ソリューション・事例

2025.11.28

企業ブランディングの進め方|失敗しない8ステップと全体像【初心者向け実践ガイド】

本記事の要約

企業ブランディングとは、企業理念(PMVV)を起点に、「なぜこの会社を選ぶのか」という理由を設計し、それを言葉・デザイン・行動へ落とし込んでいく活動です。


企業理念(PMVV)→Brand PRISM→ステートメント→VI→実行の8ステップで一貫性を実装し、社内の誇りと社外の共鳴を高め、採用・開発/製造・販売・社会・資金調達を連鎖させていきます。

目次

はじめに|企業ブランディングの進め方を徹底解説|失敗しない8ステップと全体像

今、多くの企業が「差別化ができない」「採用できない」「選ばれない」という共通の課題に直面しています。

 

商品やサービスの機能はすぐに同質化し、顧客・社員・求職者のいずれも “企業そのものの姿勢”を重視するようになりました。

 

こうした時代において、企業の競争力を決めるのは、単に「何を売っているか」ではありません。「どんな企業だと期待されているか」「どれだけ信頼されているかが決定的な要素になります。

 

この “期待と信頼” を形づくっていく取り組みが、企業ブランディングです。

 

企業ブランディングは、単なるロゴ刷新や広告戦略ではありません。投資家・顧客・パートナー・求職者・社員といったあらゆるステークホルダーから、「この企業なら信頼できる」「一緒に未来をつくりたい」と思ってもらうための取り組みです。

 

この記事では、企業ブランディングの定義・必要性・効果・進め方・よくある失敗を体系的に整理し、企業が“選ばれる存在”へ変わっていくための<strong実践的なプロセスを解説していきます。

 

この記事を最後までお読みいただければ、あなたの企業が「選ばれる企業」へと進化するために必要な考え方と、それを実行に移すための8つのステップが明確になります。

企業ブランディングとは?—選ばれ続ける理由をつくる

企業ブランディングとは、ステークホルダー(顧客・社員・求職者・投資家・パートナーなど)が企業に抱く “期待” と “信頼” を意図的に築き上げていく取り組みです。言い換えると、

 

  • 「この企業は信頼できる」
  • 「この企業となら未来を共にできる」
  • 「この企業なら、より良い社会を実現してくれる」

 

という認識を育て、長期的に選ばれ続ける存在になるための取り組みだと言えます。

 

単にロゴを刷新したり、広告を打ったりすることが目的ではありません。企業の価値観・姿勢・提供価値を一貫したストーリーとして伝え続け、ステークホルダーとの“長期的な関係性”を築いていくことこそが、企業ブランディングの目的です。

企業ブランディングと商品ブランディングの違い

企業ブランディングと混同されやすいのが「商品ブランディング」です。両者は似ているようで、対象も役割も異なります。

 

 

■ 商品ブランディング

  • 対象:特定の商品・サービス
  • 目的:商品・サービスに対する感情移入と指名買い
  • 役割:市場での独自化、指名買いの促進

 

 

■ 企業ブランディング

  • 対象:企業そのもの
  •  目的:企業への信頼・期待・共鳴を高めること
  •  役割:採用、資金調達、取引条件、企業イメージ、社会的評価など、あらゆる領域に効く“母体の力”を高めること

 

商品ブランディングは、個別の商品に対して「独自の認識を作り、感情移入を促す」ための工夫が中心になります機能・価格・売り場・広告などで勝負しやすい一方で、「他の商品に置き換えられやすい」という宿命もあります。

 

一方の企業ブランディングは、会社の存在価値・挑戦姿勢・提供価値などを統合し、 “期待と信頼”を育てていきます。

 

その結果は、販売だけにとどまりません。採用、アライアンス、資金調達、レピュテーションなどにも波及し、商品が入れ替わっても「この会社だから選ぶ」という判断につながる点が、決定的な違いです。

 

企業ブランディングと企業理念(MVV)との関係

「企業ブランディング=MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の表現?」と考えられることも多いですが、両者は役割が異なります。

 

 

■ MVV(企業理念)

  • 企業が何を大切にし、どんな理想を目指すのかを“内側に向けて”定義したもの
  • 社員の判断軸・行動基準として機能するもの

 

 

■ 企業ブランディング

  • その理念を“社内外に向けて”どう伝え、どう感じてもらうかを設計する取り組み
  • ステークホルダーが抱く期待・信頼を高めるための戦略そのもの

 

 

つまり、MVVは「内側の意志」企業ブランディングは「社内外からの認識」をつくる活動です。

 

企業ブランディングの目的を一言で表すなら、「この会社に任せたい」と期待され、信頼される状態をつくることです。これは以下のすべての領域に影響します。

 

  • 採用:求職者から「ここで働きたい」と思われる
  • 顧客:競合がいても「この会社なら」と選ばれる
  • 投資家:将来に対して期待を持たれる
  • パートナー:協働したいと思われる
  • 社会:その企業らしい存在理由が評価される

 

企業ブランディングは、単なるイメージづくりではなく、企業価値そのものを高める“戦略資産づくり” と言っても過言ではありません

企業ブランディングの効果|経営のあらゆる領域に効く“企業価値の底上げ”

 

企業ブランディングによって期待と信頼が高まることで、採用・営業・資金調達・製品開発・取引条件・社会的評価──あらゆる領域で「選ばれやすくなる」状態が生まれます。

 

ここでは、企業ブランディングの効果を5つの領域に分けて整理します。

 

 

❶ 資金調達面のメリット|投資家から“未来への期待”を得られる

 

企業ブランディングが確立している企業は、投資家・金融機関・株主から次のような評価を受けやすくなります。

 

  • 「この会社は何を目指しているのか」が明確
  • 中長期的に応援したい理由がある
  • ESG/社会課題との接続性が理解しやすい
  • 経営の意思決定が透明で、リスクが可視化されている
  • 人材・組織が強いという信頼がある

 

結果として、

 

  • 資金調達のスピードが上がる
  • 長期投資家が集まりやすくなる
  • 有利な条件での資金調達が可能になる

 

など、企業の成長基盤の強化につながります。

 

 

❷ 採用面のメリット|“待遇”ではなく“共感”で選ばれる

 

今の採用市場では、給与・福利厚生・働き方だけでは人は動きません。求職者は企業に対して その企業で働く理由働く誇りを求めています。

 

企業ブランディングが確立されると、次のような効果が生まれます。

 

  • 指名応募が増える(“あなたの会社だから応募したい”)
  • 入社前後のギャップが減り、早期離職が減少する
  • 価値観が合う人材が集まり、カルチャーフィット率が上がる
  • 採用活動の説明・メッセージが一貫し、訴求力が高まる

 

競合とのシビアな奪い合いではなく、“選ばれる企業”として求職者を惹きつける力が高まります。

 

 

❸ 開発・製造面のメリット|“選ばれる取引先”になる

 

企業ブランディングは、開発やサプライチェーン領域にも明確なメリットをもたらします。

 

  • 優秀なパートナー企業から声がかかる
  • 「この会社となら価値のあるものが作れる」と期待される
  • サプライヤー・メーカーからの信用が上がる
  • 有利な取引条件を引き出しやすくなる
  • 協働プロジェクトが円滑に進む

 

ブランド力の高い企業は、ビジネス全体の質が底上げされるため、結果的に製品・サービスの競争力も強化されます。

 

 

❹ 販売・マーケティング面のメリット|指名買いが増え、営業生産性が向上

 

企業ブランディングは、顧客の購買行動にも大きく影響します。

 

  • 競合比較されにくくなる
  • 「この会社の製品なら安心」と選ばれやすい
  • 新規営業で話を聞いてもらえる率が上がる
  • 価格競争にも巻き込まれにくくなる
  • ファン化・リピート率の向上
  • 新規事業への信頼獲得が容易になる

 

結果、営業コストの削減や、広告効率の向上にもつながります。

 

 

❺ 社会へのメリット|“何を大切にする企業か”が評価される

 

現代の市場では、社会は企業にどんな姿勢で社会と向き合っているのか?を求めます。企業ブランディングが確立すると、

 

  • 企業の社会的存在価値(パーパス)が理解される
  • NPOや自治体などとの協働が進む
  • メディア・ステークホルダーからの信頼が高まる
  • ESG視点での評価が上がる
  • 危機時のレピュテーションが守られやすい

 

といった効果が生まれます。企業が持つ“存在理由”が社会に伝わることで、長期的に応援されるブランドへと成長していきます。

 

 

 

企業ブランディングの8ステップ|戦略、実装、運用の標準プロセス

企業ブランディングは、「とりあえずロゴを変える」「サイトをリニューアルする」といった個別施策から始めるとうまくいきません。重要なのは、

 

  • なぜ取り組むのか
  • 何を約束し、どう一貫して伝えるのか

 

を戦略 → 実装 → 運用の流れで設計することです。ここでは、ASAKOが伴走支援の際に用いている8つの標準ステップを紹介します。

 

 

 

ステップ1|プロジェクト準備:体制・意思決定・ロードマップ

企業ブランディングの取り組みをスムーズに進めるためには、まずプロジェクトメンバー全員が同じ立脚点に立ち、認識や足並みを揃えることが欠かせません。ここが曖昧なまま進めてしまうと、

 

  • メンバーごとに解釈が違う
  • 優先順位が噛み合わない
  • 途中で意思決定が止まる

 

といったことが起こり、ブランド戦略は一貫性を欠いてしまいます。この共通認識が、以降の戦略立案や施策実行を進める上での羅針盤となり、プロジェクト全体の推進力を高めます。

 

  • 目的:目的・体制・意思決定のルールを共有し、迷いなく進める土台をつくる。
  • アウトプット:スコープ定義、ロードマップ、体制図、キックオフ議事。
  • 進め方
    • スコープ・ロードマップの作成(対象範囲/成果物/マイルストーン)
    • プロジェクトメンバーの招集(経営・事業・広報・人事・営業・CS)
    • キックオフミーティング(目的・KGI/KPI・意思決定フロー・レビュー頻度・使用アセット)

 

 

ステップ2|環境変化を捉える:インタビュー/PEST/3Cで事実をそろえる

ある人は「うまく行っている」と思っていても、別の人は「うまく行っていない」と思っている…。

 

このように、それぞれのメンバーの現状認識がズレていると、その先の議論のズレが大きくなっていきます。このステップでは、社内外から情報を集め、外部環境と自社の立ち位置を整理します。

 

  • PEST分析:政治・経済・社会・技術の変化を整理
  • 3C分析:Customer(市場・顧客)/Competitor(競合)/Company(自社)

 

これにより、社会の潮流や顧客ニーズに照らして、自社が担える独自の役割を浮き彫りにできます。

 

  • 目的:事実で現状を把握し、課題と機会を定義する。
  • アウトプット:キーパーソンインタビュー要旨、PEST/3Cサマリー、課題仮説など。
  • 進め方
    • キーパーソンインタビュー(経営・現場・採用・顧客接点)
    • PEST分析(外部変化の影響整理)
    • 3C分析(自社/顧客/競合の比較から勝てる土俵を特定)

 

 

ステップ3|ブランド戦略を策定する:ペルソナ/提供価値/パーパス/ACT

ブランディングのフレームワークであるBrand PRISMフレームワークを活用し、ターゲット、提供価値、ブランドパーパス、パーソナリティ、ポジショニングを体系的に整理します。

 

これにより、一貫性のあるブランド物語を設計できます。Brand PRISMとは、

 

  1. 【外部視点】顧客に選ばれるブランドづくり
  2. 【内部視点】従業員の誇りと主体的行動を促す
  3. 【戦略視点】経済合理性と社会価値を両立

 

これら3つの視点を統合し、企業の内外と社会に響くブランド変革をデザインする実践的フレームワークです。

 

このBrand PRISMを用いてブランドの価値を再発見し、言葉・デザイン・行動を定義していきまます。人格・価値観・約束を統合し、意思決定の迷いをなくします。

 

  • 目的:企業の人格・価値観・約束を統合し、意思決定の基準を定める。
  • アウトプット:Brand PRISM一式(ペルソナ/提供価値/パーパス/パーソナリティ/ポジショニング/ブランドACT)など。
  • 進め方
    • ペルソナデザイン(最重要ステークホルダー像を具体化)
    • ブランド提供価値(機能・情緒・自己実現の三層で言語化)
    • ブランドパーパス(一文+補助説明)
    • ブランドパーソナリティ(3〜5語の性格・態度)
    • ブランドポジショニング(競合比較で選ばれる理由を明確化)
    • ブランドACT(日々の行動原則・象徴行動)

 

 

ステップ4|ステートメント&スローガン:誰が語っても同じ言葉に

ブランドステートメントは、これまで見てきたブランドの構成要素を統合し、ブランドの存在理由と価値を示したストーリーです。

 

心理学者のジェローム・ブルーナーによれば、ストーリー形式の情報は情報の羅列と比べて、最大で20倍記憶されやすいことが示されています。

 

また、ストーリーテリングは聞き手の感情に訴えかけるため、独自の認識や感情移入を促しやすくなります。

 

このブランドステートメントが、社員・顧客・社会をつなぐ“共通ストーリー”として機能していくのです。

 

  • 目的:社内外の誰もが同じ言葉で語れる状態にする。
  • アウトプット:ブランドステートメント(ロング/ショート)、スローガンなど。
  • 進め方
    • ステートメントデザイン(何者か/何を約束するか/どう実現するか)
    • スローガンデザイン(記憶性と真実性を両立した核フレーズ)

 

 

ステップ5|VIデザインと運用ルール:ロゴ・カラー・タイポグラフィ

ブランドを体現するロゴやビジュアルアイデンティティ(VI)、発信のトーン&マナーを統一します。

 

デザインは単なる装飾ではなく、「存在価値を視覚的に伝える翻訳装置」です。ここで定めた基準が、Webサイトやパンフレット、SNSなどあらゆる接点に反映されます。

 

目的は、見た目と振る舞いを一貫させ、記憶に残る識別性を担保することです。

 

アウトプットは、コア要素(ロゴ/カラー/タイポグラフィ/アイコン/写真トーン)と、それらの使い方を定めたVIマニュアルです。

 

  • 目的:見た目と振る舞いを一貫させ、記憶に残る識別性を担保する。
  • アウトプット:コア要素(ロゴ、カラー、タイポ、アイコン、写真トーン)、VIマニュアルなど。
  • 進め方
    • ブランド要素のデザイン(Brand PRISMの視覚翻訳を検証)
    • VIマニュアルの策定(使用ルール/余白/最小サイズ/NG例/各種テンプレ)

 

 

ステップ6|インナーブランディング:5つの“化”で行動をそろえる

ブランドは“社外の見せ方”だけでは育ちません。

 

社内で理解がそろい、それを自分の言葉で語れるようになり、誇りが生まれ、日々の業務で使えるようになって、最後に連帯が生まれる——この順で行動に落としていきます。

 

  • 目的:理念を行動に変え、社内の連帯と自走性を高める。
  • アウトプット:研修プログラム、カルチャーデック、社内施策計画など。
  • 進め方(5つの“化”)
    • わかる化(経営者動画/パーパスストーリー動画等)
    • 語れる化(パーパス解釈ワークショップ/リーダーシップコード等)
    • 誇れる化(パーパスブック/パーパスカード等)
    • 役立つ化(パーパス名刺/パーパス実践ワークショップ等)
    • 連帯化(表彰・越境PJで“らしい行動”を称える)

 

 

ステップ7|採用ブランディング:求職者から選ばれる

採用は“広報”ではありません。目的は、自社ならではの「働く誇り」を明確にし、出会い(認知)から入社後(オンボーディング)までの求職者体験を設計・運用することです

 

大切なのは、“露出を増やす”より、「この会社で働く意味」が一貫して伝わること。それが、求職者から指名で選ばれる採用ブランディングの核心です。

 

  • 目的:価値観の合う人材を呼び込み、受諾・活躍・定着までの体験を最適化する。
  • アウトプット:採用コミュニケーション戦略、メッセージ体系、運用KPI、改善サイクルなど。
  • 進め方
    • 戦略の策定(候補者ペルソナ/選考体験ジャーニー/主要チャネル)
    • 実行・評価(求人票・面接設計・コンテンツ運用→受諾率・定着率・体験評価を改善)

 

 

ステップ8|アウターブランディング:顧客・社会から選ばれる

アウターブランディングでは、“量より質”が成果を分けます。闇雲に露出を増やすのではなく、認知→理解→共鳴→応援へと段階的に設計します。

 

起点となるのはBrand PRISMで定める提供価値(機能・情緒・自己実現)です。この骨子を崩さず、広告、PR、オウンドメディア、SNS、イベントへとメッセージを多面的に発信していきます。

 

目的は、企業認知の質を高め、共鳴と応援を広げることです。

 

  • 目的:外部接点で認知の質を高め、共鳴と応援を拡げる。
  • アウトプット:コミュニケーション計画、編集カレンダー、PR/コンテンツ施策群など
  • 進め方
    • 認知拡大(サイト/オウンドメディア/SNS/イベント/メディア連携)
    • 共鳴・応援感情の醸成(導入事例・プロダクト物語・社会価値ストーリーの継続発信)

よくある失敗とその回避策|見た目先行・目的と手段の混同を防ぐ

一生懸命ブランディングに取り組んでいるのに、思ったほど成果が積み上がらない──。その原因は、大きく次の 3つのパターン に集約されます。

 

ここでは、それぞれの失敗パターンと、Brand PRISM・ブランドブック・VIマニュアル を活用した回避の考え方を整理します。

 

 

❶失敗1|ブランディングを「見た目の変更」で終わらせてしまう

 

ありがちなスタートは、ロゴ刷新やコーポレートサイトのリニューアルなど、“デザインから手をつける”パターンです。短期的には達成感がありますが、

 

  • なぜ変えるのか
  • それによって何が良くなるのか

 

を語れないままだと、社内外ともに「雰囲気は変わったけど、結局何が変わったの?」という浅い評価にとどまりがちです。ここで大切なのは 順番を正すことです。

 

まずは Brand PRISM で、

 

  • パーパス(存在意義)
  • 提供価値
  • パーソナリティ
  • ポジショニング
  • ブランドACT(ふるまい)

 

を定義し、「この企業は何者で、何を約束するのか?」を明確にします。

 

次に、ステートメント(言葉)と行動レベルの設計まで完了させ、VI(ロゴ・カラー・フォントなど)を“意味を視覚化するためのデザイン” として設計します。

 

こうすることで、「見た目を揃えること」自体が目的ではなく、「意味と体験の一貫性を伝える手段だ」という合意 が生まれます。結果として、制作物の方向性もブレにくくなります。

 

 

❷ 失敗2|現場に浸透しない

 

パーパスやスローガンを決めたあと、「あとは浸透させるだけ」と考えてしまうのも、よくある落とし穴です。トップダウンで「浸透させる」発想だと、現場からは

 

  • 「会社が勝手に決めたもの」
  • 「従わざるを得ないお題目」

 

と見なされやすく、かえって距離が生まれてしまいます。

 

狙うべきは、その逆です。浸透させる → 現場にとって“役に立つ・楽しい・誇りに思える”ものにするという発想の転換が必要です。

 

  • 日々の判断に迷ったときの“軸”になる
  • お客様との会話がしやすくなる
  • メンバー同士で称え合うきっかけになる

 

といった 「現場の利便性」や「感情的な納得感」 があるからこそ、現場は自走してブランドを育ててくれます。さらに、ブランドに即した小さな成功事例を、

 

  • 社内SNS
  • 朝会・全体会議
  • 社内ポータル

 

などで共有し、本人の言葉で語ってもらうことで、他部署も真似しやすくなります。「私たちらしい行動」が連鎖し、自然な連帯感が生まれていきます。

 

 

❸失敗3|目的と手段が混同され、施策がバラバラになる

 

「施策を打てば打つほど、方向性が散らばっていく…」

 

この状態に陥る最大の理由は、判断基準となる“共通のものさし”がない ことです。この問題を解決するためのカギが、

 

  • ブランドブック(意味の憲法)
  • VIマニュアル(表現のインフラ)

 

という二つのドキュメントです。

 

◎ ブランドブック:意味の「憲法」にする

 

ブランドブックでは、

 

  • 企業の目的・パーパス
  • 大切にする価値観
  • 語るべき要点(ストーリーの骨子)
  • 望ましいふるまいの原則

 

を一冊に束ねます。ねらいは「細かいルールを増やすこと」ではなく、何を選び、何を選ばないかという“価値観の共有” にあります。

 

ここが共通フレームとして機能すると、担当者やチャネルが変わっても、意思決定は自然と同じ方向に収れんしていきます。

 

◎ VIマニュアル:表現の「インフラ」にする

 

一方、VIマニュアルは、

 

  • ロゴ・カラー・フォントの使い方
  • レイアウト・余白・NG例
  • 写真のトーン&マナー
  • コピーのトーン&マナー

 

といった 表現上の原理とガードレール を明確にするものです。

 

  • ブランドブック → 意味の一貫性
  • VIマニュアル → 表現の一貫性

 

と役割を分けて運用することで、「なんとなく良さそうだからやる施策」から「ブランドの基準に照らして、意味があるからやる施策」へと、施策の質そのものが変わっていきます。

 

FAQ|企業ブランディングの設計・運用・評価によくある質問

Q1. どの部署がリードすべきですか?

経営企画部門+横断プロジェクトが基本です。実務のハブは広報部門・人事部門が担うことが多いです。

 

Q2. 企業理念(PMVV)とBrand PRISMの違いは?

企業理念(PMVV)は、その企業の在り方を決めるものです。

一方でBrand PRISMはその在り方をステークホルダーの価値につながるように翻訳する取り組みと言えます。

企業理念(PMVV )→ PRISM → ステートメント → VI → 接点体験、の順で落とし込んでいきます。

 

Q3. ロゴやサイトの刷新は必須ですか?

必須ではありません。

見た目は意味の翻訳です。Brand PRISMとステートメントを固めた後、現状の表現が目的に適合しているかを評価し、必要部分のみ更新します。

 

Q4 現場に浸透させるコツは?

現場に「浸透させる」のではなく、現場にとって「楽しめるもの」「誇りに思えるもの」「成果につながるもの」として、現場に役立つ形で落としこむことが重要です。

 

Q5 中小企業でも実行できますか?最小構成は?

可能です。

最小構成はBrand PRISM(1枚)/短文ステートメント/簡易VI(ロゴ・色・タイポの使用ルール)/浸透キットです。

優先順位の高い接点(採用・営業資料など)から段階的に展開していきます。

まとめ|「選ばれる理由」を運用資産に変えるブランド構築8ステップ

企業ブランディングの目的は、ロゴを整えることではありません。「なぜこの会社を選ぶのか」という意味を設計し、日々の接点で同じ体験として機能させることにあります。

 

意味は、PMVVからPRISMへ、ステートメントへ、VIへ——順番に落とすことで力になります。この一本線が通ると、採用・開発/製造・販売・社会・資金調達が連鎖し、指名と信頼が積み上がります。

 

意味を整え、構造で運用する。8ステップは、そのための実務の設計図です。順番を守り、核メッセージを磨き、反復する——それが、選ばれ続けるブランドをつくる最短距離です。

 

【無料DL】ASAKO Brand PRISMソリューションガイド|パーパスを軸にしたブランド変革の全体像

 

ASAKOが独自開発した「Brand PRISM」は、

 

  • 顧客に選ばれるブランドをつくる外部視点
  • 従業員が誇りを持ち、行動に移せる内部視点
  • 経済合理性と社会価値を両立させる戦略視点

 

を統合した、実践的なブランド変革ソリューションです。本資料では、Brand PRISMの全体像と設計プロセスを網羅的に紹介しています。

 

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PROFILE 著名者プロフィール

羽田 康祐 はだ こうすけ

  • ストラテジックプランニングディレクター
著者について詳しく見る
ASAKO BRANDING ACADEMY

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