ブランド戦略・パーパス・サステナビリティ

2025.10.03

BtoBブランディングとは?定義・効果・進め方を徹底解説|共創パートナーとして選ばれる理由

本記事の要約

BtoBブランディングとは、企業の存在意義やカルチャーを社会と共有し、顧客・仕入れ先・協業先・従業員から「共創パートナー」として選ばれるための戦略です。

価格競争や技術力だけでは差別化できない時代に、ロイヤルティ向上、採用力強化、エンゲージメント向上、ESG評価向上を実現し、持続的な成長基盤を築きます。

目次

はじめに:なぜBtoB企業にブランディングが必要なのか

BtoB市場において、かつては「価格」や「技術力」こそが最大の競争要因でした。しかし現在は、それだけでは差別化が難しくなっています。

 

さらに、人材難や採用競争、さらにはESG対応やサステナビリティへの社会的要請など、企業を取り巻く経営課題はますます複雑化しています。

 

こうした環境下では、単に「商品やサービスが選ばれる」だけでは十分ではありません。むしろ「企業そのもの」がどんな存在価値を持ち、どんな社会を目指しているのかが「選ばれる理由」になりつつあります。

 

顧客はもちろん、仕入れ先や協業先、さらには従業員や求職者にから、「この企業を選ぶ理由」が問われているのです。

 

だからこそ、BtoB企業には「共創パートナー」として信頼されるためのブランディングが不可欠です。単なる取引先ではなく、価値をともに生み出す存在として認識されることが、持続的な成長につながります。

 

BtoBブランディングとは?定義と商品ブランディングとの違い

BtoBブランディングとは、BtoB企業の存在価値(パーパス)やカルチャーを社会と共有し、ステークホルダーから選ばれる存在にしていく取り組みです。

 

商品やサービス単体の魅力にとどまらず、企業そのものが「どんな価値を提供し、どんな社会を目指すのか」を示すことによって、ステークホルダーからの期待を築きます。

 

その特徴は「商品ブランド」ではなく「企業ブランド」としての信頼基盤にあります。機能や性能の比較だけではなく、「この企業だからこそ任せたい」と思われる理由をつくることが、長期的な取引や採用につながります。

 

さらにBtoBでは、顧客だけでなく仕入れ先や協業企業にとっても“共創のパートナー”として選ばれることが重要です。

 

価格や条件だけで選ばれるのではなく、理念やカルチャーへの共鳴未来志向の価値観の一致が、持続的な関係を支える基盤となります。

 

BtoBブランディングの目的と効果|顧客ロイヤルティ・共創・採用強化まで

BtoBブランディングの目的は、単なる商品やサービスの魅力を超えて、企業そのものが「選ばれ続ける理由」を築くことにあります。

 

その効果は、顧客・協業先・仕入れ先・従業員といった多様なステークホルダーに広がります。

 

❶ 顧客ロイヤルティ

機能や価格競争に依存せず、「この企業だからこそ任せたい」という信頼を獲得し、長期的な取引関係を築きます。

 

❷ ビジネス機会の拡大

強いブランドは、アライアンスや共同開発の機会を増やし、新たな販路拡大のきっかけとなります。

 

❸ 取引先との関係強化

取引先から“ただの供給元”ではなく、“共創パートナー”として認識され、より有利で持続的な関係を構築できます。

 

❹ 採用・定着強化

給与や待遇だけではなく、理念やカルチャーに共鳴する人材を惹きつけ、採用競争力と定着率を高めます。

 

❺ 従業員エンゲージメント

働く意味を再定義し、従業員が主体的に動ける環境を整えることで、組織全体の生産性を向上させます。

 

❻ ESG・社会的評価の向上

企業文化が社会と共鳴することで、投資家や地域社会からの評価が高まり、持続的成長につながります。

 

 

 

 

このように、BtoBブランディングは「共創パートナー」として期待されるための戦略であり、企業の未来を支える基盤となります。

 

BtoBブランディングを始めるべきタイミング|採用難・事業停滞の打開策

BtoB企業がブランディングに本格的に取り組むタイミングは、経営環境の転換点や組織課題の顕在化と深く関わっています。

 

特にBtoB企業は一般消費者からの認知が低いため、採用に苦労することが多く、また近年は競争激化によりリード獲得も厳しさを増しているのが実情です。

 

そのため、企業の存在価値やカルチャーを明確にし、知名度を高めていくことが欠かせません。

 

 

 ❶ 採用難・離職率の増加

 

BtoB企業は「知名度の低さ」により応募数が集まりにくく、優秀な人材を惹きつけにくい構造的な課題を抱えています。

 

また「待遇」や「賃金」の引き上げも「待遇チキンレース」の様相を呈し、結局は同業他社と同質化し「選ぶ理由」になりずらくなっています。

 

これからは「自社ならではの選ばれる理由」としてパーパスやカルチャーに共鳴できるかどうかが採用・定着の大きな決め手となるため、採用ブランディングが不可欠です。

 

 

❷ 営業活動の停滞局面

 

価格競争に陥り、技術力やコストだけでは差別化が難しくなってきた局面では、ブランディングによって「選ばれる理由」を明確化することが、営業活動の突破口となります。

 

 

 ❸ リード獲得の悪化の局面

 

展示会や広告頼みのリードジェネレーションが通用しにくくなり、マーケティング効率が悪化しているケースも増えています。

 

期待できるブランドとして認知されることが、指名検索やインサイドセールスの成果を底上げします。

 

 

❹ 経営体制刷新や中期経営計画の見直し

 

新社長就任や中期経営計画の刷新時は、社会からの注目を集めやすく、組織の方向性を内外に示す絶好の機会です。

 

企業ブランディングを軸に「自社の事業を通して、どんな社会を目指すのか」を共有することで、期待を高めることができます。

 

 

❺ 経営統合・事業変革・リブランディングの局面

 

M&Aや事業再編の際には、単なる規模拡大やロゴ変更にとどまらず、統合後の存在価値を再定義することが、ステークホルダーの不安を払しょくし、新たな期待獲得の鍵になります。

 

 

❻ サプライチェーン再編や共創ニーズの高まり

 

取引先との関係が「供給元」から「共創パートナー」へと進化する時代です。BtoBブランディングを通して新たな期待と信頼を生み、持続的なパートナーシップを築くことが可能になります。

 

 

BtoBブランディングの進め方|戦略設計からインナー・アウター施策、KPI運用まで

BtoBブランディングは単なるイメージ刷新ではなく、経営・組織・採用・営業・社会的評価を横断した全社的な戦略です。

 

BtoBブランディングのステップは以下の通りです。

 

 

 

❶ 立脚点を揃える(パーパス・ビジョンの共通認識化)

 

プロジェクトメンバー全員が「なぜこのブランディングに取り組むのか」を共有し、企業の存在価値=パーパスや目指すビジョンを言語化します。

 

ここが曖昧なままでは、営業・採用・広報のメッセージが分断されてしまいます。

 

 

❷ 環境変化を捉える(PEST・3C分析)

 

政治・経済・社会・技術の変化や、顧客・競合・自社の現状と将来を分析します。

 

「どのような世の中の流れを味方につけるか?」「どのようなビジネスチャンスが拡大しているか?」を把握するのがポイントです。

 

 

❸ ブランド戦略を策定する(BtoB独自の提供価値を明確化)

 

顧客課題と自社の強みを結びつけ、ブランド提供価値・ブランドパーパス・ブランドの価値観を設計します。「選ばれる理由」を明確にすることが、商談率やリード獲得の質を高めます。

 

 

❹ デザインポリシーを策定する(信頼を可視化)

 

ロゴやビジュアルアイデンティティ(VI)、Webサイトのトーン&マナーを統一し、「営業現場で語るストーリー」と「Webや資料で伝わる表現」が一貫する状態をつくります。

 

見た目の刷新に留まらず、「自社らしさ」を可視化する取り組みです。

 

 

❺ KPIを設定する(営業成果・人材成果を測定)

 

「商談率」「受注単価」「LTV」など営業指標に加え、「採用応募数」「離職率改善」「エンゲージメントスコア」といった人材面の指標も設定します。

 

リード獲得の数だけでなく、リードの質の改善を測ることがBtoBでは重要です。

 

 

❻ インナーブランディングを実施する(営業・現場が一貫して語れる状態へ)

 

従業員が「自分たちのパーパス」を理解し、顧客に語れる状態をつくります。

 

営業資料やトークスクリプトも、ブランドストーリーと一貫させることで「ただの価格比較」ではなく「価値観への共感・共鳴」でも選ばれるようにします。

 

 

❼ アウターブランディングを実施する(オウンドメディア・展示会・ホワイトペーパー)

 

リード獲得の厳しさを打破するために、オウンドメディアやホワイトペーパーを通じて「価値ある知見」を発信します。

 

展示会やPRとも連動し、短期リード獲得だけでなく、長期的に顧客の信頼を育む仕組みを構築します。

 

 

❽ 効果検証・改善(定量×定性で評価)

 

商談率や応募数などの定量指標に加え、顧客や従業員の声といった定性データも組み合わせて検証します。

 

結果をもとに戦略を改善し続けることで、ブランドは「進化し続ける資産」となります。

 

よくある課題と失敗例から学ぶBtoBブランディング成功のポイント

BtoBブランディングは、中長期で企業の信頼や価値を高めるための戦略ですが、実務では以下のような課題や失敗が多く見られます。

 

 

1. 展示会や広告に依存して終わる

 

短期的な展示会出展や広告施策だけに頼り、「リード獲得数は増えたが成約につながらない」というケースが典型です。ブランディングは単発イベントではなく、営業活動と一貫したストーリー設計が必要です。

 

 

2. リード数はあるが「質」が低い

 

名刺獲得やフォーム流入などで数だけは増やせても、商談化率やLTVにつながらない場合があります。ブランドが「共創パートナーとしての価値」を示せていないと、価格競争リードばかりが集まってしまいます。

 

 

3. ロゴやスローガン刷新で終わってしまう

 

「デザインを変えた=ブランディング完了」と誤解するパターンです。BtoBにおいては、顧客や仕入れ先が重視するのは見た目ではなく、パーパス・カルチャー・姿勢の一貫性です。

 

 

4. 営業や現場がブランドを語れない

 

ブランドが経営層だけの言葉にとどまり、営業現場や現場ユーザーへの説明に活かされない場合、顧客は「価格と条件」しか比較材料を持てません。

 

営業やカスタマー接点でブランドを語れる状態にしなければ、成果には直結しません。

 

 

5. KPI不在で成果が見えず頓挫

 

「ブランドは数値化できない」と考え、KPIを設定しないまま進めると、社内合意が得られず途中で止まってしまいます。商談率・受注率・採用応募数・離職率改善など、営業や人材に直結するKPIを設定することが不可欠です。

 

 

6. 経営層の本気が伝わらない

 

経営層が「広告の延長」と捉えたままでは、社員や顧客にすぐに見抜かれます。トップ自らがパーパスを自分の言葉で語り、行動で示すことが信頼の源泉になります。

 

FAQ(よくある質問)|BtoBブランディングの意味・必要性・コスト・KPI

Q1. BtoBブランディングとBtoCブランディングの違いは?

BtoCは「商品が好きだから買う」が中心ですが、BtoBは「この企業となら共創できる」と思わせることが重要です。つまり、顧客・仕入れ先・協業先から共創パートナーとして選ばれる理由をつくるのがBtoBブランディングです。

 

Q2. 中小規模のBtoB企業にも必要ですか?

はい、むしろ中小BtoB企業こそ必要です。広告投資に頼れない分、理念やカルチャーへの共感が採用や取引条件を左右します。価格競争から脱却し、信頼で選ばれるための基盤がブランディングです。

 

Q3. 費用や期間はどれくらいかかりますか?

規模や範囲によって大きく異なります。

  • ロゴやVI刷新など限定的な取り組み:数百万円、3〜6か月
  • パーパス策定からインナー/アウター施策まで含む全社的プロジェクト:数千万円、1〜2年
    特にBtoBでは営業・採用現場での浸透に時間を要するため、中長期的な視点が欠かせません。

Q4. 効果測定はどう行えばよいですか?

BtoBブランディングは「数値で追えるKPI」を設定することが成功のカギです。例えば:

  •  営業関連:リード獲得数だけでなく「ブランド認知率」「商談率」「受注率」「LTV」
  • 採用関連:応募数、内定承諾率、定着率
  • 社内関連:エンゲージメントスコア、理念共感度

さらに、顧客や社員インタビューといった定性的な声も組み合わせて検証することで、改善の精度が高まります。

 

まとめ|BtoBブランディングで選ばれ続ける企業になる方法

BtoBブランディングは、単に「選ばれる理由」をつくる取り組みではありません。企業の存在意義やカルチャーを示すことで、顧客・仕入れ先・協業先・従業員といったすべてのステークホルダーと共鳴と共創を生む理由を築く営みです。

 

 

その結果、企業は「価格」や「機能」だけでは測れない信頼を獲得し、長期的な取引・協業・採用・定着につながる持続的な成長基盤を整えることができます。

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PROFILE 著名者プロフィール

羽田 康祐 はだ こうすけ

  • ストラテジックプランニングディレクター
著者について詳しく見る
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