員が誰でも「自社の考え方」を説明できる状態が理想です。

 

 

ステップ4|発信フォーマットを整える ― コンテンツの形を決める

次に、発信内容をどのような形式で展開するかを決めます。BtoB企業においては、次の4つのフォーマットが効果的です。

 

  • Insight Article(インサイト記事):業界課題・技術動向への見解
  • Interview(リーダー対談):経営者や専門家の“考え方”を語る
  • Case Story(事例ストーリー):理念が実践された具体的成果
  • Event / Webinar(対話の場):共創型コミュニティづくり

 

重要なのは、情報量よりも“誠実さ”です。「どんなスタンスで、何を信じて取り組んでいるのか」が伝わる構成にすることで、読者や視聴者との信頼関係が育ちます。

 

 

ステップ5|発信のリズムを設計する ― 継続こそが信頼を生む

ソートリーダーシップは“単発の打ち上げ花火”では意味がありません。信頼は「時間の積み重ね」によってしか形成されないからです。そのため、

 

  • 月単位のテーマ設計(例:「社会課題×技術の可能性」)
  • 週単位の更新スケジュール
  • チーム内レビュー体制

 

を定め、発信を“業務の仕組み”として習慣化します。

 

一貫したトーンで発信し続ける企業ほど、「言っていることとやっていることが一致している」と認識され、ブランドの信頼残高が蓄積されていきます。

 

 

ステップ 6|反応を可視化し、学びを循環させる ― フィードバック型運用

最後に、発信を“終わり”にしないこと。

 

BtoBのソートリーダーシップでは、閲覧数やSNSの反応だけでなく、以下のような“信頼指標”を観察することが重要です。

 

  • 商談・問い合わせで「発信を見た」という言及数
  • メディア・業界団体からの登壇・取材依頼
  • 社員・候補者からの共感コメント
  • パートナー企業からの共創提案

 

これらを定期的に分析し、次の発信テーマに反映させていく。この「発信 → 反応 →学び →改善」の循環が、ソートリーダーシップを“文化”として根づかせる鍵になります。

 

 

発信とは「語ること」ではなく「信頼を積むこと」

ソートリーダーシップ・ブランディングとは、単に情報を届ける活動ではなく、「どんな考え方で社会や顧客と向き合っているか」を社会に示す経営行為です。

 

一貫した考え方を発信し、顧客や社会に“信頼される基準”を提示できる企業は、機能や価格を超えた“選ばれる理由”を手に入れます。

 

それこそが、これからのBtoBブランディングの核心――「信頼を構築し、期待をつなぐブランド戦略」なのです。

 

 

成功事例から学ぶ信頼されるBtoBブランドの特徴

自社の専門性や価値観を社会と共有し、業界や顧客にとって“頼られる存在”になる。この地道な営みを続けた企業ほど、市場で唯一無二の信頼資産を築いています。

 

ここでは、代表的な3つの事例から、ソートリーダーシップがどのようにBtoBブランドを成長させたのかを見ていきます。

 

 

事例①:「テクノロジーの未来を導く思想企業」

A社は、単なるIT企業から「知の共創パートナー」へとブランド転換を果たしました。

 

長年にわたり、AI・量子コンピューティング・サステナビリティといった社会課題に対し、企業としての視座と責任を発信。

 

特に、あるキャンペーンは、テクノロジーの可能性を社会課題の解決にどう活かすかという問いを投げかけ、A社=“考える企業”という象徴的イメージを定着させました。

 

この一貫したメッセージにより、A社は「ソリューションベンダー」ではなく「社会を動かす知のリーダー」として認識されるようになりました。

 

◎成功要因

 

  • テクノロジーを“人と社会の課題解決”という文脈で語った
  • 経営陣から技術者まで一貫した発信体制を構築

 

 

事例②:「知を仕組み化し、産業を進化させる」

B社は、センサー・計測機器メーカーでありながら、単なる“製造業”の枠を超え、「生産性の未来をデザインする企業」としての地位を確立しています。

 

その根底には、“技術を通じて人の知恵を仕組みに変える”という一貫した信念があります。

 

同社は製品紹介ではなく、「生産現場の課題解決」や「ものづくりの考え方」を軸に発信。

 

技術的優位性を語るのではなく、“どうすれば人と現場がより創造的に働けるか”という視点から、数々の事例・ナレッジ・教育プログラムを社会に発信してきました。

 

また、採用活動でも「教えない会社」という独自の哲学を掲げ、“考える文化”を価値として伝えるなど、経営・現場・人材育成が一貫して「知を創る組織」というブランド像で結びついています。

 

結果としてB社は、“製品でなく思想で信頼されるBtoB企業”として、国内外から高い評価を獲得しています。

 

◎ 成功要因

 

  • 技術の優位性ではなく、「知の活かし方」という観点で発信
  • 社員・顧客双方に“考える文化”を浸透させる仕組みづくり
  • 経営・製品・採用を横断した一貫したブランドメッセージ

 

事例③:「ビジネスを変える、出会いの意味を語る」

C社は「出会いからイノベーションを生み出す」という独自のコンセプトを軸に、単なる名刺管理サービスの提供企業から、“出会いのデータを社会資産に変える企業”へと成長しました。

 

同社の発信は機能説明よりも、“なぜ出会いにこだわるのか”というストーリー性に重きを置いています。

 

経営陣のメッセージ発信やオウンドメディアでは、「働く意味」や「組織のつながり」といった抽象的なテーマを自社のビジョンと重ね合わせて語ることで、顧客・候補者双方からの共感を得ています。

 

◎ 成功要因

 

  •  “プロダクト発信”から“社会発信”への転換
  • ストーリー性とビジュアル表現の一貫性
  • 経営・広報・採用が共通のメッセージ体系を共有

 

 

3つの事例に共通するポイント

これらの企業に共通しているのは、単なるマーケティング活動ではなく、「企業として何を信じるか」を社会と共有している点です。その根底には次の3つの原則があります。

 

1. 理念を中心に語る:プロダクトや機能ではなく「なぜそれをやるのか」を語る
2. 経営と現場をつなぐ:トップの発信を現場の行動と接続する
3. 継続性を設計する:単発ではなく、発信を文化として定着させる

 

この3つが揃ったとき、発信は「宣伝」から「信頼の証明」へと変わります。

 

 

ソートリーダーシップは“未来の指名”をつくる

BtoBビジネスにおいて、選ばれる理由は「製品」や「価格」ではなく、「どんな未来を見ている企業なのか」「どんな価値観で判断しているのか」に移り変わっています。

 

ソートリーダーシップを軸にブランドを築くということは、その“未来の約束”を社会に発信し続けることです。

 

パーパスやビジョンの共有する企業ほど、顧客・社員・パートナーからの“選ばれ続ける関係性”を築くことができます。

ソートリーダーシップによるリード獲得と顧客エンゲージメント向上策

ソートリーダーシップは「情報を発信すること」ではありません。それは、業界や社会に対して“どんな姿勢で語る企業か”を示すブランディング活動です。

 

単なるノウハウやトレンド発信に終わるか、信頼と共感を生み出す存在になれるか──。その分岐点を決めるのが、以下の4つの条件です。

 

 

① 「顧客の課題」を語る前に「業界の未来」を語れるか

多くのBtoB企業は、「顧客の課題解決」を起点に発信を始めます。もちろん、それ自体は間違いではありません。しかし、ソートリーダーシップの本質は“解決”ではなく“提言”です。

 

顧客の課題を語る前に、業界の未来を語れるか。それが、リーダーとしての第一歩です。

 

たとえば、テクノロジー、製造、物流、教育、医療──どんな業界であっても、変化の先に「どうあるべきか」を語れる企業は、“専門家”ではなく“導き手”として信頼されます。

 

BtoB市場における「指名で選ばれる理由」は、製品力よりもビジョンの明快さにあります。

 

 

② 量より“文脈”を重視する ― トレンド発信ではなく信念発信へ

「情報を出し続ければ信頼が積み上がる」――そう考えがちですが、発信量の多さは必ずしも信頼に直結しません。むしろ、断片的なトレンド発信を続けるほど、「この企業は何を信じているのか」が見えにくくなります。

 

本当に響く発信は、“量”ではなく“文脈”でできています。

 

「何を語るか」よりも、「なぜそれを語るか」。記事やセミナー、SNS、ホワイトペーパー──あらゆる接点において、企業の信念・パーパス・視座が貫かれているか。

 

その一貫性が、読者に「この企業の話には価値がある」と感じさせるのです。

 

 

③ 顧客をフォロワーではなく共創パートナーに変える

ソートリーダーシップとは、「聞かれる立場」から「共に考える立場」へのシフトでもあります。発信は一方的なメッセージではなく、対話のきっかけです。

 

共鳴した顧客や業界関係者が自ら意見を交わし、その議論の中で新たな価値が生まれていく――それが理想的な循環です。

 

BtoBのブランド力は、“数”ではなく“関係の深さ”で決まります。顧客と同じ未来を描き、同じ問いを持ち続ける企業こそ、真のソートリーダーとして信頼されるのです。

 

 

④ コンテンツに“企業人格”が宿っているか(Brand Tone & Voice)

ソートリーダーシップの発信には、言葉の「人格」が必要です。

 

同じテーマを語っていても、トーン(Tone)や語り口(Voice)に企業の“らしさ”がにじむかどうかで、印象は大きく変わります。たとえば、

 

  • 革新的であるが、決して傲慢ではない
  • 専門的だが、常に誠実でわかりやすい
  • 理論的でありながら、情熱を失わない

 

このように、人格のある発信は読む人の心に残ります。一方で、感情のない中立的な文章は、どんなに正確でも“誰の声かわからない情報”になってしまいます。

 

Tone & Voiceは、企業の信念を“感じさせる装置”です。一貫した語り口がブランドの輪郭を形づくり、やがて「この言葉づかいはあの企業らしい」と認識されるようになります。

 

成功するBtoBソートリーダーシップは、単なる発信スキルではなく、姿勢のブランディングなのです。

 

  1.  業界の未来を語る勇気
  2. 文脈の一貫性
  3. 共創の姿勢
  4. 言葉に宿る人格

 

この4つが揃うと、発信は“広告”ではなく“信頼の証明”へと変わります。それこそが、BtoB企業がソートリーダーシップを通じて“選ばれ続ける存在”になるための条件です。

感情移入型ソートリーダーシップとは?理性と感情で信頼を動かすBtoBブランディング

BtoBの世界では、長らく「理性的な判断」が重視されてきました。数値・実績・ロジック――つまり“合理性”によって信頼を獲得することが、企業間取引の常識とされてきたのです。

 

しかし今、BtoBブランドの競争軸は変化しています理性だけでは人は動かない。最終的に意思決定を下すのは、“人の価値観”です。

 

ASAKOが提唱する「感情移入型ソートリーダーシップ」は、データや専門性に“情緒”を重ねることで、理性と感情の両輪で信頼を築く新しいBtoBブランディングの形です。

 

 

① データや専門性に“感情”を重ねる

ソートリーダーシップの多くは、「正しさ」を語る発信に終始しがちです。しかし、データや理論だけでは“納得”は生まれても、“共感”は生まれません。

 

  • 「なぜこのテーマに向き合うのか」
  • 「なぜこの課題を重要だと考えるのか」

 

そこに“感情”を重ねることで、発信は「知識の共有」から「価値観の共鳴」へと変わります。

 

たとえば、同じ調査レポートでも、数字の裏にある「人の動き」「社会の変化」「自社が抱く使命感」を語ることで、読者は“数字”ではなく“意味”を受け取るようになります。

 

感情を込めることは、感傷的になることではありません。それは、事実に意志を与える行為です。

 

 

② BtoBであっても、最終的に意思決定を下すのは“人の心”

どれほど複雑な購買プロセスを持つBtoBであっても、契約の最後に「決定」するのは、数字ではなく“人”です。

 

見積もり、仕様、ROI――すべての条件が揃っていても、「この企業と一緒にやりたい」と思えなければ、取引は成立しません。

 

つまり、BtoBは“心の信頼”で動くBtoH(Business to Human)であるという前提を忘れてはいけません。

 

感情移入型ソートリーダーシップでは、専門性を示すと同時に、企業としての“意志”や“信じていること”を一貫して発信します。それは、「共鳴感情による指名」を生み出す最も強い力になります。

 

 

③ 理性 × 感情の両輪でブランド信頼を構築する

感情だけに偏ると説得力を失い、理性だけでは共感を生めない。ソートリーダーシップにおける理想的な信頼構造は、理性(Rational) × 感情(Emotional) = 信頼(Trustです。

 

理性は「正しさ」を担保し、感情は「意志」を届ける。

 

この2つが噛み合うと、ブランドは“理解される存在”から“信頼される存在”へと進化します。たとえば、

 

  • 技術的な発見の背景にある“想い”を語る
  • 専門家の視点と、顧客の感情を行き来するストーリーを設計する
  • CEOや研究者が「なぜこのテーマに人生をかけているのか」を語る

 

こうした発信が、人と企業の間に深い心理的距離をつくり出します。

 

 

④ 事実を語るだけではなく、「なぜそれを信じているのか」を語る

“事実”は誰でも語れます。しかし、“信念”を語れる企業は少ないのが現実です。

 

  • 「なぜ、私たちはこの技術を信じているのか」
  • 「なぜ、この未来を目指すのか」

 

この“なぜ”を語ることこそ、ソートリーダーシップの核です。たとえ同じ業界であっても、企業が持つ“信じる理由”の違いが、そのままブランドの個性になります。

 

データを示すのではなく、そのデータの先に“どんな未来を信じているのか”を語る。その瞬間、企業は情報発信者ではなく、信頼発信者になるのです。

 

ASAKOが提唱する「感情移入型ソートリーダーシップ」は、単に“感情的に語る”ということではありません。それは、

 

  • 専門性に感情を重ね、
  • 事実に信念を与え、
  • 発信を共感の循環に変える。

 

という、BtoB企業の新しい信頼構築モデルです。理性で理解され、感情で信頼される。この構造をつくれた企業こそが、次の時代のソートリーダーです。

FAQ|BtoBブランディングとソートリーダーシップによくある質問

Q1. ソートリーダーシップとコンテンツマーケティングの違いは?

コンテンツマーケティングは、主に「見込み顧客を集める」ための施策です。一方、ソートリーダーシップは、「信頼と共感を積み上げる」ための活動です。

 

コンテンツマーケティングが“情報提供による集客”を目的とするのに対し、ソートリーダーシップは“思想発信による信頼構築”を目的としています。つまり、

 

  • コンテンツマーケティング:短期的な関心を得るための「施策」
  • ソートリーダーシップ:長期的な信頼を育てるための「姿勢」

 

という違いがあります。

 

成果としても、ソートリーダーシップはリード数より指名・共創・採用・評価など、
“質の高い選ばれ方”につながるのが特徴です。

 

Q2. 中小企業でも実施できる?

もちろん可能です。むしろ、中小企業こそ最も成果が出やすい分野です。

 

大企業が体系的に取り組むには時間と承認プロセスが必要ですが、中小企業は意思決定が早く、トップの考えや文化を発信に反映しやすいという強みがあります。

 

重要なのは「規模」ではなく、

 

  • 何を信じて事業をしているのか
  • 業界や社会にどんな問いを投げかけたいのか

 

という“芯”を持つことです。

 

数本のブログや動画でも、明確な信念とストーリーがあれば、それは立派なソートリーダーシップになります。

 

Q3. 経営者以外が発信しても効果はある?

あります。むしろ、現場からの発信が信頼の厚みを生むケースが増えています。

 

経営者の言葉は「方向性」を示し、専門部門の言葉は「具体性」と「リアリティ」を与えます。たとえば、

 

  • エンジニアが「技術の背景」や「失敗からの学び」を語る
  • 営業担当が「顧客との共創ストーリー」を紹介する
  • 採用担当が「社内カルチャーの裏側」を伝える

 

こうした現場発信が積み重なると、企業全体の「人としての信頼残高」が高まり、ブランドの厚みが増していきます。

 

Q4. コンテンツテーマはどう決める?

テーマ設定のポイントは、「伝えたいこと」ではなく「読者が考えたいこと」から始めることです。ASAKOでは、次の3層構造でテーマを設計します。

 

  1. Core(核):自社のパーパス・信念・事業ドメイン
  2. Context(文脈):業界の変化、社会課題、顧客のインサイト
  3. Content(具体):それらを具体化する事例・視点・提言

 

たとえば「製造業×サステナビリティ」をテーマにする場合、単なる事例紹介ではなく、「製造業が持続可能性をどう定義すべきか」という問いから出発することで、読者の“思考を動かす”発信になります。

 

テーマは“企業の信念”と“顧客の関心”の交差点にあるものを選ぶことが重要です。

 

Q5. 効果測定はどうする?

ソートリーダーシップの成果は、数字と質感の両面で測定します。定量的には、

 

  • 記事の閲覧数・滞在時間・再訪率
  • SNSでの引用やコメント率
  • 指名・問い合わせの経路割合

 

などを追いかけますが、真価を測るのはむしろ「定性的な変化」です。たとえば、

 

  • 営業現場で「御社の記事を読んで共感した」と言われた
  • 採用面接で「考え方に惹かれて応募した」と言われた
  • 業界セミナーで「御社の発信が指針になっている」と言われた

 

これらの“反応”こそ、信頼の証です。ASAKOでは、発信を「認知→共感→信頼→行動」のフェーズで評価し、短期KPI(閲覧・反応)+長期KGI(信頼・指名)の両軸で運用します。

まとめ|信頼されるBtoBブランドを作るための戦略的アプローチ

BtoBブランディングの本質は、“思想の一貫性”にあります。

 

市場が成熟し、製品やサービスの機能差が縮まるほど、企業を選ぶ基準は「何をしているか」ではなく、「なぜそれをしているのか」に移行しています。

 

ソートリーダーシップとは、「何を売るか」だけでなく「何を信じているか」を語るブランド戦略です。

 

それは、テクノロジーや専門知識を越えて、企業が社会にどんな価値を残したいのか、どんな未来を描こうとしているのかを示す“意志の発信”でもあります。

 

思想には力があります。それは人の心を動かし、共鳴感情を呼び、行動を促します。思想が行動を導き、行動が信頼を生む。

 

この循環が回り始めたとき、企業は“供給者”から“導き手”へと進化します。

 

そして、思想を信念として磨き続けることこそ、短期の成果に左右されない長期的なブランド資産を築く最も確かな方法です。

 

市場の信頼を積み上げ、共鳴感情で選ばれる企業へ。

 

それが、BtoBブランディングの次の時代を創る「ソートリーダーシップ」の真の価値なのです。

 

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PROFILE 著名者プロフィール

羽田 康祐 はだ こうすけ

  • ストラテジックプランニングディレクター
著者について詳しく見る
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