ブランド戦略・パーパス・サステナビリティ

2025.09.15

ブランド戦略の種類と効果的なブランド構築の3つの軸|商品・企業・対象別ブランディング

本記事の要約

ブランディングは「何を」「誰に」「誰が」の3軸で整理され、商品や企業の価値設計、内外への浸透、事業形態に応じたバランスの良い戦略的構築が重要です。商品ブランディングと企業ブランディング、外部向けのアウターブランディングと社内向けのインナーブランディング、BtoCとBtoBブランディングの違いを理解し、全体最適を目指す必要があります。

目次

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ブランド戦略の3つの軸とは? 

ブランディングには、 

 

  何を対象とするか(商品・サービスか企業か) 

  誰に向けるか(外部顧客か社内従業員か) 

  誰が行うか(BtoCBtoBか) 

 

という3つの軸があります。 

この3軸で整理することで、自社の取り組みの偏りや不足が明確になり、より戦略的で立体的なブランド構築が可能になります。 商品や企業の価値設計、内外への浸透、事業形態に合わせた手法をバランスよく組み合わせることが重要です。 

 

ブランディングには、実はさまざまな種類があります。 

単に「ブランドを強くする」といっても、その対象や方向性、手法によってアプローチは大きく変わります。 

整理のために考えたいのが──何をブランド化するのか、誰に向けて行うのか、そして誰が担うのかという3つの軸です。 この3軸を基準にすると、自社のブランディング活動が商品やサービスに偏っていないか、企業全体の価値設計や社内浸透が不足していないかなど、全体像と課題が明確になります。 

結果として、より戦略的で立体的なブランド構築が可能になるのです。 

 

ブランド戦略の対象|商品ブランディングと企業ブランディングの違いと選び方 

 

 

まず最初の軸は、ブランディングの対象です。

 

つまり「何をブランドとして設計するのか?」という視点です。対象は大きく分けて、商品・サービスか企業そのものかの2つに分類できます。

 

(1)商品・サービスブランディング(ブランドマーケティング)とは

もっとも一般的で、多くのマーケティング担当者がまず思い浮かべるのが、この形です。

特定の商品やサービスに対し、「独自の役割」と「感情的価値」を設計し、生活者の心にしっかりとしたポジションを築くことを目指します。

 

ここで重要なのは、

 

「機能的な違い」ではなく、「意味の違い」をどうつくるか

「競合商品ではなく、このブランドを選ぶ理由」をどう育てるか

 

という問いに向き合うことです。

 

欧米では、商品ブランディングはマーケティングの中心に位置づけられ、「マーケティング=ブランドマーケティング」という考え方が定着しています。一方、日本では広告や販促といった“実務”に意識が引っ張られ、戦略的なブランド設計が後回しになるケースが少なくありません。

 

(2)企業ブランディング(コーポレートブランディング)とは

もうひとつの形が、企業そのものの期待や信頼を高めるブランディングです。

 

こちらは商品レベルではなく、「企業の存在価値(パーパス)」「目指す社会(ビジョン)」「大切にする価値観(バリュー)」を社会に発信する取り組みです。

 

その対象は顧客に限らず、

 

従業員(エンゲージメントの向上)

株主・投資家(中長期的な価値訴求)

求職者(採用ブランディング)

地域社会(CSRやサステナビリティ活動)

 

など、あらゆるステークホルダーに及びます。

 

近年では、「何をつくるか」以上に「なぜそれをつくるのか」というパーパスが、ブランド価値を左右する時代になっています。商品ブランディングが「点」の活動だとすれば、企業ブランディングは「線」や「面」として市場や社会と長期的な関係を築く活動だと言えるでしょう。

 

ブランドの発信先|アウターブランディングとインナーブランディングの効果

 

次の軸は、ブランディングの対象となる相手です。

多くの企業は顧客など外部への発信に力を入れがちですが、実は社内に向けたブランディングも同じくらい重要です。

 

(1)アウターブランディングとは

 

いわゆる「ブランドのメッセージ」を生活者に届ける活動です。

テレビCMやデジタル広告、SNS運用、パッケージデザインなどを通して、ブランドの価値やイメージを伝えていきます。ここで大切なのは、単に認知度を高めることではありません。

 

「どのように記憶され、どんな感情を呼び起こすか」までを設計することです。ブランドメッセージが生活者の記憶の中でどう位置づけられるかが勝負になります。さらに、アウターブランディングは体験価値も含みます。

購入前の広告や店舗体験はもちろん、購入後のカスタマーサポートやユーザーコミュニティなど、すべての接点がブランド体験の一部として設計される必要があります。

 

(2)インナーブランディングとは

 

社外に発信する前に、まず社内でブランドの「意味」と「価値」を深く共有する。これがインナーブランディングの役割です。

 

社外への発信より先に、まず社内でブランドの意味や価値を深く共有すること。これがインナーブランディングの役割です。特にサービス業では、従業員のふるまいがそのままブランド体験になります。

スターバックスやディズニーが好例で、ブランドの哲学が社員一人ひとりに浸透しているからこそ、誰が接客しても高い水準の体験が提供されます。社内でブランドの意味が共有されていなければ、外部向けの広告がどれだけ魅力的でも、実際の体験とのギャップでブランド価値は損なわれます。

だからこそ、インナーとアウターはセットで設計することが不可欠なのです。

 

 

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BtoCとBtoBのブランド戦略|企業形態別のブランディングのポイント

 

最後の軸は、そのブランドを運営する主体が誰なのか、つまりBtoC企業なのかBtoB(企業なのかという事業形態の違いです。

 

この違いによって、重視すべき要素やアプローチの仕方は大きく変わります。

 

❶BtoCブランディングとは

 

日用品、飲料、ファッション、コスメなど、一般消費者を対象にしたブランディングです。

ここでは感情的なつながりやライフスタイルとの親和性が非常に重要になります。

 

「このブランドは私の価値観に合っている」

「この世界観に共感できる」

といった感情や美意識との一致が、購買行動を大きく左右します。

そのため、ブランドストーリーやビジュアルの統一、広告表現の細部まで、一貫性のある設計が求められます。

 

❷BtoBブランディングとは

 

法人を対象とする場合は、「信頼性」「技術力」「問題解決力」など、より論理的な評価軸が重視されます。

一見すると“感情”とは無縁のように見えますが、実際にはBtoBでも「期待感」「安心感」「企業カルチャーに対する共鳴」などが大きな影響力を持ちます。

IBM、SAP、アクセンチュア、セールスフォースといった強いブランド力を持つ企業は、その高度な技術力や業界知見はもちろん、ブランドとしての期待感や信頼性があるからこそ、「サービスを買う」を越えて、「その企業とパートナーになる」という選択をされるのです。

BtoBブランディングの本質は、価格競争に巻き込まれない独自性と、「なぜこの企業を選び続けるのか」という理由を戦略的に設計することにあります。

 

よくある質問(FAQ)

Q1:商品ブランディングと企業ブランディングはどう違いますか?

A1:商品ブランディングは特定の商品やサービスの価値設計に重点を置き、企業ブランディングは企業全体の存在価値や社会的信頼を高める活動です。両者をバランスよく設計することが重要です。

 

Q2:アウターブランディングとインナーブランディングの違いは何ですか?

A2:アウターブランディングは外部顧客向けのブランドメッセージ発信を指し、インナーブランディングは社内でブランドの価値や意味を深く共有し浸透させる活動をいいます。

 

Q3:BtoB企業でも感情的価値は重要ですか?

A3:はい。BtoBでも「期待感」や「安心感」、「企業文化に対する共鳴」など感情面の評価が購買選択に大きく影響します。従って、論理的価値だけでなく感情的側面も戦略的に設計する必要があります。

 

まとめ 戦略的で立体的なブランド構築へ 

ブランディングは、一つの施策や単発のキャンペーンでは完結しません。

「何を」「誰に」「誰が」という3つの軸で全体像を捉えることで、はじめて自社のブランド活動の偏りや不足している領域が見えてきます。

 

商品やサービスの魅力を磨くだけでなく、企業全体の存在価値を社会に伝えること。外部への発信だけでなく、社内にブランドの価値を深く浸透させること。そして、BtoC・BtoBそれぞれに適したアプローチを選び抜くこと。

この3つをバランスよく設計できたとき、ブランドは単なる「名前」や「見た目」を超え、生活者や取引先にとって“なくてはならない存在”へと育っていきます。

今一度、自社のブランディングを3つの軸で点検し、戦略的で立体的なブランド構築へと踏み出してみてください。

 

 

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PROFILE 著名者プロフィール

羽田 康祐 はだ こうすけ

  • ストラテジックプランニングディレクター
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